第21話襲撃

学園が休みの昼下がり。

兄様は王宮に父様の手伝いに出かけた。

屋敷には私とソニア……使用人達もいるけどな。

エリオは相変わらず、情報収集に勤しんでいるが、有力な情報は入ってこない。


コンコン


「ミレーナ様、急ぎの書簡が届いております」


「ありがとう……兄様からね」


至急、王宮に来て欲しい?

訳が書かれていない。兄様はいつもなぜ来て欲しいか、訳を書いてくるはず。


──罠か?


しかし、兄様の字に間違いない。

どういうことだ?まさか、グル?そんなはずはない、あの溺愛ぶりは変わりない。

……考えても仕方ない。行くだけ行ってみるか。

罠なら嵌ってやるだけさ。


「兄様が王宮に来て欲しいみたい。馬車の用意をお願い」


「かしこまりました」



「この森はいつ通っても不気味ですね」


サラと一緒に馬車に乗り、王宮に向かうところだ。

途中、森を通らなければ王宮にはつかない。

この森は、あまり日の当たりが良くないから、いつも薄暗い。

急いで通りすぎようと、御者が馬車を走らせている。


パンッ!!


銃声と共に馬車が急に止まった。


「ミレーナ様!!大丈夫ですか!?」


「ええ。外を見てくるわ」


「いけません!危険です!」


サラの言葉を無視して、馬車の扉を開く。

従者は頭を撃ち抜かれて、その場に倒れていた。

剣を持ってきて正解だったよ。

でも、この服装じゃ動きにくいね。


ビリビリビリビリ


スカートを膝上まで割き、破り捨てた。

よし、足が出て動きやすくなった。

さてさて、どこから登場するんだい?


パンッ!!


銃弾が顔を掠めたが、そんなもの気にしない。


──あっちか!!


木の上で、銃を持った奴を見つけた。

その木の付近まで近づき剣を男目掛けてなげると、剣が男の額に命中。男は木から落ちた。

男の持っていた銃を見てみると、銃弾がまだ入ってる。

これはまだ使える。イイもん拾ったよ。

ふふっ。懐かしい握り具合だ。また使う日が来るとはね。


パンパンパンッ!!


まだいたか!!

んっ!!?


ガチンッ!!


銃声に、気を取られてきた所で男が後ろから斬りかかってきた。


「……派手な歓迎ありがとね」


「はん、令嬢の癖になかなかの腕前だ。普通はビビるんだがな?」


「場数踏んでるからね、慣れっこだよ」


「おかしな令嬢様だ!」


カキン!ガチンッ!!


「終いだ!!」


ガッチーン!!!


男の剣を打ち落とした。


「さて、あんたらの親分を聞こうか?」


パンパンッ!!


男の首に剣を突きつけると、背後から銃声が再び鳴り響き、足を掠めた。

忘れてた!もう一人いたんだった!


パンパン!!


「うるさいね!!当たらない弾を撃つんじゃない!!撃つんならちゃんと撃て!!こうやって……!」


パンッ!!


木の上にいた奴を一発で仕留めた。

懐かしい感触。よかった、腕は訛ってなかったか。


「お前、本当に令嬢か!?」


「ああ、残念なことにな……さて、続きを聞こうか?」


再び剣を構え、男の元に近づこうとしたが……


「ミレーナ様!!」


ガチン!!


横から新たな男が現れたが、咄嗟の出来事に反応に遅れた。

そこにサラが二つの小刀を手にして、男の剣を受け止めてくれた。


「大丈夫ですか!?」


「サラ、あなた、剣が使えるの!?」


サラが男を蹴り飛ばし、私の元へやって来た。

まさか、護ろうとしていた人に護られた。


「黙っていてすみません。実は私、暗躍部隊出身なんです」


「えっ!?」


これは、驚いた。

どうりでエリオが出てこない訳だ。

エリオは知っていたな。


「ミレーナ様、今はその話は一旦置いときましょう」


「そうだね」


なんか、森の奥からぞろぞろ出てきたねぇ。

そして、一番前にいるのが今回の黒幕かい?

その正体は……。



ああ。そうか、お前が黒幕。



──ソニア、やはりお前か。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る