第4話 ボス戦開始
扉の先は、開けた空間になっていた。
そしてその中心には、王座に座るゴブリンがいた。
だが知っているゴブリンとは、別物と言っていいほどに違っていた。
身長が低く、小汚い格好をしていた、ゴブリンとは、違って、通常のゴブリンの二倍ぐらいの身長。
いかにも高そうな服に身を包み、金のネックレスや、様々な宝石のついた大量の指輪。
そして、
王座の横には、様々な装飾のついた豪華な大剣。
まさに、ゴブリンの王様にふさわしい身なりだった。
次に感じたのは、違和感。
(なんか弱くない? )
確かにこれまでのゴブリンと比べたら強いだろう。
だが、明らかに扉の前で感じた威圧感と釣り合ってない。
「鑑定」
種族 ゴブリンキング Lv8
深度 1
HP 30/30
MP 15/15
STR 17
DEF 8
INT 1
RES 5
AGI 10
LUK 3
スキル 剣術Lv1 指揮Lv1
称号 ゴブリンの王 成金 愚王
……やっぱり弱い。
いや、AGI以外は、ゴブリンキングのほうが高いけどそれほどでもないし。
それにスキルも少ない。
(どうゆうことだ? )
そんなことを考えていると、
ガタンッ!
扉が音を立ててしまった。
思わず後ろを向いた瞬間!
ドンッ!!
今度は、王座の方から音がしてきた。
振り向くとゴブリンキングが大剣を構えて、
目の前にいた。
「ガハッ!」
短剣を通じて凄まじい衝撃が走リ、扉まで吹っ飛んだ。
(なんだ……どうゆうことだ……)
ゴブリンキングは、田中が吹っ飛んだ姿を見てニタァと笑い一歩一歩進んで行く。
種族 ゴブリンキング Lv8
深度 1
HP 30/30
MP 15/15
STR 17
DEF 8
INT 1
RES 5
AGI 10
LUK 3
スキル 剣術Lv1 指揮Lv1
称号 ゴブリンの王 成金 愚王
(……何でだ……なんでこんな速度が出るんだ……。
このステータスでは、ここまで速いはずないのに! )
(待てよもしかして……)
もう一度鑑定してみる。今度は武器に。
名前 魔剣血の
深度 1
ステータス STR +21
スキル 斬撃強化、血液吸収
(343/400)
称号 血の大剣、呪われた魔剣、
所有者殺し
やっぱり!……指輪も鑑定する
名前 俊敏の指輪
ステータス AGI50%増加
ゴブリンキングは、指輪を両指につけていた。つまり……
(逃げなきゃ!)
吹っ飛んだときの、全身の痛みも忘れて必死に扉に駆け寄る。
ガタンッ! ガタンッ!
なんでだ……なんで開かないんだよ!
扉は、開かない。
そうしている間にもゴブリンキングは、確実に近づいてくる。
(逃げなきゃ! 逃げなきゃ! 逃げなきゃ!!)
パニックになって、今で逃げることしかしてこなかった田中には、それしか思い浮かばなかった。
ゴブリンキングは、もうすぐ近くだ
(逃げなきゃ! 逃げなきゃ! 逃げな……)
ゴブリンキングは、目の前にいた。
「あ……あぁ」
ゴブリンキングは、ニタァと笑っていた。
その瞬間、今での思い出が浮かび上がってきた。
小学校での思い出、中学校での思い出、試練での短いけど長かった思い出、それら全てを見てこう思う。
「ああ……つまらなかったな。」
小学校では、先生に逆らってあるやつや、特別な長所を持っているやつが、人気者になっていった。
俺は、特別な長所を持っておらず、周りと仲良くなる努力や、周りの話題に混ざろうとする意思も持たず何もしなかった。佐藤しか親友と呼べる人は、いなかった。
ゴブリンキングが、大剣を振り上げた。
中学校になれば、なにか変わるかと思ったが、何も変わらなかった。むしろ全体的な人数が多い分よりボッチになり、佐藤ばかりと話すようにになっていた。
明日になれば、高校生になれば、……そうやって未来に期待して今を変えよえとしなかった。
だけど変わったんだ。
現実に試練というものが出て、自分にユニークスキルがあることがわかって試練を攻略していって。
だけど自分は、変われなかった。
「ああ、嫌だな……死にたくないな……」
もしかしたらなれるかもしれないと思ったんだ。この非日常に変わっていった世界なら人を助けて、救って、様々な人に称えられる。
そんな
「英雄に、なりたかったな」
涙が、出た。
ゴブリンキングが大剣を振り下ろす。
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