第20話 熱光線砲

 一基は、リーヴの機体の手によって拘束される。


『これ以上どうしようもないだろう?』

「ふん、どうだか」

『素直に降伏でもしたらどうだ?これ以上は時間の無駄だ』


 そういって、リーヴは握る力を強める。


「ぐぅぅぅ!」

『しかし、君の戦闘能力は相当なものだな。粗削りの中にも光るものがある』


 そういって、リーヴは一基のことを褒める。


「何が目的だ……!?」

『目的?そんなことではないさ。まぁ、目的というよりかは提案に近いものであるが』


 そういってリーヴが言い渋る。


『どうだ、我々と共に来ないか?』

「お前、何を言って……」

『これはお互いに利益のある提案だと思うんだがな』

「なんだと……?」


 そういうと、リーヴは握る手を緩める。


『君は該当者だ。我々にしてみれば処分しなければならない対象である。そこに私から救いの手を差し伸べるのだよ。私はこれでも軍の中では上位にいる人物だ。君を処分しないように計らうことだってできる。悪くない提案だろう?』

「それでお前に何の利益があるというんだ?」

『これは私の勝手な親切心だよ。機密が多くて話せることは少ないが、君が何も知らされずに殺されるのはいささか不憫であると思ってね』

「ふんっ、そんなこと言ったって俺は乗らない」

『そうか。ではこうしよう。君がこの提案に乗らなければ、君を殺した上で、地球を破壊する』

「……は?」


 一瞬、一基の思考が止まる。


「地球を破壊するって、そんなことできるはずが……」

『我々の技術力なら可能だ』

「そもそも、俺を殺せばいいだけの話だったろ!」

『状況が変わったのだよ』


 一基は、手に持っている折れた補助用操縦桿を強く握りしめる。

 ヘリクゼンは大破状態。自分は敵に拘束され動けない。

 もはやこれまでだろう。

 詰みである。

 しかし、その時にあることを思いつく。

 一基は賭けに出ようとした。

 しかし、拘束されていることによってうまく動くことができない。

 それに、何かしようとしているのをリーヴに察知され、強く拘束されてしまう。


『さては脱出のことでも考えていたな?残念だったな。そんなことはさせない』

「くっ……!」


 しかし、それでも問題はない。なぜなら、すでに準備は整っているからだ。


「……じゃあ、いいよ」

『どういう意味だね?』

「提案に乗ってやるって言ってるんだよ」

『理解が良くて助かるよ。それでは、今から我々は仲間だ』


 そういって、リーヴが拘束を解こうとする。

 その瞬間であった。

 一瞬の閃光。それはリーヴの機体を貫いていた。


『は……?』


 リーヴは理解するのに時間を要した。

 しかしすぐに解る。自分の頭に穴が空いていることを。


「賭けは成功したようだな」


 そう、一基の手には、ヘリクゼルで出来た補助用操縦桿が握られていた。

 一基はこれを能力を使って改造し、即席の熱光線砲にしたのだ。

 それにより、超高出力の光線を発射したのである。

 それは見事にリーヴの機体のコックピット、そしてリーヴの頭を貫いたのだ。

 リーヴの機体はバランスを崩し、そのまま背中から倒れこむ。

 どうにかして脱出することに成功した一基は、ヘリクゼンの元に戻った。


「頼むぞ、ヘリクゼン」


 そういって補助用操縦桿を接着させ、機体を能力によってあらかた修復する。

 そしてそのまま機体を動かした。

 少しぎこちないものの、ヘリクゼンは動き出す。

 そして一基は、機体を赤紫色の球体に向けた。


「……くらえ!」


 最大出力で熱光線砲を発射した。

 球体は、長時間熱光線砲に曝される。それにより内部まで融解し、そして爆発する。

 それを確認した一基は、すぐに母船から脱出するためヘリクゼンを動かす。

 熱光線砲を使って、無理やり脱出路を作る。

 そしてそのまま母船の外へと脱出した。

 壊れかけのジェットパックを点火させ、どうにか飛行する。

 ある程度脱出した所で、母船は大規模な爆発を起こす。


「……どうにかなったか」


 母船が済州島に落下していくのを見て、一基は安堵する。

 その後、空自の戦闘機と合流し、対馬空港へと帰還した。


「一基様!」


 世話人が、姿の変わったヘリクゼンを見て、慌てて駆け寄ってくる。


「大丈夫ですか?一基様」

「問題ない、大したケガじゃないからな」

「しかしヘリクゼンが大破しているじゃないですか。念のため医師に診てもらってください」

「分かった。分かったから」


 そのまま車に乗り込み、対馬駐屯地の医師に見てもらうのであった。

 その後の異星人の様子を見てみよう。

 日本戦線に敗北した兵士級他多数は、これ以上攻め込んでくることはなかった。

 それどころか、全世界の兵器が活動を停止する事態になる。

 世界各国にいた異星人の母船は、そのまま宇宙へと姿を消したのだ。

 また、月面にあった人工物も姿を消した。

 これにより生き残った国家は、それぞれ連絡を取り合い、今回の戦いが終わったとする確認を取る。

 こうして、異星人との戦いは、人類史史上最も多くの犠牲者を出して終結することになった。

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