祈り
自宅に帰り、手紙を読み、長女の部屋に入り、もっとヒントがないか探したいと
思ったけれど、いざ、部屋に入ると
これが、20歳の娘の部屋か・・・
これで人が来たら、確実に引くよ・・・
テレビなどでよく見る汚部屋・・・
足の踏み場もないし、歩けば何かが刺さる・・・
服は散乱しているし、物は決まった場所にない・・・
明らかに人が暮らせる場所じゃない・・・と私の感覚が悲鳴をあげている
長女の場合、片付けるという事が苦手で、高校生までは、あまりに酷い場合、
私が一緒について周り、一緒に片付けたりして、なんとか、最低限のスペースを
確保する事をしてきたが、一人部屋の大学生に、そこまで手を貸す事は、どうな
のかなぁ?と思っていたので、様子は見ているものの、正直、汚部屋である事実
は、以前からわかっていたし、三女の報告でも、
あの部屋に長く居たら、かゆくなる・・・
どこに何があるかよくわからないけれど、お姉ちゃんにだけはわかるみたい・・・
という報告を聞いていたので、入らなくても想像のつく状況であったので、
時折、部屋を片付けることを口にしていたが、娘にしてみれば、それがウザイ!と
とられていたのだろうし、実際、確実に、週に1~2度は言ってたわけだし、
正直、アスペさんのパターンだと、自分ではどこに何があるか把握できていて、
荒れている部屋だけど自分のテリトリーなのだから、立ち入る、口出すは、嫌がる
のはわかっているし、散らかすのも、マーキングしているようなものだから、と
思ったりもするが、あまりにも酷いのも実状。
妻はと言えば、一人部屋にする際に、約束をしたという事を根に持っているので
あの状況を見る度、約束を破っているのだから、罰として、部屋を取り上げろ!
と、陰では、いつも言っていたのだが、私が、長女だし、成長もしているし、と、
必死で、ごまかし、妻をシブシブ納得させ、黙らせて、維持してきたのが事実。
けれど、こうなってくると、それが間違いだったのだろうか・・・とも思った。
実際に、必死で、ヒントを探そうにも、まずは、足の踏み場の確保が必須で、
1コーナー1コーナー、整理しながら探すとなれば、この溢れている物を見る限り、
かなりの時間がかかることも想像できる。まずは、ごみを集めて捨てるから始める
しかなかったので、仕分けをしつつ、ゴミを外に出す事を最初のステップとして
部屋の捜索を始めた。
気が付けば、45Lのゴミ袋が、5つ出来ていた。
生ごみは無いものの、意味の分からない切れ端や、使いようが無い壊れた物など
明らかにゴミにしか見えないものを集めているの?と思わせるほど、出てくる。
あまりにも、わけがわからないし、我が娘ながら、20歳の大学生の部屋ではない
よね、この部屋みたら、確実に、誰もが引くよね・・・と思っていた。
我が家は、四代続く、宗教を信仰している家族なので、当然のように、こういう時
こそ、本気で祈り、乗り越えるんだ!、今しなくていつするんだ!と、片付けながら
私は思ったので、最初の30分程度は、確かに、そういう気持ちにならなかったの
と、私自身がパニックになっていたこともあって、長女の部屋を探してはいたけれ
ど、あの部屋にいるだけで、正直、息ができなくなる感覚を覚えたので、余計に、祈
ろうと思ったのかもしれない。
私は仏壇の前に座り、ただ、もくもくと祈り始めた。
後から聞けば、その姿を見た三女が、
お父さんが呪いをかけている、なんか怖い・・・
と言ってた程、おそらく、集中していたのかもしれないが、ただひたすら祈った。
最初は、なぜ?なぜ?なぜ?というだけのグルグルした祈りであったし、集中も
出来ていなかったが、祈っていく中で、ただ、娘の無事だけを祈っていった。
どこに居てもいい、けれど、生きていて欲しい
痛い事、辛い事、嫌な事、これ以上の苦痛を娘に与えないで欲しい
たった一人でいいから、娘を守る、正しい道に導く、そういう人に出会ってほしい
今すぐ、顔が見たい、アスペルガーだから嫌がるけれど、抱きしめたい
無理矢理にでも連れて帰って、しっかり話し合い、家族で1からやり直したい
とにかく、必死で祈ったのだ。
祈り続けていく中、
深夜1時過ぎた頃、私の携帯が鳴った。
かけてきたのは、刑事さんだった。
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