第2話『純粋無垢なバイト仲間』
18時30分。
時刻は休憩時間に差し掛かった。
「時間なんで休憩入りまーす」
客足は薄く、スムーズに休憩に入ることができた。
ロッカーからスマホを取り、SNSをチェック。そのまま休憩室中央にある机まで移動。
はぁ、休憩後忙しくなるんだろうなぁ
今日のエイラムちゃんの配信時間通知はーっと……まだかぁ。
帽子で潰れてしまった髪型を左手でふっさふさと直す。
椅子の背もたれに体重を預け、俯きながらスマホを操作していると、扉の開閉音が聞こえた。
「お疲れーっす。先輩、今休憩時間すか?」
「そうだけど、あれ、
「そーだったんすけどー」
「どうしたよ」
「せーんぱーい! 聞いてくださいよー。私っていつもだとあがりじゃないですかー。でもでも、副店長が勤務時間延長する代わりに、今から休憩入ってほしいって言われてー」
「それは災難だな。もう一回言っておく、災難だな」
「ホントっすよー。ん? どういうことっすか?」
「いや、ほら、これからホットタイムだから」
「あ!」
実質的には同学年だが、仕事的には俺が二年目、恵美理が一カ月目というだけだ。
「まあドンマイ」
「はぁ、まーあ? お金出るからいいっすけどー。あ、そんなことより最近どうなんすか?」
「何が?」
「何って、彼女できたのかなって。最近先輩モチベ高いって感じがして」
「あぁ? 俺が彼女なんて出来ると思ってんのか? バカにしてんの?」
「いやいや! そんなこと思ってないって! ――そっか、彼女じゃないんだ」
椅子の
だが、どうせ弁解の言葉だと思い、聞き返すことはしなかった。
「じゃあ、何でそんなにやる気溢れてるの?」
「まあいいっか、もし笑ったら、今後仕事中に困った事があってもヘルプいかねえから」
「え! そ、それだけはご勘弁をー!」
「んまあ、あれだよ、バーチャルライバーだよ。最近ハマッててな」
「え……」
「やっぱりな、もうお前のヘルプなんて――ん? 笑っ」
「いやいや、笑わないよ!」
なんだこの状況、予想の真逆すぎて混乱する。
こいつの性格的に、いや、でも、今笑ってない。
それどころか……。
「私も好きなんだ!」
「はい?」
「私も観る専だったんだけど、興味があって自分で……じゃ、じゃなくて、色んなライバーの動画とか見てるよ!」
「へえ、以外だな」
「へっへーん、でしょでしょ!」
「てか、いい加減その喋り方、どっちかに統一したら? 職場から出た瞬間、いつも通りならここでもタメ語でいいんじゃね?」
「えっ、そうなの? 私、バイト初めてだから、全然そういうのわかんなくって」
「まあ、あくまでも俺は気にしないから、いいんじゃね」
「そっか! ありがと!」
恵美理は何故か嬉しそうにしている。それに止まらず俺の手を奪い、両手で包み込んで笑顔を咲かせている。
同級生にしては落ち着きがない子供の無邪気なリアクション。
感情のままに体が動き、感情のままに表情に出ている。
リアクションも自然で、悪い感情を一度も感じたことが無い真っ直ぐさ。
それから休憩時間の間、お互いにスマホでライバー自慢を開始。
もちろん俺はエイラムのみを推し、余すことなくその魅力を語った。恵美理も興味津々で、「今日絶対見る」と言ってくれた。
そんな、自分の推しに興味を示してくれたからには、紹介されたライバーも知識の一つとして覚えておくことにした。
休憩時間も残り少なくなった頃、エイラムの放送開始時刻通知が来た。
今日はこれから大変だけど、恵美理も追加になったし気楽そうだ。
それにエイラムちゃんの配信が待ってる! やる気全開!
うおぉぉぉぉ!
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