強襲輸送艇(Assault Transporter)

**強襲輸送艇(Assault Transporter)

-ATと略す。

-兵力の輸送や防衛線の弾力的な運用などを目的に開発された。

-アメリカ軍のUAT-1が最初で、戦争末期までに英仏独の三カ国がライセンス生産し、戦線に投入した。

-低高度での運用が主体で、戦術的には装甲兵員輸送車(あるいは歩兵戦闘車)と攻撃ヘリコプターの性格を併せ持つ。

-超音速戦闘機と同等のスピードとVTOL機以上の機動性をもつTACは、戦闘爆撃機や攻撃機としては理想的な存在であるが、純粋に輸送ヘリのような、予め消耗を前提とせざるを得ない兵力輸送用兵器としては、あまりに高額にならざを得ず、コスト的に割に合わないという指摘は開発段階から存在しており、TACの低コスト化は開発各国共に課題とされてきた。

-米軍は、低コスト化の最大の課題とされてきたTAC用魔晶石エンジンシステムの低コスト化技術に、軍需系への進出を目指すベンチャー企業メサ・ロータークラフト・システムズ(MRS)社が成功したことから、同社の開発した簡易型魔晶石エンジンシステムを導入することで、コスト問題にある程度の回答を得た。

-MRS社は、一般に“クラスター”と呼ばれ、船舶やメサイア用魔晶石の削りだしの際に出る石片を特殊技術で練り固めることにアメリカで初めて開発した会社(世界的にはDクラス魔晶石と呼ばれる。なお、同様の製法特許は津島紅葉が既に取得済)。

-このクラスの魔晶石は、エネルギーを蓄える力は強いが、反面でエネルギーそのものを生み出す力は弱いため、常用を前提としたエンジンシステムには採用せず、非常用バッテリーやマジック・ブラスターのエネルギー・カートリッジに使用されるのが普通である。

-MRS社はこの点に注目して、魔晶石をバッテリーとして駆動させることで、行動には制限が出るが、TAC用のそれに比較すれば調達価格で半分以下という低コストなエンジンの開発に成功、強襲輸送艇という新概念と共に技術を米軍に売り込んだ。

-米軍はMRS社の技術を元に、ベル・ヘリコプター社に同システムを搭載した機体の開発を依頼。MRS社とベル社が共同開発したのが、輸送中心のUAT-1“トルーパー”と攻撃中心のAAT-1“ガンシップ”である。


***ATの利点

-低コスト

-生産性の高さ

-構造が簡単(エンジンが故障した場合、エンジンをそっくり交換し、エンジン本体は本国の専門工場で整備することになっている)

-稼動率が高い。

-ヘリと比較すれば生存性が高い。

-エンジン音などの騒音がTAC、ヘリ、輸送機すべてと比較にならないほど低い(最大出力で飛行してもトラックの騒音程度しかない)


***ATのデメリット(TACと比較して)

-ML砲が原則搭載出来ない(機関の構造上、砲のパワーチャージが出来ない)ので、空中戦車が作れない。

-バリアが使用出来ない(理由はML砲の制限と同じ)

-搭載能力がTACと比較して圧倒的に少ない。



**UAT-1“トルーパー”

-MRS社の簡易型魔晶石エンジンシステムを採用した強襲輸送艇であり、同概念の多目的航空機としては世界最初の機体。

-全長17.4m、全幅2.3mのサイズは、ボーイング・バートル社が米軍納入を目指していたV-22と奇しくも全長は一緒で、横幅(25メートル)は8メートルも小型な機体となる。

-その代わり、横幅一杯にキャビンを保有する構造は、後部貨物室がオープンキャビンとして運用出来ることから、横幅1.8メートルのキャビンしかないV-22よりも広く、UH-60ブラックホークとほぼ同等。本来ならもっと広くも設計できたが、米軍の提案依頼書(Request for Proposals RFP)にC-130での輸送可能という条件がついたために、このサイズに落ち着いた。

-エンジンが極めて小型で、サイズだけならUH-60のそれとほぼ同サイズ。

-米軍の調査では航続距離だけで約7000キロが可能。これは開発中のV-22オスプレイに補助燃料タンクを搭載した時のフェリー距離と同じ航続距離で、最大離陸重量33トン(V-22は23トン)を搭載したまま垂直上昇出来る。

-開発が難航しコストが跳ね上がっていたV-22よりも低い導入コストもあり、米国政府は正式にV-22をキャンセルし、同機の本格導入を決定、北米戦線では投入が間に合わなかったが、極東戦線には米軍輸送部隊の中枢として投入されることになる。

【速度】

-巡航速度は時速540キロ。C-130(同時速550キロ)やA-1スカイレーダーと同等の速度での巡航が可能なため、他航空機の効率的な上空支援を受けやすい利点がある。

【機体特徴】

-機体をシリーズ化することで特殊作戦から輸送、電子戦、救助など多目的用途に使用することが可能で、軍内部ではUH-60シリーズの後継と位置づけられている。

-UH-60の外部搭載支援システム(ESSS)を流用したため、同機同様に左右2箇所ずつのハードポイントに、AGM-114対戦車ミサイル4連装ランチャー、2.75インチ(約70mm)19連装ロケット弾ポッド、ガンポッドなどを搭載可能な上、ESSSに兵装を取り付けた状態でドアガンの運用も出来る。

-戦闘中は後方貨物室がオープンデッキに出来るため、兵員の乗降に利便性を確保している。

-装甲は歩兵戦闘車両並みの上に、航続距離や輸送力の低下を我慢出来れば、増加装甲も取り付け可能。基本敵に空力を考えずに済む魔晶石エンジンシステムの特徴が良く出ており、空飛ぶ歩兵戦闘車両としては合格点を与えられる。

-装甲は30㎜機関銃弾の直撃にまで耐えることが出来る上に、ケージ装甲やシュルツェンを追加で取り付出来るなど、対ゲリラ戦ではヘリ部隊が泣かされていたRPG-7の直撃にも耐えられるよう工夫が施されている。

【その他】

-乗員2名、兵員30名(V-22は乗員3名、兵員24名)搭乗可能。



**AAT-1“ガンシップ”

-UAT-1を攻撃ヘリ化したもの。

-同機の搭載能力の大きさを活用したもので、胴体幅を3メートルに拡大、キャビンの構造を強化して重武装を搭載した。

-本当は空中戦車を作ろうとして失敗し、やむを得ずAC-130同様のガンシップを作ろうとした。

-武装は機体左側面に装備され、目標を中心に左旋回しながら攻撃する。

-7.62mmミニガン×2挺・20mmバルカン×2門・30mm機関砲×1門を標準で搭載し、それぞれ各個に敵への攻撃が可能。随伴する歩兵部隊の頭上からの制圧攻撃に使用される。

-現在、AC-130同様の105㎜砲搭載型開発が進んでいる。

-航続距離などがその重量故にUAT-1に比べると短いが、それでも従来の攻撃ヘリと比較すれば倍近い距離と時間、行動できるという。

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