屋上

「昔さあ、隆太のとことうちで、デパートの屋上行ったじゃん」


 昼休みの教室の端、浩太はお母さんお手製の弁当を突きながらそんな昔話を始めた。ミートボールが好きなのは変わっていない。


「ほら、隆太あの謎のパンダに乗りたがってた」


「ふっへへ、なっつかし、何」


「や、屋上っていいなーって」


「どういうことなんだよ」


 浩太はんーと言いながら三つ目のミートボールを口に放り込む。


「屋上でお弁当食べたかったなって」


「うちの学校では無理だろ。確実にやべえもん」


「そうな」


 俺は購買で買ったいちごオレをずるずる啜りながら思う。今の季節は寒かろうと。




 その夜浩太からメッセージが入った。


『パンダじゃなくてライオンだった』


 そこはどうでもいいだろとおかしくなって、俺は五分くらいずっとツボっていた。ご丁寧にライオンの絵文字まで付けちゃってさあ。

 久しぶりに行こうかと調べたら、もうデパートの屋上に遊園地はなくなっていた。

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