秋灯

 宿題終わった? というメッセージが飛んできたのが十時過ぎだった。俺はNOと嘆く犬のスタンプで返信し、メッセージで補完する。


『フネちゃんバカみたいな量出した』


『またいじめたの』


『フネちゃんがモテたかどうか』


 あーあーみたいな感じで頭を振るうさぎのスタンプが送られてきた。浩太はこのうさぎのスタンプを気に入ってるんだろうけど、アメリカのアニメっぽくて微妙に可愛くない。


『どう思う?』


『モテたかどうか?』


 YESと掲げた猫のスタンプを送る。


『気にしたことない』


『だろうね』


『でもファンクラブあるらしいよ』


『フネちゃんの??』


 ヘドバンしてるウサギのスタンプが送られてくる。そんな勢いで言うことか。俺もとりあえずマジで? と首を捻る犬を送っておく。


『うわさだよ』


『うわさでも元があるだろ』


『知らないけど』


『明日女子に聞いてみよ』


『教えて』


『りょ』


 そんななんてことない会話にもならないようなやり取りが連なって、長くなっていく。明日の体育がだるいとか、数学の小テストを諦めたとか、そんな感じ。もちろん古典の宿題は一向に進まない。秋の夜長というやつに、俺らのやり取りが挑んでいく。

 ただその挑戦は母親の「いつまで起きてんの!」という怒鳴り声で中断させられることになるのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る