第11話 戦闘
兵士級の侵攻は、韓国まで進む。
韓国軍はこれを撃退しようと攻撃を行うものの、歩兵が装備出来る程度の武器では歯が立たない。大きめのグレネードランチャーや戦車砲を用いてどうにか一体を倒せるというくらいである。
こんな状況であるにも関わらず、在韓アメリカ軍は早々に撤退してしまった。現実は非情である。
当然、朝鮮半島の隅から隅まで蹂躙された。
こうしてアフリカ大陸とユーラシア大陸が陥落する。
しかし、これまで予想されていた事実が判明した。
「奴らは海を渡ることが出来ない」
国連安保理はこのように決定づけた。
「いや、その考えは甘いのではないか!?」
そうイギリス大使が叫ぶ。
当然だ。イギリスはドーバー海峡を挟んでユーラシア大陸に面している。もし海を渡ってくることになれば、これまでの国家同様、あっという間に陥落することだろう。
安保理理事会大使の中には、既に故郷を失っている者もいるが。
「それにあの浮いている巨大物体が世界中に拡散する可能性も考えられるだろう!」
「落ち着け。今は現状を受け止めることが最優先だ。奴らは海を渡る様子はない。それどころか、水を意図的に避けている節もある。これが何を示すのかは知らないが、今は好機と見るべきだろう」
「しかしだな!宇宙からの侵略だ、わざわざアフリカ大陸から丁寧にやってくるわけでもあるまい!」
「それを見極めることも必要だ」
「自分の国は今のところ問題ないから良いってか!?」
そういうイギリス大使を無視して、アメリカ大使は自分の端末を見る。
その画面には、「計画開始」とだけ書かれていた。
その頃、済州島上空に異星人の母船が現れ、兵士級を放出していた。
『目標を視認。大量の兵士級が降下しています』
築城基地所属の航空自衛隊の戦闘機が状況を確認する。
その様子を、対馬空港の野外に設置された陸自の通信機で聞く一基。
「結構近くまで来てるじゃん」
「一基様、そろそろ準備の方をお願いします」
「はいはい。分かってますよ」
そういって、一基は組み立てられたヘリクゼンに乗り込む。
「我々の予想が正しければ、そろそろ飛行型の兵士級が登場してもおかしくありません。油断しないでください」
「分かってるって」
世話人が最後の忠告をした後、コックピットのハッチが閉まる。
スターター代わりのボタンを押し、機体から発せられるエネルギーを回収し始めた。これによって、各種機器にそれぞれ適したエネルギーが供給される。関節のモータには運動エネルギーが、コックピットの電子機器には電気エネルギーが供給されるのだ。
低い駆動音を鳴らして立ち上がるヘリクゼン。
一基は北富士演習場で訓練したことを思い出す。各種モニターのチェック、動作確認などをする。
「正直、チェックなんていらないと思うんだけどな」
そんな事をぼやきながら、作業を進める。
『ヘリクゼン、聞こえるか?』
「こちらヘリクゼン、良く聞こえる」
『ヘルメットの電源は入れたか?』
「……あ」
『チェックは怠らないように』
そう言われて、一基はヘルメットの電源を入れた。
『ヘリクゼン、起動を確認』
『現在、ヘリクゼン交戦範囲に敵影なし』
そう言っていると、空自の戦闘機から通信が入る。
『現在、済州島付近から飛翔する何かをレーダーで捉えた。確認に移る』
戦闘機はそのまま降下し、状況を報告する。
『これは……。これまで確認されている兵士級に羽が生えているようだ。確認出来るだけで100近くいる。このままだと……対馬海峡を突っ切って対馬島に到達する模様』
『了解、このままヘリクゼンによる迎撃体制に移行する』
『ヘリクゼン、聞こえたか?』
「ばっちりね」
『こちらのレーダーでも捉えた。到着予定時刻は今より25分後。目標を視認次第、随時迎撃に入れ』
「了解」
そういって、一基は構える。
そして、見えた。
「攻撃を開始する!」
宣言の後、機体を低く構えて、両腕のレールガンを連射する。
通常のレールガンではありえない程の連射速度で撃ちまくった。
ある種の弾幕が出来上がる。
『ヘリクゼン、そのペースでは弾薬の複製が間に合わない。ペースを落とせ』
このように忠告を受けるものの、一基は一向にペースを落とす気はない。
だが、これが功を奏したのか、次々と兵士級を撃墜する。
しかし、レールガンの砲身が赤熱し始め、弾幕の効果が少しずつ薄れてくる。
これを、一基は自前の能力を使って、強引に修復した。
そしてそのまま攻撃を続ける。
日本防衛初日からかっ飛ばす一基。
それによって、日が暮れるまでに撃破した兵士級の数は、実に439体にもおよぶ。
それらは海上に落ちたり、はたまた対馬島山中に墜落していく。
兵士級の特徴の一つとして、夜間は動かないというものがある。
そのため、この日の襲撃はこれにて終了だ。
「お疲れ様です、一基様」
ヘリクゼンから降りてきた一基に、世話人が話しかける。
「あぁ、疲れた。こんなのが毎日来るの?」
「おそらくは、ですが」
「今日みたいなやつなら毎日でも問題ないけど、少し飽きるかな」
そんな事を言いながら、陸自の対馬駐屯地へと向かう一基であった。
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