第7話 戦闘

 異星人の宣告から1ヶ月が経過しようとしている。

 世界各国は、確実に異星人からの攻撃がある事を前提に動いていた。

 世界は、安保理が指揮する初の国連軍を結成することになる。

 主にアメリカが主導し、ロシア、中国、イギリス、日本が参加することが決定した。その他にも、国連加盟国の国家からほぼ全ての軍隊が動員され、これまでにないほど各国が結束している。

 再び世界中の通信機器がジャックされ、異星人の姿が映った。


『時間だ。当該人物の殺害は確認されなかった。そして差し出す様子もない事を確認した。よって、我々の手によって当該人物を殺害に向かう。地上の全てを蹂躙しながら進もう。地球を死の惑星にしよう。全ての生命体よ、震えて眠れ』


 ほんの短い声明が発せられる。

 その直後、地球の低軌道に巨大な物体が出現した。

 その物体はアフリカ大陸南部、ケープタウン上空に現れる。

 そして、そこから謎の大群が降下してきた。


「あれは一体なんだ?」

「敵の兵器なんでしょうか?」


 国連軍傘下の南アフリカ国防軍は、その様子を観測する。

 その情報は即座に安保理理事会、そして軍事参謀委員会に通達された。

 異星人の侵略に関する条約に関しては、既に国連総会および安保理理事会で各国が批准しているため、攻撃に関しては各国の判断で行えるようになっている。

 そのため、南アフリカ国防軍は即座に攻撃を開始した。

 陸からは対空ミサイル、海からフリゲートがミサイルを、空軍は戦闘機が発進する。

 ミサイルによる攻撃が、異星人の群れに命中していく。

 しかしそんな攻撃をも上回る速度で、異星人の兵器はワチャワチャと降りてくる。


「奴らを我が国に上陸させるな!火炎放射器でもロケランでも使え!絶対にここで阻止するんだ!」


 しかしそんな思惑とは裏腹に、異星人の兵器は南アフリカ領土に上陸してしまう。

 空軍からの情報を元に、陸軍は防衛陣を形成する。

 特に、3つある首都を防衛するために陸軍は動く。

 海軍は、海に落下した敵の兵器を回収し、それをイギリスへと持ち運ぶ。

 空軍は空中から戦況を確認し、それを陸軍に通達する。

 まずケープタウンで戦闘が始まった。


「首都防衛が最優先だ!ここで食い止めるぞ!」


 そう戦車隊の隊長が鼓舞する。

 しかし、敵の兵器は予想以上のものだった。

 蟻を思わせるような六足歩行。大きさは2m~10m程度でバラバラである。それらが大地を埋めつくすほどやってくるのだ。

 ロケランや誘導ミサイルで攻撃をするものの、一向に数は減らない。

 それどころか、上空の母船と思われる飛行物体から、次々と六本足の兵器が投入されていく。

 異星人の兵器が南アフリカに上陸して、わずか7時間でケープタウンは陥落してしまった。

 その後、異星人の兵器は北上を始める。その行進の様子は、まるで本物の蟻のように、目的地へ一直線に向かっていた。

 結局、アフリカ南部戦線では数日も持たなかった。

 その頃、難を逃れた南アフリカ海軍の艦艇は、異星人の兵器を無事にイギリスへと輸送することに成功する。

 それを見た軍関係者は、一様に『兵隊アリのようだ』と語った。

 そのため、この異星人の兵器を兵士級と名付けた。兵士級は、さらなる研究のために王立の研究施設へと送られる。

 一方で、兵士級の侵攻は止まらない。

 そもそも、まともな軍備が整っていない中央アフリカの国々は、文字通り蹂躙されることになる。

 その結果、アフリカ中央部まで戦線を押し込まれ、戦場は中央アフリカへと拡大する。

 中央アフリカでは、まともな軍備が揃っているはずもなく、一方的に蹂躙されるだけであった。

 この蹂躙によって、アフリカ人口の約35%が失われることとなる。

 この状況を重く見た国連軍は、NATOに指示を出した。

 それは『地中海にて異星人に総攻撃を仕掛けよ』というものである。


「アフリカ戦線が崩壊した今、頼りになるのはNATOしかいない。今こそ、その本領を発揮してくれ」


 安保理理事会の意見は一致していた。

 その一方で、アフリカ北部では兵士級との戦いを強いられていた。

 特に、エジプト軍との戦いは激しい。

 エジプト陸軍は、持ち前の戦車を使って全面的な物量作戦を行う。


「攻撃だ!攻撃あるのみ!攻撃を続けよ!」


 カイロ周辺を絶対国防ラインとしたエジプト軍の攻防は、激しさを増していく。

 エジプト空軍による空爆も開始された。

 しかし、それでもなお、兵士級の攻撃は止むことを知らない。

 そして最終的に、エジプト軍は兵士級の前に敗れるのであった。


『こちらエジプト空軍。兵士級の前では、我々は無力だったようだ。どこか滑走路は空いてないか?』

『こちらトルコ空軍、こちらに来れば燃料などの提供ができる』

『燃料が持つか心配だが、ありがたく使わせ……』


 この通信を最後に、エジプト空軍の通信が途絶える。

 一体何が起きているのか、各国は皆目見当もつかなかった。

 ただ、唯一分かることがある。


「この異星人の攻撃を防ぐ方法はない」


 各国は戦慄した。

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