第9話園遊会当日
学園に入ってから一ヶ月が経ち、今日は園遊会当日
「凄い!レーナ!この世で一番美しいよ!」
「兄様、買いかぶりすぎです」
侍女の仕立ててくれたドレスは、ベアトップやスカートのリボンフレアに重ねられた黒のチュールが特徴の深紅のドレス。
見るからに悪役令嬢っぽいもの。
「ミレーナ様は大人びた方ですので、ここはグッと大人らしさを出してみました!」
侍女が鼻息荒く言ってはいるが、出来れば緑とか周りの色に溶け込むものが良かった。
「これでうちのミレーナ様が、一番注目を浴びること間違いなしです!」
侍女達皆で拍手喝采。
「本当に美しいよ、レーナ。地上に舞い降りた女神のようだ」
いや、断罪される悪役令嬢だが?
「では、女神様。参りましょう」
「……はい」
──行きたくない。
※
ザワザワ
「レーナご覧。みんなお前の姿を見ているよ」
「そんなことありませんよ」
会場に到着し、馬車から降りるや否や視線の嵐だった。
そりゃこんな悪役令嬢みたいな格好、他の人はしないからな。
「ミレーナ様!!」
「カナリヤ」
「すっごい素敵です!遠くからでもすぐわかりました!」
それは遠くからでも悪目だちしているってことだな。
「カナリヤも素敵ですよ」
「ミレーナ様には全然敵いません」
カナリヤはヒロインらしく、淡い水色の可愛らしいドレスだった。
「レーナ、僕はちょっと受付してくるからここにいて。動いちゃダメだよ!」
「はい、お願いします」
さて、早いとこ隅に寄って空気と化すか。
「セルヴィロ嬢!?」
……遅かったか。
「殿下。ご機嫌よう」
とりあえず、挨拶と一礼を済ます。
「驚いた。とても美しい……」
「ありがとうございます。お世辞でも嬉しいです」
「世辞ではない!普段も美しいが、今日は格別美しい」
「私などより、カナリヤの方が可愛らしいくて素敵ですよ」
「ほう。フォンターナ嬢可愛らしくなったな」
「……ありがとうございます」
カナリヤを殿下の前に出すと、殿下がカナリヤに声をかけた。
殿下の言葉に顔が赤くなるとは、本当に可愛らしい。
「それで、こんな所で何をしている?」
「兄様が受付をしに行っているので、ここで兄様を待っています」
「ロベルトか……あいつが来るとめんどくさい。セルヴィロ嬢とフォンターナ嬢、私と一緒に会場の中へ行かないか?」
「私は兄様を待っていないと後でうるさいので、ここにおります。カナリヤだけお連れしてください」
「えっ!?それなら私も一緒にお待ちします!」
「大丈夫ですよ。すぐ来ると思うので、殿下と先に言っててください」
「そうですか……?じゃ先に行ってますね」
「はい」
殿下とカナリヤの後ろ姿を見送り、一息つく。
──疲れた。
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