第32話乱闘

「うぉおおおおお!!!」


男等が一斉にかかってきたが、半分はエリオが瞬殺した。


「エリオ!半分は私のだよ!」


「ちゃんと残しといたじゃないですか」


馬に残ってる奴らが、信じられないような顔で見ている。

それは、頭も一緒。


「さあ、ちゃっちゃとゴミ掃除するかね!」


残りの奴等が、意を決してかかってきた。


「遅い!!」


先にエリオを見たせいか、しり込みしているようだね。

動きが鈍い。

こんなんじゃ、勝てるわけが無い。

こいつら、あまり実戦やったことないんじゃないか?


「残り一人!!……あんただけだ」


頭と思われる男は一応剣を構えてるが、顔は真っ青。

今まで運良く上手くいっちまって、それに気分を良くしてちょっと上の貴族を狙ったら、このザマって感じかね?


「頭がそんなんでどうすんだい!!下の奴らに示しがつかないだろ!!頭は頭らしく、下っ端を護りな!!」


頭を任されてんなら、下の者を護るのは当然のこと。

それで命を落としたなら本望さ。


「なっなんなんだよ、お前ら!しかもお前、令嬢だろ!?」


「ああ、一応ね」


こいつ以外の男共は怪我人に駆け寄り、手当をし始めた。

しかし近くで見ると、やはりどいつもこいつも若い。

一番下の奴は、中高生程度か?

ガキに何させてやがる。


──訳ありか……?


「……やめたやめた!!お前なんか切ってもつまんないからね」


「なっ!?」


そう言いながら剣を仕舞うと、男がビックリした様子だったが、安堵の様子も見えた。


「あんたら、なんでこんなことしてんだい?今回は私らだったから良かったけど、他の奴だったら全員死んでたよ」


「……そんな事分かってる」


「分かってない!!あんたはこいつらの頭だろ!?全員の技量を把握してんのかい!?してないからこんな目にあってんだろ!?なに下っ端の奴らを危険な目に合わせてんだい!!あんたは頭失格だよ!」


私はこういう奴が大っ嫌いなんだ。仲間の技量を把握してないくせに、自分達の力を過信している。

そして返り討ちにあい、全滅する。

何人もいたよ、そんな奴らが。命を粗末にする奴が。


「ちょっと待ってください!」


「おや?」


一人の男が前に出てきた。


「ダンテは俺達にのせられてやっただけなんです!ダンテは悪くないんです!」


「おい!マウロ!」


「ふ~ん」


この男、ダンテと言うのか。


「普段はこんな危ないことしないんです!でも育ち盛りの奴が多くて、食料が底をつきそうで。護衛の少ない令嬢辺りを狙えばすぐ金を出すと思って……。ダンテは反対したんです!俺らはそんなに強くないから……。それでも、大丈夫だってダンテをけしかけたのは俺達なんです!だから、ダンテは悪くないんです!」


マウロとか言う奴が、懸命にダンテを護ろとする。


「いや!違う!全ては頭である俺の責任だ!こいつらは関係ない!罰するのは俺だけで勘弁してくれ!」


マウロの前に出て、地面に頭を付けて下の者を懸命に護ろうとするダンテ。


ふふ、そうかい。

決めた。お前らの処罰……。


「お前らの男意気見せてもらったよ。……何を言われても従う覚悟があるだね?」


「ああ」


「そうかい……なら、お前ら私のもとにつきな」


「「え?」」


「はぁぁ!?」


ダンテらの声に混じって、後ろからエリオの素っ頓狂な声が聞こえた。


「ちょ、何言ってんですか!?こいつらただのゴロツキですよ!?まだケツの青いガキもいるんですよ!?」


エリオが慌てて私に言うが、そんなもの100も承知だ。


「うるさいねぇ。いいんだよ、若者育成だ。頼むよ、先生」


ポンッとエリオの肩を叩く。


「俺が指導すんの--!?ちょ、冗談じゃないですよ!ミレーナ様!?ちょっと!!」


エリオが何か騒いでるが、無視無視。


──さて、どんな成長を見せるのか見物だね。

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