警察署の帰り道

警察署を出た私は、車に乗り、走り始めた。


しばらくすると、待っていましたとばかりに、涙がこぼれ始めた。

あまりにも涙が出るので、運転にも支障が出る状態であったので、

仕方なく、近くの路肩に車を停め、気持ちを落ち着ける事に集中した。


ふと、周りを見れば、この通りをもう少し行けば、叔母の家がある事を

思い出し、結果報告をする事も考え、叔母の家に行こうと車を走らせた、


感覚的に、叔母の家までは、車で行き慣れた道だし、普通なら10分も

あれば着くとイメージできたので、とにかく話を聞いてほしかったのか、

顔が見たかったのかわからないけれど、叔母のところに車を走らせた。


しかし、不思議な事に、慣れた道で、普通に走っているにも関わらず

少しづつ道がそれていき、10分で着くはずが、30分走っても、全く

別のところに向かっている。


同じ道を少しづつ離れながら、グルグル走っているのだ


1時間した頃、たどり着いたのは、港の岸壁あたりだった。

嘘みたいな話だが、本当に気が付けば、そこに居たという事なのだ。

行き止まりの、その大きな壁を見た時、正直、自分が怖くなった。

もしかして、死のうとしている?まさか、自分が家族を残して?

それはない!絶対にない!そう思うけれど、やはり、この場所にたどり着

いた時点で、何かがおかしいのだけは、わかった。


ダメだと思ったので、一度、車を停め、妻にLINEをした。


  娘の居場所がわかったこと

  それが、私が脅された場所の近くであること

  ホテヘルで働いていること

  金銭トラブルで家出したと主張していること


当然、アスペさんだから、まともな答えがくるとも思っていないが

伝えなければいけない事だったし、誰にも言えない事だったし、今の自分を

冷静に戻すのも必要だったので、妻にLINEを送ったのだ。


  だから言ったでしょ

  あの子は嘘ばっかりなんだし、無理よ

  もう帰ってこないんだし、帰ってくるときは死体なんだから

  諦めて帰りなさい

  ああ気色悪い


当然のように、こうなってくると、自分が頑張らなければいけないんだ!と

強く自覚できるメリットが妻との会話では、私に力をくれる効果があるのだ。


私は、よし!と決めて、叔母の家に向かった。

そこからは、叔母のところに、たどり着くのは、やはり早かっはずだったが、

叔母の家の周囲も再開発的に大きく変わっており、見える景色が記憶と大きく

違い、少し迷ったりもしたが、なんとかたどり着いた。


叔母は私を見るなり、涙を浮かべてはいたが、必死にこらえているようだった。


  あの子は大丈夫!!絶対に帰ってくるから!!

  今は反抗期になっているけれど、ちゃんとわかっているから!!

  ずっと見てきたけれど、あなたは、ちゃんと子育てしてきたし、

  間違った事はしてきていない!もっと自信を持ちなさい!!


と励ましてはくれるが、それは、普通の人が相手ならね・・・

アスペさんの暴走が始まったら、妻の時に経験しているけれど、

そう簡単にはいかないよ・・・と思いつつも、やはり、叔母といる時間は

私にとっては、安息の地であって、充電できるのも事実で、少しづつ冷静に

なっていくのが、私にはわかった。


  ごはん食べる?何か作ろうか?


そう言われても、全く食欲がない。

そういえば。昨日の昼以降、何も食べないまま、24時間以上過ぎているけど

全く食欲はないなぁ・・・


  ちょっとだけでも上の部屋で寝てくる?


確かに最後に寝たのは、昨日の朝までだったから、今が15時なので、

2日近く寝てないなぁ・・・けど、眠くないんだよ。


そこから、2時間くらい昔話をしつつ、私は自分に充電をしていった。


話し始めると長くなっていくので、帰ると決めて、私はそこを出た。


帰り道、頭の中は、ぐるぐる回ってはいるが、子供達三人の事だけを考えていた。


これから先、どうなっていくのだろう。

自分にいったい何ができるのだろう。

自分の子育て、家族作り、全てが間違っていたのだろうか?

間違っていたなら、どう直せばいいのだろうか?


正直、答えが見つからない。

こうなってしまった以上、後戻りもできない。

今までは、子育てや子供への思いは、誰にも負けない自負はあったけれど、

こうなってくると失敗した何もかも親だから、ダメ親なんだ。


だったらどうする。

何度も、自問自答していても、全く糸口が見えてこない。


もし、私が本当に毒親で、独裁者で、子供達を苦しめる原因だったのなら

私さえいなければ、この家族はうまくいくのだろうか・・・

もし、私が今すぐ、家を出て、別居するか離婚をすれば、長女は戻ってきて

くれるのかもしれない。とさえ、この時は、本気で、何度も思った。

 



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る