第6話:立場の弱い人への寄り添い方 ②

私がそう思う理由としていくつかあるが、最も深刻なのは“日本における相互関係の崩壊”だと思う。


 これはいわゆる“個人対社会”のパワーバランスが歪曲し、社会優勢の考え方が定着してきたことで“給料をもらえるだけありがたい”という考え方が一般基準になっていった。


すると、企業がいくら安い賃金を出していたとしてもその企業のブランド力やその企業から得られる費用対効果も個人から得られる費用対効果も高くなるなら人は集まるし、その企業が魅力的に映る。


 その結果、上を目指す人、向上心が高い人は良い会社に流れていく。


 しかし、この社会においていくら上を目指しても、向上心が高くても報われないのが、“求めるものが足りない人”だ。


 例えば、たくさん企画を練ってくれる人と企画は練ってくれるが、時間が掛かる人では前者の方が企業にとっては費用対効果が高く、開発から販売まで短期間で実行することが可能になるため、多くの企業は前者を採用する。


 その結果、後者がどんどん活躍する場を失い始めることでその人が持っている個性や感性、個別創造性などその人しか出せないカラーを社会に活かすことは難しくなっていく。


 そして、何度もそういう体験や経験を味わっていると次第に自分に自信がなくなり始め、自分が求められる場所を求めて転職や非正規雇用などの有期雇用に流れていくことになる。


 しかし、今の日本において1度レールを外れてしまった人が元に戻ることは容易ではないし、場合によっては“常時戦力外通告”を受けているという心理状態になり、働くことを止めてしまう人も出てくる。


 これは政府が提言している“成長と分配”や“中間層の拡大”などを実際に実行するためにはかなりハードルが高いと感じている。


 その理由として諸格差が直近2年でかなり拡大しており、その部分を改善させるには労働可能年齢の国民に対する労働機会の保障することを政府主導で保証し、実行しないと所得の底上げはかなり難しいし、企業にとっても“薄利多売”ではないが、“安い賃金で人件費を浮かせて、お客様にたくさん売ることで利益を得たい”という心理も見え隠れしているため、このバランスに対する第三者の明確なアプローチがないと状況改善はかなり難しいと思う。


 そして、立場の弱い人は常に“不安”や“恐怖心”などを持って働いている、生活しているため、理不尽なことをされても反抗することが難しく、反抗したくても出来ない状況になる。


 そのため、立場の強い人ほど立場が弱い人に対する価値観や見方が変わってくるのだ。


 そして、日本というのは“自己責任論”が強く、“自分は勉強してこれだけの成績を残したからこういう今がある”という主張をする人が多い。


 そのため、そういう人が組織の上立っているということはその価値観が組織の中に浸透していき、その価値観で人を見るようになってしまう。


 そして、その組織にいる自分と合わない人をどんどん不当解雇していき、自分のカラーに合う人だけを残していくのだ。


 これは社会でも同じ事が言える。


 現在、社会において人間関係の希薄化が取り上げられることが多いが、これはある意味“社会の分断が生んだ負の産物”といえるだろう。


 そして、この事が以前から問題になっていた“社会からの孤立”を更に進行させてしまう要因に繋がる可能性もあるのだ。


 今の日本において“自分さえ”という考えが中心軸になる事が多く、そういう人に潰されてしまった人に対して罪悪感などを覚える人は少なく、“その人がやってしまったのだから仕方ない”という他責な考え方や“その人が努力をしないからそうなった”などあくまで“本人の意思”が弱いという主張が多くの人たちに波及していくことでその考え方が正しいものとして認知され、弱者の主張がかき消されてしまうのだ。


 つまり、いくら立場の弱い人たちが良い意見を持っていても立場の強い人が同調を誘ってその人を潰してしまう今の社会構図では人は育たないし、逆に立場の弱い人を増やしていく結果に繋がりかねない。


その結果、立場が強い人が正当化され、立場の弱い人が主張や物事に対する発言をしにくくなっていくことで立場の弱い人が意見を言うことを我慢するようになる。


 私はそういう社会になると立場の強い人の主張が尊重され、立場の弱い人が生きにくい社会が出来てしまい、さらに孤立が進んでいってしまうし、子供などがいる場合にはいじめや派閥闘争などに発展する可能性もある。


 そのような事態にならないためにも立場の上の人がきちんと相手に対して適切なアプローチを積極的に行っていくことやそのような人と信頼関係を構築し、個々に必要な支援を自らの手で実行していく必要がある。


 これからの時代は“弱肉強食”ではなく“弱強共存”出来る社会を作っていかなくてはいけないと思う。


 その理由として、立場の弱い人が立場の強い人になったときに前者だったときの自分を忘れてしまい、弱者いじめなど立場の弱い人に対してやられてきたことをしてしまうのだ。


 そして、「自分もそういう事をやられてきたから問題ない」と言って行動や発言を正当化し、これがハラスメント行為などに発展したとしても「○○さんが悪い」と言ったように自分の行動の責任を他人に押しつけてしまう“他責思考”が立場の弱い人を増やしてしまう要因でもある。

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