かぼちゃ

 休日の朝、浩太からかぼちゃのパイを作りたいから来いと連絡があった。料理好きになっていたのには驚いたが、まあ美味いもんが食えるならと自転車を漕いでやってきた次第である。俺を迎えてくれた浩太は黒い、少し窮屈そうなエプロンをしていた。


「じゃあこれ潰して」


 と、ボウルに入った湯気を上げているかぼちゃと謎の器具を渡された。


「え、何これ」


「マッシャー。潰してる間にパイ生地戻したりするから」


「お母さんは?」


「パート」


「お土産渡しといて、うちの母さんから」


「分かった」


 俺は適当に手を洗ったりしてからマッシャーと呼ばれた器具でかぼちゃをぐちゃぐちゃにして、それから砂糖とかなんか茶色い粉(シナモンだとあとから聞かされた)とかを注ぎ込まれたものを混ぜたりした。それから浩太にバトンタッチ。浩太ももうやることないから座って待っててと言ってくれたのだけど、俺はそばに立っていることにした。


「生クリームって、なんかいっぱいあるよな」


「植物性と動物性のこと?」


「多分そう」


 俺はふーんと適当な返事をしつつ、テキパキとパイをオーブンに放り込んで洗い物を始めるその手をただ見ていた。




「一緒に作ると美味しいよね」


 焼き上がったパイを切り分けてホイップクリームを上に乗せながら浩太が言った。俺は反射的にけらけら笑った。


「あれって一緒に作ったうちに入る?」


「入るでしょ。手伝ってくれたじゃん」


「あんなんでいいんだぁ」


 笑いながらホイップクリームのボウルに手を突っ込もうとしたら頭を叩かれた。

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