第30話いざ、出発

ついに、出発の日。

カルロが用意してくれた馬車で、アルデガニ国へと向かう。

予定では二日ほどで到着するらしい。

隣と言っているが、やはり距離があるんだなと実感する。


「レーナ、本当は行かせたくないんだ。カルロ様の直々の書簡が届いては、許さざるを得なかった。一体いつ知り合ったんだい?」


兄様対策にカルロに一筆書いてもらったら、効果てきめんだった。

すまん、兄様。


「入学の時、アレン様に紹介していただきました」


初めてのはだけど。

中庭のことは口が裂けても兄様に言えないねぇ。


「そうか……仕方ない。気をつけて行ってくるんだよ。サラ、くれぐれもレーナが無茶をしないように見張っててくれ」


「承知しております」


私も、無茶はしたくないけど。

サラに頼むって事は、信用されてないな……。



「ミレーナ様、ドライフルーツいかがです?」


カナリヤを迎えに行き、ようやく出発出来た。

馬車の中では、カナリヤが家から持ってきたくれたドライフルーツを食べながら、外を見ながらのんびりと揺られている。

いいね、このゆったりとした感じ。

久しぶりだよ。


「あれ?カルロ様はご一緒じゃないんですか?」


「キャッ!」


エリオが馬車の上から中を覗いてきてたもんだから、カナリヤがビックリして悲鳴をあげた。


「こら!エリオ!そんなとこから顔を出すんじゃないよ!慣れていないお嬢様がいるんだ!」


「おっ!?すみません。ミレーナ様とサラだけかと思ってました」


「まったく……。カナリヤごめんよ驚かせて。こいつは私の影として着いてきてくれてるんだよ」


カナリヤは初対面だからね。ちゃんと言っとかないと、エリオが侵入者になってしまう。


「そうなんですね。すみません、私てっきり賊かと……」


「当たらずも遠からずかね?」


「やめて下さいよ!これでもエリートなんですよ俺!」


自分で「これでも」って言ってる時点でダメだと思うけどね。


「で、カルロだっけ?カルロは一足先に向かったよ」


カルロは昨日のうちに出発している。

なんでも、客人より先に行って、向こうで出迎えるのが礼儀らしい。

そんなの気にしないと言ったんだが、カルロ自身が気になるみたいだ。


「ミレーナ様、雲行きが怪しくなってきました。今日は早めに宿を決めた方がよろしいかと」


サラに言われて空を眺めると、確かにヤバそうだ。

降られる前に宿に入りたいねぇ。


「一番近場の宿に泊まろう。降られるよりはマシだよ」


「そうですね。では、一番近場の宿で手配します」


──自分たちで宿を決めるのも、旅の醍醐味だね。

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