真実のヒント

妻から電話で、


 もう朝になるし、私、今日も仕事だから、車で送ってくれないと

 バイクにも乗れないから、仕事に行けないんですけど・・・

 お弁当は最悪は要らないけれど、どうする気なの?


妻は、確かに、手術開けだから、私が、車で送迎しなくては、仕事には

行けないという言い分はわかる。けれど、今、この瞬間、娘の安否が

わからない中で、仕事優先なの?


そう思いながらも、そこを掘り下げてしまうと、今度は、妻が発作を起こし

パニックになっていく事もわかっているので、私が爆発し、妻を追求する事

はできないのだから、アスペだからと諦め、私は自宅に戻るしかなかった。


車を走らせ自宅に戻り、妻には、朝、送るつもりだけど、とにかくヒントが

欲しいと、私は、長女の部屋にこもり、必死で何かないか、と探しまわった。


ようやく、数枚の明細が出てきた。

それを見た時、私は、愕然とした。


それは、婦人科の診療明細と、処方された薬の明細であった。


  診断明細は・・・クラミジア陽性・淋病陰性・トリコモナス陰性・溶連菌陽性

  処方は・・・低用量ピル・アジスロマイシン


愕然とするしかなかった。


20歳を超えているから、性行為もあってもおかしくない。


けれど、娘の場合は、小学校の頃にあった事件のせいで、確実に男性恐怖症が

あるはず、そういう時がきたら、フラッシュバックを起こし、発作に繋がって

いくかも・・と医師にも言われていたので、まさか・・・という思いしか、こ

の時点でなかったから、まさか、レイプされたのか・・・と考えてしまった。


そうか、あの時、生理痛だと言っていたが、夜中に、トイレの前で、意識を失い

倒れていた頃が、その時期だったから、そうか、あの時期に、事件に巻き込まれ

ていて、それを言えず、悩んで悩んで、家出に繋がったのか・・・と、私は勝手

に解釈していた。


ならば、やはり、私が助け出すしかないんだ!!

そう思って、さらなるヒントを探していた時、妻が、フラりとやってきて

その明細を見た瞬間、妻は、怒りを露わに出し始めた


  ちょっと待って、これって、性病ってことでしょ

  という事は、そういう病気を持った人が入ったお風呂に私達は入っていたの?

  そういう人の洗濯物と一緒に洗われていたの?

  ふざけんな!最悪だ!吐きそうになってきた!!

  もう、あの子が気色悪くて仕方ない!

  戻ってきても受け入れられない!

  戻ってきて欲しいなら、あなたが別の場所で、二人でやり直せばいい!

  次女・三女を巻き込まないで欲しい!


確かに言わんとする事はわからなくもない。

けれど、さすがのアスペさんも、そういう風に考えてはダメでしょ

風呂や洗濯で、うつるわけでもないのだから、娘をバイ菌扱いしないでくれ!!

そう思いながら、妻を諭し、必死で、妻の爆発を抑えた

妻は、泣きながら、娘が気色悪いと、延々と言い続けてはいたが、私は、そうは

思っていないので、なんとか、なんとか、と、必死でなだめ、妻を落ち着かせた。


妻を部屋から押し出し、また、私は探し始めた


私は探しながら思ったのは、もし、計画的な家出なら、もっと、方法があっただ

ろうし、こういう証拠や、ヒントを処分するだろうし、家出だったとしたら、

本当に自分勝手なアスペ特有のパターンで思い込み、苦しみ、悩んだ結果なのだろう

と考えていけば、やはり、そういう娘が、不憫で仕方なかったし、それに気づけな

かった自分の不甲斐なさにあきれるばかりだった


そこから必死で探す中、数ページしか書いていない日記が数冊、ちょこちょこ

書かれたメモ、心当たりのないココカラファインにある宅配ボックスで受け取ったAmazonの箱、そういったヒントが、少しづつ見つかり始めた。


出てくるヒントを見て行けば、正直、父親としては、死にたくなったし、娘を探し出し、一緒に死のうとさえ思った。


確かに、アスペルガーだから、誰にも理解されないと、勝手に思い込む傾向がある

確かに、娘の場合は、陰陽でいけば、陰の傾向があるし、ほっておくと引きこもりに

なるタイプだし、親友とよべる友達が出来そうになっても、たった1つのつまらない

キッカケが出てしまえば、そこで終わりみたいな感じだから、生きてることが辛くなるのもわからなくもない部分もある。


けれど、私は、今まで、いったい、どんな妄想をしていたのだろうか。

娘の姿をどう見ていたのだろうか。


勝手な思い込みで、男性恐怖症が続いていると思い込み、

娘が、お父さんお父さんと、買い物などにも一緒についてくる姿があったから

つい、その時の笑顔や、話している姿だけをいいように記憶してしまっていた

のだろう、明らかに、私には、お父さん大好きアピールの下での娘の姿しか見えて

いなかったし、1度たりとも、お父さん大嫌い!!という姿は見た記憶も、言われた

記憶もなかったから、当然のように、娘を信じきってしまっていたのだ。


そういう私の馬鹿さ加減に、自分で自分が情けなく、愕然とした。


その後、私は、いくつかのヒントを見つけだし(探した方法は諸事情があるので

そこだけは書けないが)、ようやく、一連のストーリーがわかってきた。

  


  

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