第2話 きょうを読むひと

いつかのあの日好きで何度も借りていた児童書を読んでいる。お話の結末が思い出せないのを全部借りてこようかなあ。図書館の棚が低くて私の頭は飛び出てしまう。こうえんもとしょかんもこんなに狭かったんだ。あんまりよくないけど、挿し絵が好きだった本や何度も読んだ絵本とか、懐かしい背表紙を、タイトルの文字を触る。なぞって歩く。


日記を読むと今は昔のいつかの今日を思い出す。続かない今日をつづる読み物。できごとではなくやりたいことを書いていたり。できたことと、できていないことと。何でこんなことを書いたんだろうと、あの日の自分をうまく思い出せない時もある。


今日や明日やあさってを日記に書くことはない。昨日やおとといはいくらでも創作して、充実した日々を送ったように書ける。むなしいから書かないけど。楽しんだあとの反動がきつくて、あんまり楽しいことができない。


そうして過ぎていく時間が怖いまま。えたいのしれない不安の名前をつけてしまえば、ただの甘えとか弱さになる。まだ雪は降らない。


今日は疲れたから物語へ逃げよう。過去にばかりとらわれるな。読んで何が変わるわけでもない。ただどうしてもその短さがもったいなくてもったいなくて。パタンと本を閉じたくなくて、ゆっくり一言一言浸ってみた。ひらがなの文章と挿し絵が、違う世界に連れていってくれるあの感覚がする。楽しいけどそれだけじゃない、懐かしいなあ。おとなが読んだらいけません。

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