魔法科学

加納粒子

 「ミサイルはまっすぐ飛ばす、照準装置は正しく作動せず、誘導装置は狂い、無線は言葉を運べない。

 レーダーが敵の位置を掴めない中、米軍の最新鋭戦闘機が、開戦当初、GPS誘導でミサイルを発射した所、狂った誘導装置がミサイルを誘導した場所は、米軍の司令施設そのものだったし、敵陣地を肉薄攻撃した攻撃機は敵上空にたどり着く前に電子機器の暴走で墜落した。

 各所にコンピューターが使用されている戦車や戦闘車両は戦場では動くことすら出来ず、鉄の棺桶と化す。

 無線機ですら使えず、組織だった戦闘は出来ず、軍は各個撃破されていった」

 (お嬢様達のナイトメア その37より)



**狩野粒子とは?

・ようするに、こういう被害をもたらす存在。

・魔族軍に応戦した人類が驚愕したのは、まさに本文中に書かれた通り、頼りの兵器がまるで役に立たなかったことだ。

・この異常事態に対し、魔法科学の権威、狩野源一郎博士が独自調査の結果を科学雑誌に発表したのが「アフリカ・南米戦線における電子機器以上に関する調査報告書」である。

・この論文上において、博士は魔法科学の見地からその存在を突き止めた。

・博士の名をとって原因物質を「狩野粒子」と呼ばれるようになる。

・後に魔族と、魔族から技術供与を受けた中華帝国軍が戦場において電波攪乱幕として多用した点を考えると、人類にも製造(最低でも使用)が可能な存在と思われる。



**狩野粒子の科学的解明

・魔法を否定、または説明できない現実社会の科学では説明すら出来ない。

・狩野博士が科学雑誌に発表したのは、魔法科学者としてこうした世の科学者の魔法に関する無知を嘲り笑うためだったという。

・博士自身が後のインタビューで語った所によると、狩野粒子は「粒子」ではない。

・あくまで存在を語る上での「仮定として」粒子として語られているにすぎず、「よく論文を読まないから粒子などと呼ぶのだ!このバカ共め!」とは博士の言。



**空間を汚染する狩野粒子

・厳密には「空間汚染要因」と呼び、三次元上において形をとる存在ではない。

・ただし、粒子の影響下に三次元的に「存在」しただけで影響を避けられない。

・つまり、この粒子は三次元的に空間を汚染するため、魔法による特殊な防御をとらない限り、いかなる物質的防御も無意味。

・バリアのように、「高速で突き抜ければ」とか、「装甲でどうにか」なるような甘い存在ではない。

・厚い装甲を誇る戦車や、高速で飛来するミサイルの内蔵する電子機器が一瞬で破壊されるのはこのため。



**汚染の仕組み

・三十年戦争までは魔族や妖魔の存在が存在する場所の空間を汚染し、その汚染が残ることで被害が発生する。

・前述したように、ヴォルトモード戦争では、兵器として運用された事から、生産可能な存在、あるいは物質の形態をとれるものらしい。

・風や雨といった要因で除去は出来ない。

・汚染期間は不明。

・今後の調査研究が期待されている。



**汚染レベル

・戦時中、魔導師達によって大凡のレベル分けが実現している。

・レベル1~電子機器に雑音が入る程度。

・レベル2~レーダーに異常発生。無線通信が聞き取れない。

・レベル3~レーダー使用不能。無線はまだ使える。電子機器が誤作動。

・レベル4~電子機器が異常作動、または制御不能。ジャイロ・コンパスにブレが生まれる。ごく希に体調不良を起こすケース有。

・レベル5~全ての電子機器が使用不能に。ジャイロ・コンパスが完全に狂う。

・レベル6~電子機器回路が焼き切れる。人間が不快感に襲われる。空間的な方向感覚を喪失する。

・レベル7~電子機器使用不能。自分が立っているのか寝ているのかさえわからなくなる。

・レベル8~真空管機能停止。意識が朦朧とし、魔法防御が効かなくなり始める。

・レベル9~空間レベルで異常発生。意識を維持できない。

・レベル10~生命体が活動できない。


**具体的な被害

・汚染レベルが低ければ無線に雑音が入る程度(レベル1)

・徐々に無線が聞き取れなくなる(レベル2)

・電子機器が誤作動を起こし始める(レベル2)。

・ターボエンジンやジェットエンジンが爆発する(レベル3)


 ※作者解説※

・いろいろ考えていると、ガスタービンやターボプロップエンジンが使えないのにどうして船が航行して、ヘリが飛んでいるのか。とか、いろいろ矛盾が出てくるけど、作者は何も考えていません。っーか、わからん。

・ターボエンジンとジェットエンジンが使い物にならないという世界観(又は縛り)の演出上、こういう矛盾はどうしても避けられないのです(涙)


・パソコン類の全てが使用不能、上空を飛ぶ飛行機のレーダーが使用不能になる(レベル3)

・フライ・バイ・ワイヤなどで電子制御されている飛行機はあらゆる部位が異常を引き起こして操縦不能になる(レベル4)

・ジャイロとコンパスを使える限界(レベル4)

'' レベル3以上で電子機器制御の戦闘兵器はまともに使用出来なくなる''

・この後、さらに進めば、電子機器は沈黙。車両・航空機共に電子機器による制御が必要なものは完全作動停止(レベル5)となる。

・レベル6以上は現実的ではないとされるが、カナン大渦内の龍の巣がレベル8以上であることが近年判明している。

・また、レベル5程度でも死亡するケースが存在することも報告されているので、汚染が生命体に与える影響は再考が必要。

・なお、ここで言う電子機器とは最新鋭シリコンチップからLSI程度までを指す。

・真空管はかなりのレベルで影響を受けないので、この時代、通信装置などに多用されている。



**汚染範囲

・汚染される空間は、魔族、妖魔のサイズ×10倍程度。平均汚染はレベル4~5。

・個体の場合、周辺1~5m範囲が最も汚染が激しい。

・集団の場合、意図的に魔素を放出することがあり、こうなると汚染範囲は×200~500倍。レベルは5以下にはならないため、戦場想定範囲は全面的に汚染されることになる。

・戦場及び戦場跡の汚染は平均レベル4以上。

・長野県と新潟県は平均汚染レベル3。



**汚染被害

・レベル10(実際の汚染被害は未確認:カナン大渦に存在する“龍の巣”がレベル8以上、一部がこのレベルと推定はされている)に達しない限り、生命活動に何ら影響は出ない。

・しかし、電子機器の普及が進んだ昨今、腕時計から自動車まで電子機器が内蔵される生活必需品は幅広く、そのほぼ全てが使用不能になる汚染は、戦災復旧の大きな障害となっている。


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