第18話 指揮官
母船の内部に侵入した一基は、そのまま熱光線砲で周囲を焼き尽くしながら、通路と思われる空間を駆け抜けていく。
道中では、兵士級、兵長級などが待ち構え、ヘリクゼンに攻撃を仕掛けてくる。
しかし、それらを一基は軽い身のこなしで回避し、レールガンと熱光線砲、そして拳で圧倒していく。
敵を近接で破壊していく時、敵は体液のようなものを体から噴出させ、それがヘリクゼンに降りかかる。
しかし、一基はそんな状況でもお構いなしに、どんどん敵を破壊していく。
「もっとだ……。もっと来い!」
ここまで来てしまえば、もはや戦闘狂のように見えるだろう。
その影響は母船の外部に顕著に現れ始める。
『こちら観測機、母船の内部から爆発のようなものを目視で確認』
『おそらくヘリクゼンの攻撃だろう。しかしこれだけの攻撃性、味方でよかったと心底思うよ』
そんなことを話す自衛官らであった。
そんな中、一基がとある扉を破壊した先に巨大な空間を見つける。
「なんだここ……?」
その時、ヘリクゼンの通信機から何かが聞こえてくる。
『よく来たな、該当者よ』
ヘリクゼンのカメラの前に、とある影が映りこむ。
「誰だ?」
『私か?私は地球侵略軍第4艦隊指揮官のボノロブ・リーヴだ。最前線で戦う彼らの指揮を取っている』
「つまりお前が親玉なんだな」
『君が思っているような人物ではないが、まぁいいだろう。実際、君がいる国を攻撃しようとしているのは我が艦隊だからな』
「で、俺がお前を倒せばそれで万事解決ってわけか」
『少なくとも君の国はな。だが、地球侵略軍の中でも精鋭と謳われる第4艦隊、その指揮官である私を倒せるかな?』
「倒せる倒せないの問題じゃねぇ。必ず倒す」
『いいぞ、それでこそ該当者というものだ』
そういって、しばし静寂が訪れる。
すると次の瞬間には、互いに急接近するため全力で床を蹴っていた。
そのまま拳同士が衝突する。
「うらぁ!」
一基は腕をひねりつつ、反対の拳で殴りにかかる。
するとそれを見越してか、リーヴは蹴りで応戦する。
拳と足が衝突したことによって、二つの機体は反作用によりお互いに押し合う状態になり、そのまま距離を取ることになった。
「強いな……。佐官級、いや将官級だな」
一基はたった数秒の戦闘で、相手の技量を見極める。
これまでとは異なる戦闘力。それによる圧倒的な攻撃性能。
今まで相手してきた敵とはまったく異なる機体であることを直感する。
『どうした?今ので怖気づいてしまったか?』
まるで煽るように、リーヴは一基のことを挑発する。
「まさか。今のでどうやって戦うかが分かったからな」
そういって一基は、熱光線砲で遠距離攻撃を仕掛ける。
その砲撃は、回避したために残念ながらリーヴに命中しなかった。
しかし、一基は立て続けに熱光線砲を放つ。
リーヴは横に回避しながら、どんどん逃げていく。
「どうした!?いつまで逃げ続けるつもりだ!?」
今度は一基が挑発をする。
『小賢しい真似を……!』
リーヴは回避するのをやめ、正面から熱光線砲に当たりに行く。
命中したかに思えたそれは、残念ながらリーヴの肩装甲が融解するだけだった。
そのまま一瞬のうちに、ヘリクゼンとの差を詰める。
「ちっ!」
一基は砲撃をやめ、近接戦闘に入る。
とはいっても、とにかく回避に専念する状態だ。
リーヴの蹴り、殴り、体当たり。それらをただひたすら回避するだけである。
『はっはっは!さっきまでの威勢はどうした!もうここで終了か!?』
「んなわけねぇだろ!」
一基は、姿勢を低くしたと思うと、そのまま飛び上がると同時に拳を叩き込む。
『ぐう……!』
さすがに今の攻撃は効いたのか、頭部にあたる部分の形が少し変形する。
『今のでサブモニターが逝かれたようだ。さすがに少し効いたぞ』
「そのままメインモニターまでやられてくれてもよかったんだぜ?」
『まさか。そこまでやられたら、この機体から降りねばならないからな』
「そうなってくれたほうが良かったんだがな」
再び距離が離れ、お互いの出方を見ている状態だ。
先に動いたのは一基のほうである。
先と同じように、熱光線砲を用いて、遠距離攻撃を仕掛けるつもりだ。
『甘い!』
しかしリーヴには、完全に見透かされているようで、簡単に回避されてしまう。
負けじと一基は砲撃するものの、命中する気配はない。
そしてリーヴが急接近してくる。
一基はスラスターを使って横に飛んだが、それも計算済みのようで、簡単に補足される。
そして、そのまま腕を捕まれ、ぶん投げられた。
壁に衝突するものの、寸前に熱光線によって壁を融解させる。これによって最小のダメージにすることが可能だ。
壁の先には、これまで以上に巨大な空間が広がっていた。
「なんだここ……」
空間の中心には、赤紫色ともいうべき光を放ちながら、回転する球体のようなものがあった。
『どうせだから教えてやろう。ここはこの船の動力源を司る空間。これがなければ、我々の文明はここまで発展しなかっただろう』
そういって壁の向こうからリーヴがやってくる。
『予言しよう。君はここで死ぬ。私の手によってな』
「そんなのお断りだね。俺はまだ死にたくない」
『ならば抗え、該当者よ。どちらにせよ、君はこの世から抹殺せねばならない』
独特な緊張感が漂う。
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