きょうを読むひと

新吉

第1話 きょうを呼ぶひと

今日を呼ぶ声がする

いつでもどこでもついてくる

つきまとわれる時間の呼び名

今日は特別

呼び出される日付

カレンダーの空欄は埋められ、

丸をつけられ、バツをつけられ、

塗りつぶされる

今日で終わりだと知っている

今日から始まりますね

今日は記念日だからね


今日が昨日になるとき、明日になるとき

ただの時間の移り変わり

時計の針がカチッと動くだけ

それだけなのに意味が変わる

口からドキドキが漏れ出て、

食べたものを押さえ込む

過ぎてしまいたい気持ちと

大事にとっておきたい気持ちと

しみじみ浸りたい気持ちが

シーソーのようにぎっこんばったん

ブランコのようにちゅうぶらりん


忘れられない日になるといつかいったあの日

過去になって薄れていくのだった

楽しみでしかたなかったあの予定

たいして爪痕を残さなかったりして残念

期待はずれのラーメンが出てきたみたい


1日1日が1ページのように早くて

あっという間でペラペラしていて

思わず戻ったりする

読み飛ばさないでいて


たった一晩が一冊のように遅くて長くて重くて

ゆっくりじっくりズシンときて

物や人がそこにいるみたい

入り込み過ぎないでいて


呼ばなくてもそこにいる

そこにただいるのに

わざわざ呼ぶのは

今日に意味があるから

意味をもたせたいから

スケジュール帳を埋めたいから



きょうぼくはケンくんの家にいく。いつもはとおらないみちで、おーいとよばれた。へんじはしなかった。しらないおじさんのこえだから。だけどよばれたほうをみちゃった。

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