第2話 風ガ吹イテ桜舞う

「ーー以上でホームルームを終わる。1時限目間に合わせるように」

先生がドアから出た瞬間、大人数の生徒が私の机に集まった。


「初めまして!野萩さん!ねぇねぇっ葵って呼んでいい?」

「えーっ!私も呼びたいぃー!!」

「ねぇLINE交換しようぜ!!」

「あっ俺も!」

私に対しての言葉が次々に連なっていく。

私はあまり人と関わらず高校生活を謳歌したい。そのため親しい友達もあまり必要がないのだ。


「おい葵!何してんだよ〜」

そう私の名を呼んだのは白菊 楓。唯一の幼なじみで、彼が小学校に上がると同時に引っ越してからかれこれ10年ぶりの再開だった。


「な、なにって私が何しててもいいでしょ、!」

そう強めに返すと楓はニコッと笑顔に花を咲かした。

「今日から演劇部昼休みに毎日公演するんだよ!見に行こうぜ」

「え、っでもまだ昼休みじゃぁ、ないよ?」

そう言うとはぁっと大きなため息をついて

彼は言ったのだった


「うちの演劇見たことないから言えるんだよばーっか。予約取りに行くんだよ」

そう言うと強引に手を引き何人かの生徒たちの間を通り抜けて廊下を走り抜けて行く。


「ち、ちょっとっ!!走んないでよ!」

「何言ってんだよ1時限始まるだろ急いでんだよ」

そう文句のように口を開く彼に引っ張られて廊下を猛ダッシュしていた時、


「ちょっと楓どこ行くの?!」

その瞬間、鈴がなった気がした。いや、風鈴の音によく似ていた。

気づけば目から涙がでている気がする。

3月の春風に乗せて柔らかな無数の花びらが顔をだした。


「まぁた女の子乱暴に扱ってる!もう〜バカなんじゃないの?」

その子は私にパッと目をむけ楓に対しての注意の言葉を投げている。


「あーはいはい!お前はまたいっつもうっせえなぁ”桜”」

「うるさくて結構よ!」

ふんっとそっぽを向いた彼女がまるで初対面かのように話しかけてくる。


「初めまして。私は綾乃 桜です!あ、わかるかな?野萩さんの前の席だったんだけど…」

相手を気遣うその仕草と声色は昔とそっくりで、今も全く変わってなかった。


私は彼女、桜を知っている。小学校で色々あった頃、助けてくれてよく遊んでくれていた親友だった。


でも、違う、おかしいのだ。

彼女は、



私の目の前で事故にあって、入院していたはずなのに。

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