それぞれの告白 #4
この学校に私を敵視する女子はたくさんいる。でもそれとは真逆のタイプが1人だけいた。
「唯せんぱぁ〜い♡ いたぁ〜!!!」
トットットッ ぎゅっ
私を見つけるなりものすごい勢いで走ってくる私より更に5cmほど身長の低い、可愛らしい女の子。1年生の
「私本当に好きなんです!付き合ってください!唯先輩!」
「...」
今わかってしまった。とりあえずこれは丁寧に断らないと勘違いされても困る。どうする?男を振るのは慣れてるけどさすがに女の子は慣れていない。慣れてるわけがない。あ、彼氏ができた事にしよう。そしたら引くしかないはず。
「愛ちゃん。ごめんねっ。私今付き合ってる人がいるの。だから愛ちゃんとは付き合えないんだ。」
「う...うぅ...先輩ぃぃ(泣)」
「な、泣かないで愛ちゃん。気持ちはすごく嬉しかったよ。これからも仲良くしようね?」
かなり優しく言った。これで引いてくれるはず。それにしても最近どっかのくそロリコンの涙しか見てなかったから、この子の涙がすごく尊く見える...。だめだ、感覚が狂ってきてる。
「私!諦めません!どんな人と付き合ってるか知らないけど唯先輩の事大好きなんです!私はそんな人には負けません!!」
「そっか。ありがとうね。」
なるほど。これに不純が入ってきた最終形態がハルか。お願いだから愛ちゃんだけはその純粋さを貫いて欲しい。さすがにこんな私でも将来、愛ちゃんにかかと落としはしたくない。
その後、愛ちゃんは教室に帰っていった。残りの授業も終わり、放課後になった。今日はいつもはすぐに一緒に帰ろうと寄ってくる美紅の姿がない。
美紅がいない時は何かトラブルに巻き込まれることが多い。
前に美紅が消えた時、心配して探すとトイレでびしょ濡れになっていた。イジメでも合ったのかと思って聞いてみると、水を飲んでいるときに思い出し笑いをしてしまい、吹きこぼしてびしょ濡れになったらしい。
今考えてみれば吹きこぼしただけで頭からびしょ濡れになるなんてこいつは頭皮から水でも飲んでいるのか。その時は頭を乾かしてあげ、タクシーで家まで送った。
こんな風に美紅のトラブルに巻き込まれてしまう。まあそこら辺でカラス飼いたいなんて言って木登りでもして落ちていたら困るので一応探す。外に出ると体育館裏に美紅がいた。そこには3年生の男子もいて恋愛ドラマのような光景が目に入る。あまりに気になって覗き見をしてしまった。
「あの...さ、俺...好きなんだ...」
「ごめんなさい!私好きな俳優にしか興味がなくて!」
この光景。まあそうだと思った。美紅が告白される事があるのに驚きを隠せない。それに恋沙汰には敏感な美紅があっさり振るなんて。振った理由の好きな俳優は...想像ができる。触れないでおこう。
「あ、ちがっ...そうじゃなくて、水無瀬 唯ちゃん...同じクラスだよね?」
「え!?あ、はいっ」
「あの子のこと好きなんだ。明日の放課後、図書室に呼び出してくれない?」
「図書室なんかで告白するつもりですか??コソコソ話で告白されても嫌じゃないですか?」
そういうことか。でも美紅が珍しく正論を言っている。確かにあんな静かな空間でコソコソ告白されても気持ちが悪い。
「もっとこう...どかーーーん!!って!!好きです!!!って大声で図書館で告白してみるのはどうですか?」
「...」
違う。告白の仕方の問題じゃない。美紅はどっちの味方なんだ。
美紅がいきなり大声出すもんだから相手も引いている。今行かないと私は確実に明日どこかで恥をかく。仕方ない。今このまま乗り込んでやろう。
「あの〜、私に何か用ですか??」
「え!?水無瀬さん!?」
「唯ちゃん!?なんでここに!?」
「通りがかったら名前が聞こえたので、私の事好きなんですか?」
「え!?えっと...うん。付き合って欲しい。」
「いいですよ。」
あまりに簡単に答えるものだから、2人とも開いた口が塞がらない。愛ちゃんには嘘をつけないし、彼氏がいればロリコン野郎も少しは引くだろう。彼氏を作る計画はしていた。丁度いいタイミングだったから否定をしなかっただけだ。
「え?ほんとにいいの?水無瀬さん」
「唯って呼んでください。」
「うわあ!学校1の美男美女カップルできちゃった!絶対噂になるよ〜!」
「ん?美紅?今なんて言った?」
「あれ?知らないの?学校でイケメンって女の子たちがいつも騒いでるのに!」
