第3話 きょうを酔うひと
さけがうまいなあ。
おーい!
なあきょうはんしゃにならないか?
いっしょにわるいことしようっていみだよ
おさけくさいおじさんはにやっとわらっている。
ひらがなのせいで共犯者が余計に悪いことに見える魔法だ。
魔法といえば、お酒。おとなの魔法。フワフワけらけら。でも溺れるほど飲めなくなった。昔はよく飲んだくれて、ハシゴしたり歩きながら眠った。いろんなお酒を教えてくれた人も、作ってくれた人も、お店の人もみんなお酒を楽しんでいた。お店の外を貸しきっていた酒飲みおじさんに日本酒をおごってもらった。無茶な飲み方をする男は止めろよと教わった。ちゃんと水を準備するやつにしろ。茹でダコみたいな人を指差してこういう風なやつもダメだって。いまこのひととき楽しんでるひとがいっぱいいた。
もちろん家でゆっくり飲むのも大好き。好きなだけ入れて割って、つまんで。すぐ寝れるし騒げる。帰りの時間も泊まるところも探さなくていい。
ひとに酔う日。車やバス酔い。人混みや匂いでうっとなる。眩しい人に会った時なんて見とれてしまう。込み合う駅の中、新幹線の自由席、お祭りの大通り、東京観光、授業参観の香水の洪水、一目惚れなんかもそうだ。時間も忘れちゃう。ひとに酔うひと。
ぼくはいったいどんなわるいことをするのか、ドキドキした。
きょういちにちをむだにしろ。
なんのはなしかさっぱりわからなかった。
ちょっとがっかりした。わるいことしたいわけじゃないけど。
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