第10話園遊会にて
兄様と一緒に会場に入る。
会場と言っても、学園の中庭での立食パーティーだ。
「ロベルト!!隣の令嬢は誰だ!?」
「妹!?紹介してくれ!!」
「はぁ?なんで君達にレーナを紹介しなきゃいけないんだ?」
兄様の周りにクラスメイトだろう、人が集まり兄様に色々問いかけている。
──めんどうだから離れていよう。
「おっと!」
離れようと、振り向いたら人に当たってしまった。
「すみません!大丈夫ですか!?」
「いや、大丈夫だ。こちらこそすまない。余所見をしていた」
「何事もなく、良かったです。では、すみません。失礼させていただきます」
「ちょっと待て!」
足早にその場を後にしようとしたら、捕まった。
「……なにか?」
「すまない。名前を聞いてもよろしいか?」
あぁ、そうか。
「名乗り遅れて申し訳ありません。私、セルヴィロ家長女ミレーナ・セルヴィロと申します」
「なるほど、セルヴィロ宰相の……」
さすが父様、顔が広い。
「私はジルベルト・オルランディだ。騎士団長を父に持っている」
こいつがジルベルト……。
学年が違うから、会うことないと思ってたんだがな。
「セルヴィロ嬢の噂はかねがね聞いている。もしよかったら、今度一度手合わせ願いたい」
あまり絡みたくないが、その申し出は嬉しい。
団長を父に持っている為か、ジルベルトもそれなりの腕前だからな。
私の剣が、どこまで通用するか試してみたい。
──いかんな、昔の血が騒ぐ。
「ええ、是非ともお願いします」
「そうか。では、また連絡しよう」
「お待ちしております」
それだけ伝えたかったのだろう、ジルベルトはその場を後にした。
「ミレーナ様!!」
「カナリヤ」
カナリヤが走ってこちらへ向かってくる。
あんな格好でよく走れるな。
「なかなか来ないから、探したんですよ!?」
「ごめんなさい。ちょっと人と話をしていたので」
「あっ、もしかして邪魔しちゃいました?」
「大丈夫です。もう済んだので」
「良かった。ミレーナ様飲み物はいただきました?」
「いえ、まだです」
「じゃもらってきますね!」
「あっ……」
自分で行くからいいと言おうとしたのに、また走って行ってしまった。
「お嬢さん、お話しよろしいですか?」
「……殿下、周りくどい言い方やめてください」
「あはははは、すまん」
「どうしたんですか?他のご令嬢達と、お話は終わったのですか?」
先程見た殿下は令嬢達に囲まれていた。
今のうちに名を売ろうと、みんな必死だ。
「お前も令嬢だが?」
「私はいいんですよ。殿下に名を売るほどでもないですし」
「名など売らずとも、既に見知った仲だからな」
やめてくれ。見知った仲から外してくれ。
「私より、美しいご令嬢ばかりですよ?婚約者探すには売ってつけじゃないですか」
「お前は、ほんとに……」
「あっ!殿下!何レーナに近づいてるんですか!!」
あぁ、兄様に見つかった。めんどくさくなるぞ。
「いいじゃないか、お前のものじゃない」
「私の妹です!!私の許可を取って下さい!」
「なぜお前の許可がいる?私は婚約者候補なんだぞ?」
「たかが候補でしょ!?そもそも、候補なんて許してません!」
「大体、お前はな……」
ギャーギャー!!
──あぁ、喧嘩は他所でやっておくれ!
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