やってしまった。人を避けるために付き合った相手が人を寄せる人じゃ意味が無い。確かに身長も高く、顔も整っている。愛ちゃんやハルには効くかもしれないけど私としたことが。明日から学校中の女子と殺人ゲームでも始まりそうだ。
「ゆ、唯...?良かったら一緒に帰ったり....」
「ごめんなさい。今日は美紅と帰ります。」
「そっか...なら明日教室に少し遊びに行くねっ」
手を振りながら先輩はどこかに行った。美紅は不思議そうに私を見つめてくる。事が大きくなり過ぎてる。全部話そう。美紅には帰りながらここ最近何があったのか全てを話した。
驚きながらも私が金持ちの家柄なのは目に見えて分かっていたらしく案外納得してくれた。ハルが兄になったことは、周りに話さないことを条件に、今度家に美紅を呼んで会わせる約束をすると興奮した犬のようにヨダレを垂らしながら頷いていた。
美紅とそれぞれの道で離れ、家に帰ると、ハルは既に帰っていた。
「おかえり〜♡ 学校どうだった?楽しかった?お友達はっ??」
「入学式じゃないから」
「学校での事聞かせてよ〜♡」
「彼氏とくっそイチャイチャしてた」
「...え....なに..?なんて...?」
ドンッ
煽りすぎた。いきなりハルに押し倒されてしまった。目の前のハルは笑っていない。ファンからしてみると夢のまた夢のシチュエーションなんだろうけど残念ながら私は本当に興味が無い。
ドゴッ ボスっ
「うっ...っっ....うぅ....」
思いっきりハルのあそこを蹴りあげ、倒れたハルをいない事にしてお腹を踏んで、そのまま風呂に入る。
風呂をあがり、ご飯を食べ、テレビを見ているとハルが出ているドラマが始まった。悔しいことにこのドラマはずっと見ていて見逃せない。ハルはしれっと横に座ってきてアラームでも付けているのか5分に1度ブツブツ小声で謝ってくる。気持ち悪い。
ドラマが始まると、許して欲しいのかハルがカッコつける場面だけ横でぼそっと同じセリフを唱えている。
「あ〜もううるさい。集中して見れないんだけど。」
「うわ!なんか今の言葉兄妹っぽい!会話が兄妹っぽい!」
会話をしてもいないし話にもならない。もう寝てしまおう。内容は明日美紅から聞けばいいや。
なんかブツブツ言って引き止めようとするハルを無視して寝室に行き、寝ようとしたら携帯の通知がなる。
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ハル〔おやすみ唯ちゃん♡また明日ね♡〕
??〔美紅ちゃんから連絡先教えてもらいました。
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地獄絵図だ。そう言えば今日付き合うことになったらしい私の彼氏、名前すら知らなかった。引き返すなら今だ。だけど頼れる両親がいなくなった今、また女子になるかされると次はやばい。
人気の先輩と付き合っていれば何も言えなくなるだろう。返事だけして寝よう。
次の日の朝、人の気配がして自然と起きた。横を見るとハルが私の携帯をコソコソと覗いていた。
「ねえ」
「あ、え、これは、その、携帯の保護フィルムとか買ってあげようかなって!ヒビがないか確認してた!そう!保護フィルム!」
「彼氏とのトークでも見ようとしたんでしょ」
保護フィルムを買ってあげようなんて嘘、逆によく思いついたな。むしろ今自分で言い聞かせてたし。携帯のパスコードは絶対分からないはずだし見られることも無い。しばらくは彼氏のこと言い続けて精神的なダメージを与えてやろう。
「彼氏待ってるからもう行くね、朝ごはんいらない」
「ね、ねえその彼氏って?どんな人!?」
「行ってきまーす」
「唯ちゃーーーーん!!」
ガチャッ
気持ちいい。すごく気持ちいい朝だ。ハルに対する嫌がらせを考えることが楽しみになっている自分がいる。今日はなんとなくいいことがありそうだ。
--------------学校---------------
「おはよ~」
私は別にクラスで浮いている訳では無い、挨拶をしたら返事も返ってくる、男か美紅からしか返ってこないけど。
目立ちたくないしただ平凡に過ごしたいだけ。だけど、私のこの整いすぎた見た目で全てが崩れた。
「唯いる?」
「キャーッ!!」
私を探しに教室にきたのは黒崎るい。また目立ってしまう。
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