遥か彼方から初めまして。
真田あゆ
episode.1
たくさんのビルの立ち並ぶ東京らしいビル風をもろに受ける。周りに見えるは、ほかのビルの屋上ばかり。そんな簡素な景色の中に独り。風を受けながら下をただひたすらに眺める。美しい景色など皆無。あるのは、多くの車たち。国道246らしいたくさんの車の音。
そこに不釣り合いな、一本の川。きれいな緑に囲まれた小さなせせらぎそよぐ川辺。
僕はなんど君を思い出し、涙を流せばいいというのか。
ねぇ、もう一度でいいから僕の名前を呼んでよ。初めて出会ったこの場所でもう一度。あの、鈴が鳴るようなきれいな声で僕の名前を...
「
いつものように歩く学校へと続く道。昨日感傷に浸っていたら、抜け出せなくて感傷を引きずりながら、まさにとぼとぼといった感じで下を向いて歩く。すると、須古井後ろから聞きなれた声が届いた。
「あゆううううううううううううっ!!」
うるさいくらいの声量なのに、うるさいと感じないのはこの子、瑞樹の特有の声。
「どうしたの、瑞樹。今日も朝から元気だね。」
「うんっ!俺は元気だ!!あゆは今日も暗いなっ!」
うん。それは悪口になるから気をつけようね。確かに暗いだろうからぐぅの音もでないけどさ。
「なんだ、どうした?まぁどうせ、凛櫻のことでも思い出してたんだろうけど。」
「あうっ、、」
図星だった。これは幼馴染ゆえにさすがというべきかもしれない、、
凛櫻こと三上凛櫻は私の最後の彼氏の名前だ。三歳年上の僕の幼馴染であり、瑞樹の兄だった。僕は、小さいころからずっと凛櫻のことが大好きだった。近所からは僕と瑞樹と凛櫻の三人で兄弟として扱われていたし、みんなそれでよかった。うれしかった。
僕は凛櫻に「あゆは」と愛称でなく呼んでもらえるのがこれ以上なくうれしかった。しかし、凛櫻は僕を僕たちを置いていった。享年19。あまりにも若すぎる死だった。死因は自殺だった。遺書として、僕と瑞樹にだけ手紙が残された。瑞樹には「ごめんな。あゆはをよろしく。」とあり、僕には「愛してる、いつまでも。」という一言が残された。
君はどう思う。「大嫌い、さよなら」と言われるのと、「愛してる、いつまでも。」と言われて置いて行かれるののどちらのほうが優しいと思う。ぼくは、「大嫌い」と言われたほうが優しいと思う。だから、僕の最後の彼氏は優しくなかったんだ、、笑
「、、、ゆ、あゆ、あゆ!!」
「あっ、え、なに?」
「しっかりしろよぉ~感傷に浸んのはいいけどよぉ安全なところでにしろ!」
うぐっ、びっくりするほどのド正論、、
「あゆは」
「「え?」」
僕と瑞樹の声が重なった。びっくりした。あゆはと呼ぶのはこの世で(あの世で?)ただひとり。でもその人はもういない。なのに呼ばれる僕の名前。
コンマ一秒のうちにそんなことを考えて振り向くと知らない男の人がそこにいた。
「あの、どこかでお会いしたことがありますか?」
そう尋ねると、その男の人は不思議そうな顔をして言った。
「もしかして、僕。今何か言いましたか?貴方はそれについて知っていますか?」
はっきり言ってこの人は何を言っているのかと思ったが、とりあえず「僕の名前をお呼びになったので...」というと、
「ほんとですか!では、この方のいえ、三上凛櫻さんの未練は貴方のようですね。もしよろしければ、放課後僕の事務所にいらしてくれませんか?」
そう言って男の人は名刺を渡してきた。
『降霊事務所 華怜 代表取締役 華怜
そのまま二言三言交わして華怜さんとはそこで別れた。
「おい、あゆ。どうする気だ?」
「行く。だって、凛櫻の名前出してきたし。未練なんて気になる、、。」
そういうと、瑞樹はしばらく黙ったままだった。しかし、
「わかった。俺も行く。だから!一人で行くなよ!!!」
そう念押しされはしたが、行くことはできることになった。どう転んだっていい。ちょっとでも凛櫻に関わる何かがわかるなら。
遥か彼方から初めまして。 真田あゆ @ayuayu_0630
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。遥か彼方から初めまして。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます