第17話 異変
次の日、学校に行く道で妙に見られているような感じがした。視線を感じて、そちらを向けばそこには女の子。でも、視線はあわない……。
気のせいか?これが授業とかで習った思春期特有っていうやつだろうか?
「よ、翔悟」
と、いきなり後ろから肩を叩かれて一瞬びくっとしてしまう。誰かと思えば亮介だった。相変わらず黒く日焼けして体も運動部らしくがっちりしている。
「なんだ、どうした?元気がないな。ってかお前変わったな……少し声かけるか迷ったわ」
「そうか?」
「あぁ、何て言うか、髪型が変わったのか?何だろう俺はそういうことはよくわからねぇけど、爽やか、みたいな?」
「ああ、一応それ目指してんだ。眉毛とか、髭とか丁寧に処理してさ髪の毛も根元をふんわりとさせるようにしてドライした後に、毛先にワックスをもみ込んでランダムにセットしてんだ」
「……へぇ」
「亮介は変わらないな相変わらず黒い」
「まぁ、サッカー部だからな」
そんな他愛もない話をしながら教室へ向かっていると、前から歩いてきた女子二人とばっちり目があってしまい、目があった二人は軽く黄色い声を出しながら俺らの横を走り抜けていった。
「何だ?」
その様子に亮介も気が付いて、疑問の声をだした。
「亮介も変だと思うか?」
「ああ、てか……視線を感じる気がする」
「やっぱりそうだよな、俺、何かついてるか?学校に来るまでの電車の中でもスマホとか向けられてたような気がしてたんだよ」
「それ、大丈夫かお前、何かやらかした?」
亮介にそう言われ、知らない間に何かやらかしたんじゃないかと心配になる。っていうかまさか……女装がばれたのか?でもだとしても女の子の注目だけを集めるのはおかしい……女装がばれたのなら、男からも注目を集めるはずだし……。
「あ、じゃ、俺のクラスこっちだから」
色々と考えていると亮介がじゃと手を振って自分のクラスへと向かっていった。俺も自分のクラスへと向かうと、あきらかにクラスの前に別クラスの女子が集まっていた。
な、なんだ一体……?
俺が困惑しているとクラスメイトの女子の一人が俺を見つけ近寄ってきた。
「おはよう翔悟くん」
「え?ああおはよう」
何だ、本当にいつもは話しかけてくることすらないのに。
「見たよ、翔悟くん……」
見た?見たって何を見たんだ……。心臓がばくばくいうのが自分でもよくわかる。女装がばれてもどうってことないって言い聞かせてきたけど、いざその場になるとやはり緊張で喉がからからになった。
「み、見たって何を?」
「これ!〇〇さんのインスタにのってるのって翔悟くんでしょ?」
と、スマホを見せられ、?が頭に浮かんだ。そこには確かに俺の写真が載ってたけど、それは姉さんの知り合いの美容院の店長さんが、見本の写真撮らせてくれたら半額でいいよって言われて撮ったやつだった。
確かにお店のインスタに載せてもいいっては言ったけど……これがどうしたって言うんだ?
「そうだね……」
「やっぱり~!知らないの?このお店、有名人もよく通うお店なんだよ。それに最近翔悟くんかっこよくなってきてるって、噂だったのにこの写真でしょ。みんなかっこいいって言ってるんだよ」
「……へぇ」
知らない誰かの話を聞いてるみたいだった。俺がかっこいい?うん?新たないじめか?
俺はきゃあきゃあ言ってる女子からそっと離れて自分の席に向かった。そしていつもの様に杏璃ちゃんの席を見ると、杏璃ちゃんとちょっとだけ視線があった。
『来週は私がデート考えてもいい?』
昨日の言葉が頭の中でリフレインされて、もう何度目かわからない思い出し笑いをしてしまいそうになる。
「おっす翔悟!」
と、またしても後ろから肩を叩かれ見るまでもなくその人物の名前を呼んだ。
「よ、傑……」
「何だよ、ノリが悪いな」
いつもの様に傑が俺の目の前の席に座り、話しかけてきた。
「てかさ、何?お前有名人になったの?」
傑は周りを見回して笑いながら俺にそう言ってきた。
「はぁ……違うよ、ただ単に知り合いの美容師さんが有名だっただけだよ」
「そうかぁ、何か、女子どもが騒いでるけどな」
確かにさっきまではちらちら見ていると言う感じだったのに、今は遠慮なしに見てスマホを片手にしている子までいた。
……髪型でこうも変わるのか?と、いや今はそれよりも。
「それよりさ、傑、聞いてくれよ」
「おう、何だ」
「今度のデートな杏璃ちゃんから誘ってくれたんだよ」
「まじか!良かったじゃねぇか」
「ああ、これはもう脈ありだよな」
「脈ありだな」
「だよな……」
「告白とかされたりしてな」
「いや、それは……気が早いかな」
まだわからない。それに女装ありきのデート。昨日のデートで杏璃ちゃんと色々服を選んでいるときに、意外と杏璃ちゃんはかっこいい系の服装を選ぶことが多くて俺に気を使っているのかなと思ったけど。
『自分じゃ着ても似合わないから』
と言っててなるほどな~って思った。好きと似合うは違うもんな。俺はやっぱりかわいい系が好きで、確かに俺が着たいというよりも杏璃ちゃんに着て欲しいと思った。
と、始業のベルが鳴りみんな自分の席へと戻っていく。俺も鞄から教科書を取り出し机に入れようとして、そこで机に教科書が入らないことに気が付いた。
「何だ?」
机に手を入れ確認すると何十枚もの手紙が入っていてそのどれも可愛い封筒に入っていた。
こ、これって、ラブレターってやつか!?
思わず杏璃ちゃんの方を見ると、ちょうど杏璃ちゃんも俺の方を見ていて視線が重なり合った。合ったのにふいっと逸らされてしまった。
え!?ちょ、あれ?杏璃ちゃんもしかして怒ってる?いや、いや、そんなバカな……てか、いったいどうなってるんだ……。
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