第18話 どうして……こうなった?
あの日から、俺の周りは若干騒がしくなった。相変わらず人の視線を感じるし話しかけてくる女子も多くなったし、野郎どもからどうしたらかっこよくなれるのかと、質問攻めにあっていた。
そして、俺は生まれて初めて告白された。相手はもちろん杏璃ちゃん……じゃない。
「ごめん。付き合えないです」
俺がそう言うとほとんどの子が「だよねー」みたいなノリで去って行った……。おいおい、そんなノリで告白とかするの?って最初は思ってしまったが、あまりに多いので最近では何とも思わなくなった。
まぁ、告白してきた子たちは、俺が騒がれるようになってから声をかけてきた子たちだから、そういうものかもしれないけど……真剣に悩んで受けてたのがアホらしく思えてくる。
「はぁ、杏璃ちゃんに会いたい……」
しかし、地味にメンタルにきているのが、あれから杏璃ちゃんとほとんど話せなくなってしまったということだ。というか、学校で会って話す時間がなくなってしまった。メールとかはしてるけどお互いにこの話は触れない空気になっているせいか、会話も弾まないし……。俺が注目を集めているせいで、杏璃ちゃんが距離を取るようになってしまった。
あぁ。会って話がしたい……。
「翔ちゃん……」
名前を呼ばれてばっとその方向を見た。俺のことを翔ちゃんなんて呼ぶ人は一人だけだったから……。
「杏璃ちゃん!」
やっぱりそこには杏璃ちゃんが立っていて、少しだけ周りを見回してから俺の所へと近寄ってきた。久しぶりに直接声が聞けて嬉しくて顔がにやけてしまう。
「どうしたの?もう帰ったのかと思ってた」
きっと、声も上ずってしまっているだろうけど、嬉しい気持ちが隠せない。もしかしたら一緒に帰ろうって誘いに来てくれたのかな……?
そんな淡い期待が俺の頭の中を駆け巡る。
「……その、」
杏璃ちゃんはちょっと言い淀み視線を地面へと落とす。何だろうか?恥ずかしがってる……ようには見えない。
「……どうしたの?」
なんだか、緊張感が伝わってきてさっきまで感じていた嬉しさが薄れていく……。
「その、話をしたいって頼まれて……」
話し?俺と話がしたいってことかな?も、もしかして立木さんと佐々木さん!?杏璃ちゃん、俺とのこと話したのかな?
「翔ちゃんを……紹介してほしいって頼まれて……」
「は?」
そんな言葉しか出なかった。
今、紹介とか言ったか?紹介ってことは……。
……まさか、恋人からそんなこと言われる日が来るなんて……あぁ、そうか……恋人と思ってるのは俺だけってことか――。
気持ちが少しは届いてるって思っていたのは俺だけだったってことか――。
会いたいって思ってたのは俺だけだったってことか――。
「……っ翔ちゃん?」
「いいよ……」
「え?」
「だから、いいよ。会うよその友だちに。で、どこに行けばいいの?それとも今、一緒に来てるの?」
「あの、今じゃなくて……今度の……日曜日に…10時に遊園地で……」
「――っ、……わかった」
「あ、翔ちゃん……」
限界だった。
『今度のデートは私が―――』
そう言ったのは杏璃ちゃんだったのに――。楽しみに……してたのも俺だけだった――。
俺は杏璃ちゃんが名前を呼んでいるのも無視して、足早にその場を去った。
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