第30話いざ、出発
ついに、出発の日。
カルロが用意してくれた馬車で、アルデガニ国へと向かう。
予定では二日ほどで到着するらしい。
隣と言っているが、やはり距離があるんだなと実感する。
「レーナ、本当は行かせたくないんだ。カルロ様の直々の書簡が届いては、許さざるを得なかった。一体いつ知り合ったんだい?」
兄様対策にカルロに一筆書いてもらったら、効果てきめんだった。
すまん、兄様。
「入学の時、アレン様に紹介していただきました」
初めて知ったのはだけど。
中庭のことは口が裂けても兄様に言えないねぇ。
「そうか……仕方ない。気をつけて行ってくるんだよ。サラ、くれぐれもレーナが無茶をしないように見張っててくれ」
「承知しております」
私も、無茶はしたくないけど。
サラに頼むって事は、信用されてないな……。
※
「ミレーナ様、ドライフルーツいかがです?」
カナリヤを迎えに行き、ようやく出発出来た。
馬車の中では、カナリヤが家から持ってきたくれたドライフルーツを食べながら、外を見ながらのんびりと揺られている。
いいね、このゆったりとした感じ。
久しぶりだよ。
「あれ?カルロ様はご一緒じゃないんですか?」
「キャッ!」
エリオが馬車の上から中を覗いてきてたもんだから、カナリヤがビックリして悲鳴をあげた。
「こら!エリオ!そんなとこから顔を出すんじゃないよ!慣れていないお嬢様がいるんだ!」
「おっ!?すみません。ミレーナ様とサラだけかと思ってました」
「まったく……。カナリヤごめんよ驚かせて。こいつは私の影として着いてきてくれてるんだよ」
カナリヤは初対面だからね。ちゃんと言っとかないと、エリオが侵入者になってしまう。
「そうなんですね。すみません、私てっきり賊かと……」
「当たらずも遠からずかね?」
「やめて下さいよ!これでもエリートなんですよ俺!」
自分で「これでも」って言ってる時点でダメだと思うけどね。
「で、カルロだっけ?カルロは一足先に向かったよ」
カルロは昨日のうちに出発している。
なんでも、客人より先に行って、向こうで出迎えるのが礼儀らしい。
そんなの気にしないと言ったんだが、カルロ自身が気になるみたいだ。
「ミレーナ様、雲行きが怪しくなってきました。今日は早めに宿を決めた方がよろしいかと」
サラに言われて空を眺めると、確かにヤバそうだ。
降られる前に宿に入りたいねぇ。
「一番近場の宿に泊まろう。降られるよりはマシだよ」
「そうですね。では、一番近場の宿で手配します」
──自分たちで宿を決めるのも、旅の醍醐味だね。
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