第13話騎士団演習場にて

動きやすい格好に着替え、サラと一緒に演習場まで来た。

この演習場は、王宮の一角にあるのだ。


──さて、どこに行けばいいのやら。


「セルヴィロ嬢!!」


「オルランディ様」


キョロキョロ辺りを見回していると、ジルベルトが走ってきた。


「わざわざ、すまなかったな」


「いいえ、お誘いただきありがとうございます」


「急で悪いとは思ったが、どうしても手合わせしてみたくてな」


本当に急だったな。

まぁ、来てしまったからには、とことんやろうじゃないか。


「いえ、私もオルランディ様とは、手合わせしてみたかったので楽しみです」


「私の事はジルベルトと呼んでくれ。ミレーナと呼んでも?」


「ええ。ジルベルト様」


「では、行こう。あちらだ」


ジルベルトの後をついて行くと、剣の当たる音が響く。


「今ちょうど、騎士達が剣の練習をしている所だ」


ほぉ。生で見ると迫力が違うなぁ。

ん?あの前で指揮してるのは……。


「ミレーナ様!団長様です!」


サラが小声で興奮しながら伝えてきた。


──やっぱり貫禄が違う。


「素敵です!まさかこんな間近で拝見できるなんて……!」


サラはもうほっておこう。


「セルヴィロ嬢、真剣では危険だ。これを使おう」


「うわっ!」


ポイッと投げ渡されたのは木製の剣。

なるほど、木刀のようだ。

これなら馴染みやすい。


「では!参る!」


「ええ。どこからでも」


ジルベルトが構える。

そして、勢いをつけて向かってくる。


ガツンッ!!

ガン!


「やはり、なかなかやるな」


「いえいえ、ジルベルト様が本気を出していないだけです」


やるなら本気で来い!

手を抜かれるのが一番嫌いなんだ!


「ふっ、令嬢にしとくのは勿体ないな」


言いたいことが伝わったのか、動きが変わった。


「はっ!!」


ガツンッ!!


「ほう?これを受け止めるか……」


やばかったな。


「次は私から行かせてもらいますよ?」


ガツッ!!


「こちらですよ」


「なにっ!?」


一振目はジルベルトの背後に回る為のフェイク。


ガツンッ!!!


「あら?残念……」


さすがジルベルト。防いだか。


「結構、焦ったぞ」


「ふふっ、まだ行きますよ?」


「こい!!」


しばらくジルベルトとの打ち合いが続いたが、決着はつかなかった。


「あはははは!思った以上のご令嬢だな!」


「……父上!!」


ジルベルトと一緒に地べたに座り込んでいたら、団長に声をかけられた。


「団長様!!この様な格好で申し訳ありません!」


「構わん構わん!!しかし、驚いた。セルヴィロ嬢の剣の腕前は騎士並だと聞いていたが、それ以上の素質がある」


「そんな事はありません」


「いや、木製の剣だがそれなりの重さはある。それを容易く扱えるとは、なかなかだ」


すまん。木刀は使い慣れているんだ。

剣よりこちらの方が使いやすいぐらいだ。


「セルヴィロ嬢、よければうちの息子の嫁に来ないか?」


「父上!?」


勘弁してくれ!!

ジルベルトはカナリヤに恋心を抱くんだ。

そして、儚くも砕け散る。

その失恋を糧に、騎士の頂上を目指す。

努力の末、団長まで上り詰め王妃となったカナリヤを守ってくのだ。


「大変嬉しいお言葉ですが、ジルベルト様には私よりも相応しい方がいられると思います」


「そうか?残念だ。娘に欲しかったんだがな。まぁ、これからもジルベルトと仲良くしてくれ!」


「はい。こちらこそ」


──ああ、焦った。

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