交わる気持ち #10

「唯ちゃん!待った!?」

「うぅん、私が早く着いちゃっただけだよ」

「よかった!じゃあ行こ行こ〜!あそこのスイーツインステで人気だったから気になってたんだ〜!」


SNSをしない私には全く知らなかったけどこういう情報をくれる美紅にはたまに感謝している。

ただ1つ、厄介なのは美紅も甘いものは好きだけど一緒に食べに行った時のトラウマが何度かある。


初めてスイーツを食べに行った時はスイーツの食べ放題だった。元々よく食べる美紅は隙なくひたすら食べ続け、少し心配していた時だった。

「やばい唯ちゃん...吐きそう...うっ...」

「ちょ、ちょっと待って!?トイレ行こ!?」

「苦しすぎて動けない...」

結局間に合わず私のバッグを急いで美紅の口元に当て、バッグが大変なことになってしまい、帰ると両親がまだ生きていた時だったことから家政婦が心配して私の体調不良だと疑い私が病院に行くはめになった。


次誘われた時は食べ放題じゃないことから安心して人気のおしゃれなスイーツ店に食べに行くと、美紅は可愛いスイーツにテンションが上がり写真を撮りまくっていた。インステに載せる写真が決まらないと言い出し、私はそういうのが分からないからと美紅自身が決めるように言ったが、次の日は学校で大事なテストの日だった。

夜中まで写真を選んでいたらしい美紅が次の日のテスト中に寝言で「唯ちゃん〜!またスイーツ食べようね〜!ほら!インステ載せたよ〜!」と言い出し、私と美紅がテスト中に携帯を触っていた疑惑が出て放課後、先生への弁解が大変だった。


こんな事が立て続けに起こることから今回は何も無いことを願い、電車に乗って住んでいる地区の都市部へ向かった。

都市部へ行くと人も多く、美紅の可愛らしい容姿、私の大人っぽい容姿からナンパが絶えずにいた。


「ねえねえ!君たちどこ行くの?俺たちと一緒にカラオケでも行かない?」

「そのカラオケ、美味しいスイーツありますか!?」


美紅は目的のスイーツだけ忘れずに、その天然さから話に応じてしまい、引き離すのは大変だった。美紅の手を取ってナンパしてくる男達の言葉を無視して足早に去り、なんとかお店に着いた。すると遠目から見ても分かるほど人気なスイーツ店なだけ行列ができていた。


「美紅、どうする?これかなり時間かかりそうだし持ち帰ってどっかで食べる?」

「そうだね...お店の中も可愛いらしいけどこのままじゃ時間かかりそう...」


美紅にとってはスイーツとセットであったオシャレな店内で食べることを諦め、持ち帰り専用の列に並んだ。並びながら美紅に気になっていたことを聞いた。

「昨日そら先輩にいきなり担がれて行ったけどその後なにしたの?」

「昨日?あ!放課後の!あの後2人でカフェでのんびり話してた!」

「それだけ??」

「それがさ〜、その時にカフェの前であの唯斗くんが目の前でドラマ撮影してたの!だからそら先輩と2人で盛り上がって追いかけて、撮影終わったあと走って追いかけてきたー!」


