歩兵銃

ヘルマーチ弾

9.7㎜ヘルマーチ弾

・日英仏独の四カ国で開発された弾薬規格。

・当初は.338ラプア・マグナム(8.58mm口径)をベースに開発が検討されていたが、威力不足を指摘する声が経験者から多く寄せられた。

・意外と多かったのが、オーク兵などを相手に大口径の猟銃が有効だったという声。

・彼等の中には、次期大口径規格は、アフリカゾウを1発で即死させるという.458口径(11.63mm)大型獣狩猟用マグナム弾“.460ウェザビー・マグナム”を主軸にすべきとの声も多かったが、これについては、その反動が大きすぎて一般兵が扱いきれない可能性が高いことと、連射した場合の身体的影響が深刻である(前線に持ち込んだ同口径の猟銃を多用した兵士の中が肩骨を疲労骨折したケースが多数報告されている)ことから見送られた。

・米国からの圧力によって全てが共倒れになることを恐れて、最初からそれぞれが独自に規格を作って、最も優秀な規格を採用する方向で四カ国が一致、ドイツが9㎜、イギリスが10㎜、フランスが8.8㎜での開発を進め、主導権を握ろうとする中、日本は今後徴兵される中でも小柄な体格を持つ18歳女子が1マガジンを連射しても、体が耐えられ、かつ、反動を抑えることが出来るだろうという理由で、各国規格でも大型となる口径9.7mmが選択された。


【9.7㎜弾(仮称:対妖魔用4式弾)の仕様概要】

・弾丸は9.7㎜とする。

・着弾時のストッピングパワーを最重視し、殺傷力よりも敵の動きを止める程のショックを与えることを優先する。

・故に、弾丸には妖魔の動きを止めるだけの強いショックを効率よく妖魔に伝えることが求められる。


・研究の結果、対人ダメージと対物貫通力の両立を目指して作られた弾丸で、弾丸そのものは、先端がキャップをかぶせたような中空構造で、そのキャップ内側を小型の鉛製の弾頭と“スチール・コア”と呼ばれる鋼の弾芯を接合させた作りのスチールコア弾が基本として選ばれた。


・スチールコア弾は、鉛と鋼という素材の比重の違いを利用した仕組みの構造で、想定された人体などの柔らかい目標へ着弾した場合のプロセスは以下の通り。


1.着弾と同時にキャップ状の先端が潰れることで、皮膚を突き破る(第一段階のダメージ)。

2.内部の鉛弾頭が露出し、突き破られた肉に接触する。ここで鉛弾頭は激しく変形・破砕することで運動エネルギーをダイレクトにターゲットに叩き付ける(第二段階のダメージ)。

3.潰れたままの弾頭が体内を傷つけながら高速回転を続けるのと同時に、弾芯とジャケットが破壊・分離するフラグメンテーション現象により、鉛の弾頭とは別に弾芯がそのまま高速回転しつつ体内の組織を傷つける(第三段階のダメージ)


・まとめていえば、着弾時のダメージ+鉛弾頭によるダメージ+鋼弾芯によるダメージの三重効果が望める代物で、まともに喰らったら着弾のショックで体内組織が破壊され、鉛と鋼に肉を切り刻まれることになる。

・特に注目されたのは、「第二段階のダメージ」で、キャップ着弾の衝撃へ瞬時に弾頭着弾の衝撃を上乗せすることで、ダメージの浸透力が格段に高まる「二重の極み」現象を引き起こすことが出来、着弾した際、対象が受けるショックは、3㎜も口径が大きい12.7㎜弾の直撃よりやや劣る程度にまで高まっている。

・このショックの強さは、人間に例えたらボディアーマーが運良く阻止できても、内臓破裂やショック死は避けることは出来ないほどで、動物実験でも牛や豚、熊が心臓の近くに弾丸を撃ち込まれた場合、それだけで死亡する確率は7割近いことが判明している。

・はっきりと対人仕様としてはオーバーキルであると認識されているのは当然。

・甲冑に対する貫通力も高く、鋼芯の先端が鋼板なら20㎜を100メートルで貫通出来る上、オーク兵の死骸から回収されたその甲冑を用いたテストでも、200メートルから胸部装甲を貫くことが確認されたことから、日本は9.7㎜規格の弾丸を完成させた。

・その過酷なテストと開発によって多くの技師がぶっ倒れる“デスマーチ現象”が研究所で見られ、犠牲となった技師達の恨み辛みがこの弾丸の別名をデスマーチ弾と命名させた。

・英仏独に先駆けて完成されたこの弾丸は、ほぼ完成段階にあったイギリスの10㎜規格より破壊力が高いことが実証されたことから、早期実用化を焦る四カ国での共通規格として認められた。

・前線では重機関銃に迫る破壊力で魔族軍を苦しめた。

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