第5話 美幸の告白

美幸が家に泊まりに来た。

俺はその事にはかなりの衝撃を受けたのだが.....。

何故かと言えば美幸だ。

俺達を嫌っていたかの様なあの美幸が家に泊まりに来たのだ。

それはさぞかし衝撃である。


「達也さん」


「.....あ、はい。な、何でしょう?」


「そんなに畏まらないで下さい。私は年下なので」


「.....まあそうなんだけどね.....」


リビングで勉強していると。

その様に美幸に指示されてしまう。

俺はビクビクしながら美幸を苦笑いで見る。


美幸は?を浮かべながら家事をしていた。

流石に美里と似ているだけ.....料理の腕も上の様だ。

まあ当たり前だろうな。

それなりに指導する人が付いているだろうし。


「美幸お姉ちゃん」


「.....はい」


「それを言うなら美幸お姉ちゃんも畏まらなくて良いんだよ。だって.....私達の中だから。ね?」


「.....まあそうなのですが.....」


顎に手を添えながら美幸は考え込む。

それから俺を見てくる。

俺は苦笑いを浮かべながら、まあ敬語じゃなくて良いんじゃ無いのか、と回答する。


そして美幸を見る。

美幸は少しだけ恥じらうかの様な顔を浮かべたが。

直ぐに頷いた。


「では敬語は止めます。達也さんも」


「.....分かった。敬語は止めるよ。.....それで美幸。.....何で今日は泊まる事を決めたんだ?小春の影響もあるだろうけど」


「.....私は.....お礼をしようと思ったんです。2人に、です」


「.....そんな事をしなくても良いけどな。別に。.....俺達は美里の友人や知り合いなのだから」


「.....あれだけ.....私達はスルーしたのに?」


俺は胸に秘めた思いを打ち明けるつもりだったが。

それは止めてから笑みを浮かべる。

どれだけあっても俺達は俺達だしお前らはお前らだからな、と答えた。

それから美幸を見つめる。


「.....美幸。多分お前なりの配慮をしていたんだろ?ここ最近はずっと」


「.....達也さんは透視能力でもあるんですか?」


「だってお前は.....昔からそんな感じだったしな。.....心配性だったから。物事に対してはずっとな」


「.....でも今はそうとは.....」


「.....いや。お前は小春の為にこの家に泊まる。その時点で昔と同じさ」


ノートと教科書を閉じながら口角を上げる俺。

それから美幸を見た。

すると美幸は赤くなっているのに気が付いた。


そういう見透かす.....所とか優しい所とか.....、と呟いた様に見えたが。

口だけ動かすだけで聞こえなかった。

詳しく聞こうと思ったが、何でもない、と振り払われてしまう。


「.....お姉様.....もそうだけど。私は.....達也さん達と関わりたいって思ってました。.....ずっと」


「.....そうか」


「だけどいつしか勉学の面でも。.....そして体育も全部ですが忌々しくなってしまったのです。全てが」


「.....だろうな。.....お前らの事はその点では恨んでいたしな俺も」


だけど美里が巻き添えになる事故が遭ってから。

俺は.....考えを改めるべきでは無いかって思ったのだ。

違う事を考えているのでは無いかと。

美幸も美里も、だ。

だから.....改めて接したのだ。


「.....正直。私達は見下したくて達也さんを。そして小春さんを見ていた訳じゃ無いです」


「.....何があったの?」


「.....お父様との確執ですね。それらも影響しています。.....私は.....美里お姉様が戦っているので何も言えませんでした」


「.....成程な。.....だからお前らは俺を無視し始めたのか」


「.....私は嫌でしたが。.....だって.....私は.....」


涙を浮かべる美幸。

それから、だって私達はずっと遊んでいたから!、と涙を流した。

そして俺を見てくる。


達也。私は.....!、と言いながら、だ。

俺はその姿に衝撃を受ける。

何も変わって無かったのかコイツらは昔から。


「私は仲良くしたいって思ってたのにずっとお父様が許してくれなかった!.....今日だって私が.....お父さんに色々言ったのに全部聞いてくれない!情けないの一言で.....全部終わらせた!!!!!もう帰りたくないよ.....あんな父親の居る場所に.....」


「.....お前.....」


「それに私はお姉ちゃんを見ていて羨ましいって心底思っていたのに!!!!!」


「.....何がだ?.....え?」


「私だって達也が好きなの!!!!!」


音が消える。

ん?あれ?、と思いながら俺は数秒考えてから。

真っ赤に染まる。

馬鹿な!?、と思いながら、だ。


私はずっと迷っていたの.....困惑していた。

でも達也は絶対にお姉ちゃんが好きだって.....そうだって。

だから諦めていたけど.....!、と絶叫する。


赤くなっている美幸を見ながら。

美幸は.....衝撃を受けた俺達を見る。

小春も口元に手を添えていた。

驚きが隠せない様だ。


「私は.....ずっと達也が好き。.....救ってくれた時からずっと。.....憧れだった。.....こんな時もずっとずっと!.....でも達也は振り向かないから。知っている。.....でもストレスなの。ゴチャゴチャなの。どうしたら良いの」


「.....お前.....美幸.....」


「.....お兄ちゃんが好きなんだね。.....美幸お姉ちゃん」


「.....うん。ずっと好きだから。.....昔からずっと」


泣きながら俺の名前を呼ぶ美幸。

でも今決めた、と前を見てくる美幸。

そして笑みを浮かべた。

気持ちを吐き出してスッキリしたから、と言いながら、だ。

腰に手を添える。


「私は負けない。お姉様に」


「.....美幸.....」


「.....うん。その意気。お姉ちゃん」


「.....有難う。小春ちゃん」


衝撃的な夜であった。

美幸が俺を好いている事が、だ。

俺は唇を噛みながらも。

だけど.....頑張ろうと。

そう思えた感じだった。


「.....美幸」


「.....何?達也」


「.....分かった。お前の気持ち.....本当に有難うな」


「.....うん.....」


そして俺達は、ご飯作ろっか、という感じになって。

そのまま夕食を作り始めた。

因みにこの事は横の家に連絡は入れてある。

母親が出てくれたのが幸いだった。

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