第17話 突入

 様々なアタッチメントを使用して、一基は敵を屠り続けていた。


「うらぁぁぁ!」


 この日は、手の部分がチェーンソーで出来たものを装備している。

 幸い、電気エネルギーや運動エネルギーはヘリクゼルから直接供給されるため、燃料切れに困ることはない。

 一基は、チェーンソーを使って近接格闘戦を仕掛けていた。

 両手のチェーンソーを兵長級に突き立て、そのまま引き裂く。

 次々とやってくる敵に、一基はヘリクゼンのスラスターすべてを使用して回避と行動を同時に行う。

 その時、背後に兵士級がとりつく。


「うざったい、なっ!」


 体を回転させ、他の敵に擦り付けるように衝突させる。

 これにより、背後のジェットパックと衝突によって、兵士級が剥がれた。

 そのまま機体を回転させ、兵士級を蹴り飛ばす。


『ヘリクゼン、第3波はまもなく終了する。一度空港に戻ることをお勧めする』

「それじゃあ次の波に間に合わない。このまま突撃する!」


 そういって、一基は済州島方面に向かって飛行する。

 すでに水平線の向こうからは、第4波が来ているのが見えた。


「熱光線砲発射!」


 ヘリクゼル熱光線砲は、緑色の光を放ちながら、直進する。

 熱光線に直撃したモノ、周辺にいたモノをすべて破壊していく。


『レーダーが塗られていく……』

『とんでもない性能を持っているな、こいつは』


 自衛官がそんなことを漏らす。

 敵には、兵士級、兵長級のほかにも、兵装が充実した軍曹級、さらに能力を高めた士官級も登場している。

 しかし、それらをもってしても、一基とヘリクゼンの快進撃を止めることはできない。

 その状況を鑑みた防衛省の制服組は、とある作戦を考える。


「異星人の母船を破壊しよう」


 当然、戦線が拮抗している状態では、何か打破できる状態が必要だ。

 そのために、敵が増産されている異星人の母船を破壊するのが手っ取り早い。


「そんな急にやって大丈夫か?」


 一基が世話人にそんなことを聞く。


「だいぶ問題はありますが、選択肢がないものも事実です」

「結局やるしかないのか」


 一基は少し考える。


「分かった、やろう。こういうのはさっさとやるに限る」


 そうして、済州島上空に存在する母船に特攻まがいの攻撃をすることが決定した。

 それからの行動は早く、空自の援護の元に母船を攻撃することが決まる。

 作戦決行日前日。一基の食事は、いつもより豪華であった。

 それでも、レトルトのカレーではあったが。


「明日の作戦は、正直に言いまして成功するかどうか分かりません。そのため、今晩はいつもより豪華にさせてもらいました」

「そんなことしなくても、俺は作戦を成功させてくるよ」

「万が一ということもあります」


 世話人は心配そうに聞いてくる。それだけ成功率が低い作戦なのだろう。

 一基は、黙ってカレーを食すのだった。

 翌日、夜明け前。

 兵士級たちが動き出す前に、作戦隊は動き出していた。

 上空を飛行するヘリクゼンと空自の戦闘機。彼らは異星人の母船を目指す。


『こちら地上観測隊。敵に動きはない』

『対空レーダーにも動きはない。攻撃するなら今だろう』

「了解、作戦を開始する」


 そういって、一基は全力で母船に向かう。

 今回の作戦は単純だ。

 まずは母船へ突入する。周辺にいる敵は随時迎撃しながらの接近だ。

 そして母船に到着したら、どこでもいいので内部に突入する。

 そして内部で大あばれして、母船の動力を停止させ、撃墜するという算段だ。

 一基にとってみれば、正直成功するか分からない状態ではあるが、とにかくそれに賭けるほかない。

 母船に近づくと、そこにはこれまでに観測したことのない敵の姿があった。

 人型のような形をした異星人の機体。それが母船の上に大量にいたのだ。


『あれは新しい敵か?』

『尉官級だな。確実に苦戦するタイプだ。細心の注意を払ってくれ』

「最初からそのつもりだよ」


 そういって一基は突っ込んでいく。

 それを援護するように、空自の戦闘機がミサイルを発射する。

 ミサイルは一直線に尉官級に飛んでいくが、途中から軌道がおかしくなり始めた。

 そして、母船に命中する前に、自爆してしまう。


『こっちの攻撃が通用しないぞ』

「そうだったら、物理でぶん殴る!」


 一基は、ヘリクゼンの熱光線砲を起動させる。

 そして、そのまま発射した。

 それによって、尉官級の数機を破壊することに成功する。

 それと同時に、母船の表面を融解させるができたことを確認した。


「このまま母船に突入する!」


 そういって一基は、母船の上に着地する。

 そこには尉官級が複数体いた。

 そんな尉官級に対して、一基は間髪入れずに拳を叩き込む。

 それと同時にレールガンで、遠くにいる尉官級を牽制する。

 近接戦闘と遠距離戦闘を同時にこなすのは、かなりの負担になるだろう。

 しかしそんな状況でも、一基は集中を切らさずに、次々と尉官級を撃破していくのだった。


「うぉぉぉ!」


 回し蹴り、右ストレート、背負い投げ。

 様々な技を駆使して、尉官級をすべて撃破する。

 その時、ちょうど日の出を迎える。


『ヘリクゼン、敵の本隊が動き出す。素早く母船を撃墜せよ』

「はいはい、分かってますよっ!」


 一基は熱光線砲で、母船に穴を開ける。

 そしてそこから内部に侵入するのだった。

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