第20話犯人

「ミレーナ様、戻りました」


「エリオ、早かったわね。それで、どうだった?」


屋敷に戻って、エリオの帰りを待っていた。


「どうやらミレーナ様を襲った賊は、最近この辺りにやって来たゴロツキの一人みたいです」


「そう。じゃあ、そいつを殺ったのは?そのゴロツキの仲間?」


「それが、分からないんです。ゴロツキ程度の人間が、銃を持ってるわけが無いんですよ」


銃は値が張る。ましてや銃弾を補充しなければ役に立たない。その銃弾も中々の値だ。

銃を持ってるのは身分が高い者か、そういうのを生業にしている者の二手に別れる。

たかがゴロツキが持てるような代物では無い。


「失礼ですが、ミレーナ様。誰かに恨まれるようなことは?」


「自慢ではないけど、人に恨まれるような事はしてないわね」


一人思い浮かぶけれど、あの娘にそんな度胸はない。

そう。原作でミレーナの取り巻きをやっていた、マリアだ。

裏庭の事件から睨まれてはいるが、あの娘は人を殺めたりは出来ないはず。

取り巻きの時はミレーナを凄く信頼していたし、尊敬していた。

マリア曰く、凛とした態度が格好良いらしい。


──人を虐めるのはかっこ悪いんだがね。


「そうですか……」


「何かあるの?」


何やら切れの悪い返事だ。


「いや、ちょっと気になることがありまして……」


「なに?」


「ミレーナ様のお兄様、ロベルト様の婚約者様なんですが、最近ある場所に出入りしているんです」


兄様の婚約者と言えば、ソニアか。


「どこに出入りしてるの?」


「ある劇場です」


「劇場?普通じゃない」


「いえ表向きは劇場ですが、裏では暗殺業を担ってます」


「なに!?」


はぁ、やられたねぇ。

もっと早く気づけたはずだ。

いや、もしかして気づかないフリをしていのか?

兄様の幸せを願っていた。心の底から。

そんな思いもあってか、自分でも気付かぬうちに、気づかないフリをしていたのかもな。

甘くなったね、私も。

昔ならこんなヘマは絶対しない。

新入りの奴は、皆疑って過ごしていた。

時間をかけて、信頼関係を築いていったんだ。


──そんな事も忘れてたのか。


「まだ黒か白か判断が付きません。しかし、用心するに越したことはありません」


「わかったわ」


過ぎたことを考えても仕方ない。

これからの事を考えるんだ。

しかし、わからない。

ソニアが犯人なら、私を殺ろうと思えばいつでも殺れたはず。


──何がしたい、何が目的なんだ?

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