第31話盗賊
なんとか、無事に宿を見つけ一泊できた。
カナリヤと同室で、夜中まで話をした。
女同士で話し込むなんて、修学旅行みたいだったな。
そもそも、こんな風に話してくれる奴が昔は居なかったな。
幼い頃から後ろに強面の男が着いて歩いてれば、怖がって近寄っては来ない。
昔はそんな生活が普通だと思っていたが、こちらの生活も悪くない。
──むしろ、楽しいぐらいだ。
カナリヤは夜遅くまで起きていたこともあり、馬車の揺れに眠気を誘われて眠っている。
サラは、私の隣で編み物をしている。
この侍女はなんでも出来るな。
私は窓の外を見ながら、見たことの無い景色を楽しんでいた。
今馬車は町外れを走っている。
このまま行けば、夕方頃にはカルロの待つアルデガニ国に着くらしい。
「ん?」
外の景色の中に「チカッチカッ」と光るものが目に入った。
──なんだ?
その光がこちらに向かってきた。
そして気づいた。
──矢!?まずい!!!
「みんな伏せろ!!」
さすが元暗躍部隊のサラだ。こういうのも場面に慣れている。
すかさずカナリヤを護りに入った。
皆が伏せた瞬間に、矢が飛び込んできた。
カナリヤは、何が起きてるか分からない様子で震えている。
「エリオ!!」
「はい。南東の方から飛んできましたね。距離的に遠くないですね。もうすぐ来るんじゃないですか?」
「まったく、こんなとこで足止めくらうとは……。しょうがない、お客様をお出迎えするとするかね」
カナリヤはサラに任せて、剣を持ってエリオと一緒に外へ出た。
すると、何頭かの馬がこっちに走ってくるのが見えた。当然、人が乗っている。
「数はそんなに多くないね。二人で防げそうだね」
「楽勝ですよ」
エリオがピョンピョン跳ねながら言ってきた。
準備運動のつもりらしい。
「エリオ、殺すんじゃないよ。生け捕りで」
「えっ!ダメなんですか!?生け捕りって力加減が難しいんですよ」
はなから殺すつもりだったのかい。
盗賊ってのは、大概平民の成れの果てだ。
まだ更生がきくかもしれない。
可能性がある限り、その可能性の方にかける。
「さっ、客人の到着ですよ」
そこには15頭程の馬が男等を乗せて立っていて、一番前の男が降りてきた。
──こいつが頭か?
見た目は三十路程か?盗賊の頭にしては、まだ若い。
周りを見渡せば、周りの奴らもまだ若い。
中には十代に見える奴もいる。
「中々上等な服を纏ったお嬢様だな。その服汚したくなければ、金目の物すべて置いてきな」
「おや、そいつは困ったねぇ。これからちと、約束があるんだよ。こんなとこで油を売ってる暇はないんだけどね?」
「度胸の座ったお嬢様だ。悪いことは言わねぇ、さっさと置いてきな」
「断る……と言ったら?」
男の顔がピクっとする。
悪いね。そこら辺の令嬢とは違うんだよ。
「なるほど、お嬢様は早死がご要望らしい。……お前ら!!」
馬から数人降りてきた。
──なんだい?これっぱっかでやるのかい?
「もう一度聞く。荷物を置いていくか、ここで俺達に殺られるか、どっちにする?」
「そんなもん、決まってるだろ?」
そう言って剣を構える。
「そうかい……お前らやっちまえ!」
──やられのはどっちかねぇ?
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