第14話その後
「父上が変な事言って、すまなかったな」
「いえ、ジルベルト様も私のように剣を振るう令嬢ではなく、おしとやかなご令嬢の方が好みでしょう」
カナリヤは令嬢の鏡と言わる程、仕草が美しく可憐だ。
ジルベルトは、自分には持っていないか弱な所に惚れ、自分がカナリヤを守っていくと勝手に決めつけていた。
「そんな事ない!俺は、ミレーナは素晴らしい女性だと思ってる!」
「ふふっ。ありがとうございます」
ジルベルトの慌てた姿に、思わず笑ってしまった。
「……ミレーナはその様な顔で笑うのだな」
「えっ?」
「いや、なんでもない……」
──変な奴だ。
「さて、そろそろ帰ります。サラが退屈しているはずですから」
そのサラはどこだ?
周りを見回して見るが、見当たらない。
主人を置いてどこ行ったんだ?
「おい。あれ、お前の侍女じゃないか?」
「ん?」
ジルベルトが指さす方を見ると、サラが騎士と何やら楽しく会話している。
主人を置いて雑談とはいい度胸だ。
「……あれです。サラです」
「折角だ、もうしばらく居ればいい」
「そうさせていただきます……」
サラの奴、帰ったら覚えとけよ!
「汗をかいただろ?シャワー室を使えばいい」
「いえいえ!そんな長居はしませんので、大丈夫です!」
「しかしな……」
言葉を詰まらせこちらを見るから、何かと思い自分の姿を見る。
「なっ!!」
汗をかいたせいで、服がベッタリ体に密着して体のラインが丸わかりだ。
これでは外を歩けない!
「さすがに、そのままだとまずいだろう?」
「……シャワーお借りします」
「そうしてくれ、服は用意させる」
「重ね重ね、申し訳ありません」
※
シャワーと服を借り、ジルベルトの元へ。
ここは、王宮の一室。
王宮に来た際、ジルベルトが使っている部屋らしい。
さすが、団長の息子となると部屋も用意してくれるのか。
「シャワーありがとうございます。服までお借りしてしまって」
「いやいい、男物で申し訳ないな。女物がなくてな、私が着れなくなった服なんだが、やはり少しデカイな」
「これぐらい大丈夫ですよ」
ジルベルトの服だったか。
確かにデカいが十分動ける。
「自分の服を令嬢が着ているとは、不思議な気持ちだな」
「男物を着る令嬢なんて、私ぐらいだと思いますよ?」
「あはははは!そうだな!」
コンコン
「誰だ?」
「私だ。アレッシオだ」
「殿下!?」
ジルベルトが急いで扉を開ける。
そこには仁王立ちした、殿下が立っていた。
何やら機嫌が悪そうだ。
──また面倒事がやって来たか。
「ここにセルヴィロ嬢がいると聞いたんだが?」
「ご機嫌よう、殿下。この様な格好で申し訳ありません」
殿下は男物を着ている私を怪訝の目で見てくる。
「なぜ、そのような格好をしている?」
「先程までジルベルト様と手合わせしていて、汗をかいたのでシャワーと服をお借りしたのです」
「なに!?私に言えば服など、いくらでも用意させたものを」
「いえいえ、ジルベルト様のお古で十分です」
「……それはジルベルトの物なのか?」
「そうですが?」
何が言いたい?
言いたいことがあるなら、はっきり言え!
「それで、殿下はミレーナに何用で?」
「用がなければ来てはいけぬか?」
「いえ……」
何やら変な空気だが?
これは、退散した方がよさそうだ。
「私はそろそろお暇しようと思っておりましたので、ジルベルト様にご用ならば、ごゆっくり」
「セルヴィロ嬢はいつからジルベルトの名を口にするほどの仲になったのだ?」
「えっ?本日からですが?」
「では、私の事もアレンと呼んでくれ」
「いえ!それはムリです!」
「なぜだ?ジルベルトがよくて、なぜ私がいけない?」
それは、あんたが王族だからだよ!
「殿下、無理強いはいけません」
「ジルベルトは黙っててくれ!これは、私とセルヴィロ嬢の事なんだ」
「……わかりました」
呼び名ごときで怒鳴るのか!?
「……殿下、たかが呼び名ごときで人を怒鳴るのは如何なものと思いますよ?そもそも、殿下はこの国の次期王です。そのような方を愛称で呼べません」
「私がいいと言っている。呼べぬなら、呼ぶまで帰さぬ」
これは意地になってるな。
全く、これだから子供はめんどくさい。
「わかりました、アレン様。これで妥協してください」
「……仕方ない。私もミレーナと、呼ぶが構わないか?」
「ええ、お好きに呼んでください」
「ありがとう。ミレーナ」
──早く帰してくれ。
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