何してるんだそら先輩。るいのためとはいえ、美紅振り向かせるためにもやったことだろうけどなんでいつも美紅のペースに巻き込まれてるんだ。

それにしても美紅だけじゃなく、さらにスポーツ系のそら先輩にまで仕事終わりに追いかけられたハルが少し可哀想だけど逃げる姿を想像すると面白くも思えた。

全て知っている美紅には愛ちゃんのお姉さんのことや、その後のるいの告白の事の話をしていると、なんだか並んでいる行列がざわつき始めた。


「あの人達かっこよくない!?身長高いし!」

「え〜あの2人かっこいい〜♡」

「私あのスポーツ系がタイプ〜!」

「私はチャラそうな方〜!♡」


言葉を聞いて嫌な予感がした。急いで美紅をお店側に体を向けさせて、口を抑えた。


「あれ!?美紅ちゃん!?」

「え!?ってそら先輩!!!」


名前を呼ばれた瞬間美紅が振り返ってしまった。私は思わず振り返ると、そら先輩の横でニヤニヤしたるい先輩が立っていた。


「あっ...」

「あ、唯ちゃん!大人っぽすぎて後ろ姿じゃ普段と違って分かんなかった!」

「休みの日くらい私だって着飾りますよ」

「唯ちゃんらしいね〜、それで2人はここ食べに来てたんだ!今インステで人気だしね!」


人気者で気さくなそら先輩はSNSをよく見ているらしく、このお店を知っていた。すると、そら先輩が続けて話した。


「美紅ちゃんインステスイーツばっかだしなんとなくここに来る気がした!でもこれ持ち帰り用の列でしょ?よかったの?」

「私のインステ見てたんですか!?本当はお店の中もすごく可愛いし行きたかったけど人が多くて...」

「そっか〜、この人混みじゃねっ...ちょっとまってて!」

「おまっ!ちょっとまってよ!」


そら先輩はそう言うといきなりるいを置いていき横の路地からお店の裏側に行った。


「次に予約でお待ちの水無瀬さん〜、こちらの予約ミスで次に入っていたこと申し訳ありません。4人で予約ですよね?」

「え!?」


わけも分からず返答に困っているとそら先輩が帰ってきた。


「そうです!ありがとうございます♡」

「では、こちらの席へ...//」


店員さんはそら先輩の笑顔に顔を真っ赤にさせ、行列の中4人席へ案内された。


「そら先輩どういうことですか?」

「この店、俺の姉ちゃんが出した店でさ、今日様子見て見たくてるいと通りがかってね!」

「そら先輩のお姉さんが!? でもそれだけでここまでしなくても、待ってる人も沢山いるし」


思わず驚いてしまった。


「美紅ちゃんなら店内絶対入りたいだろうな〜って思って!」

「美紅のためなら...ありがとうございますっ」


るいは昨日の事もあり、話そうとして来ないがまさか休日にまで関わってくるとは思っていなかった。私が頭が混乱している中、美紅は店内の可愛らしい雰囲気に1人テンションが上がっていた。


「わ〜!お店入れたの嬉しい〜!そら先輩ありがとうございます!!」


他にももっと驚く事があったはずだろと思ったが美紅は目の間のスイーツにしか興味が無いらしい。

美紅と私でメニューを選び、そら先輩達も決まったのか店員さんを呼んでメニューを伝えていた。るいを見るとなんだか浮かない顔をしていた。それを心配するのも別に私には関係ないことだと思い何も聞かずにいた。雑談をしていると頼んだスイーツがすぐに来た。

美紅はキラキラした目で早速インステ用の写真を撮るために携帯をバッグから取り出していた。


「うわ〜!可愛い!!写真撮りまくるんで!皆が食べてるのも!そら先輩達も先に食べてください!!」

「え?いいの?」

「美紅はいつもこうなんで気にしないで食べてください。じゃないと後々後悔しますよ。」

「なんだか怖いけど...食べることにしようかなっ。」


皆が食べ始め、美紅は一通り写真を撮ると食べ始めた。私は気になったことがあり、食べながらそら先輩に気になったことをひとつ聞いた。


「そら先輩、何とは言いませんが協力する話、どうなってるんですか?ちゃんとそれに合った行動してます?」

「え、えっと...それは...どのことから...」

「自覚があるなら大丈夫です」


私自身、美紅に対してハッキリした気持ちが見えずに心配していた部分もあった。少し自覚もありそうだし安心して、ふとるいを見るとかなり具合の悪そうな顔をしていた。


「るい?熱でもあんの?あ、私がいるから?」

「ちげえよ」

「何その態度」


すると、なにかに気づいたかのようにそら先輩が急に話し声を出した。


「うわ!そうだ!るい甘いもの苦手じゃん!」


「え??」

美紅と私は驚き思わず声を揃えた。


「おま、今更それ言うなよ。カッコつかねえじゃんか。」

「何を格好つけんだよ。あ、唯ちゃんいるから合わせようと思ってとか〜??」

「ばか!ちげえよ!べ、別に甘いもんくらい食べれるし!」

「ん?でも前るい甘い物食べた時...」

「うるせえ!」


そう言うといきなりるいは顔を赤くして足早にトイレに行った。

私は気になってそら先輩に問いかけた。


「あの、るいが甘いもの苦手なのなんで気付かなかったんですか?」

「いや〜美紅ちゃんの事しか考えてなかった☆」

「ええ、私ですか!?」

「だってインステであんなに甘い物ばっか載せてたらどうしても食べさせたい!って思って、るいのこと忘れてた〜笑」

「はぁ...それでるいは大丈夫なんですか?」

「それがさっきるいに遮られたけどあいつが甘い物苦手って知らずにスイーツの店連れてった時さ、あいつ無理して食べてたみたいでさ、具合悪いって言い出して俺急いでバッグ出したらそこに吐いたんだよ。」


ん?何かデジャヴを感じたけど話すと美紅が可哀想だから言わないでおこう。隣にいる美紅を見ると顔を真っ赤にして言わないでと言わんばかりに私の方を見ていた。

さすがに少しるいが気になってトイレに行こうと席を立った。


「あれ?唯ちゃんるいのとこ行くの?事情知ってるとは言え、やっぱりるいのこと気になってきてるんじゃない〜?」

「ありえません。そら先輩がるいを無視して甘いものを無理やり食べさせたそら先輩にも責任があるので後々るいと2人で責任とってもらいますね♡」

「あ、えっと...それは...ごめんなさ...」

「じゃあ行きますね。」

「唯ちゃん〜!ごめんって〜!(泣)」


るいが心配になっている自分にムカついてしまうけど今回のことはそら先輩が悪い。男子トイレの前でるいを待っていると、るいが出てきた。


「お前、なんでここにいんの?俺にそんなに会いたかった?」

「心配した私が馬鹿だった。」

「ちょ、待てって!その...ありがとな心配」

「いや、別に。」

「どうする?戻る?」

「ん〜、いや!このまま2人で出かける!」

「え、ちょ!?」


そう言うとるいは強引に私の手を取って足早にお店を出た。


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あのイケメン有名俳優が妹にガチ恋!? 來夢🐍 @raimu_rairai

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