第5話:立場の弱い人への寄り添い方 ①

 現在、感染症拡大なども起因して社会的に立場の弱い人がさらに増加している。


 しかしながら、この問題は以前から顕著にならないまでも少なからず問題として潜在的に起きてきたことなのだが、問題視はされても抜本的な改革までは進んでいかないのが現状だ。そして、この問題が子供たちのいじめなどの起因になっているケースも少なくない。


私はこういう構図はどこかでメスを入れてきちんと調査しないと永遠に続いていってしまうと思うし、この構図を継続する事で経済成長の遅れを露呈する可能性も十分に考えられるのだ。


 日本というのはさまざまな支援を受けられるようになっているが、現状はあまり活用されていない印象が強い。活用されにくい主な理由として“所得の壁”や“子供などのいじめ”や“世間体”など個人の事情を鑑みた時に周囲とのバランスを考える事や周囲から何らかの危害を加えられるかもしれないという不安が支援を躊躇してしまう要因になっているように感じる。


 そして、今の日本は立場が弱い人たちに手を差し伸べるのではなく、突き放すことがソーシャル・スタンダードになってしまっている印象が強い。そのため、周囲に家庭の事情などを知られないように自分の情報を隠さないといけないという心理が働く。


 その心理が貧困の不可視化に繋がっていくことになる。そして、そういう人がSOSを出しにくい社会にしてしまったからこそ、辛いことが辛いと言えず、嫌な事を嫌と言えない状態につながり、ふとしたことで自殺や無理心中を考えてしまうのだと思う。


 こういう社会状況だからこそ私は“立場の弱い人をどのように救済するべきか、そのために必要な事は何か?”についてトップを含めた関係各所で議論し、適正な判断と支援を展開していく必要があると考えている。


 しかしながら、現代において同じ境遇を体験・経験した人はいたとしても、個々が置かれた状況が異なっているため、ピンポイントで物事を解決する為に必要な知識を持ち合わせていないだけでなく、仮に同じ経験をしていて、相手に対してアドバイスをしても実行した際に齟齬が起きてしまう可能性もあるのだ。


 そのため、このような人たちに対して積極的なコミュニケーションの実行と相互関係性の構築、関係各所との綿密な連携強化を進めないと子供からの小さなサインや家庭環境の悪化などを読み取ることが難しくなる。


 特にそのような家庭の子供たちは幼少期から我慢をさせられている事が多く、自分がやりたいことを大人に対して言うことにたいして抵抗がある子供、友人などからいじめを受けている、親から虐待を受けているなどして自分の気持ちを隠して過ごしている子供などかなり幼少期から自分に対して罪悪感を覚えやすい交流関係や家庭環境であるが故に自分という存在に対してマイナスのイメージを植え付けてしまっているのだ。


 私はこの社会には立場の弱い人を救うための手段は何もないと思っている。


 なぜなら、今の日本において立場の弱い人よりも普通に生活をしている人や国などに対して一定の利益をもたらす人を優遇されているように感じている。


 そのため、多くの人が普通の生活をしている事が当たり前のこととして物事や支援が決められているため、支援を受けたくても“自分なんかがこういう支援を受けるのは申し訳ない”と思う人が多くなるのだろう。


 そのような負の思考連鎖が日常的に起きる事で日本の既存の価値観が新たな価値観の突出を妨げられてしまうことや自分たちの生活がスタンダードになってしまうことで自分よりも下の生活をしている人に対するバッシングやそのような人が周囲にいると根も葉もない噂を出される事や誹謗中傷など自分たちの生活を誇張し始めてしまい、立場の弱い人たちを社会から排除するような動きが増えてしまう。すると、そのような人たちは恐怖心から“自分の意思で社会参加を実現させることに対して躊躇する”こと、“自分の行動に対して自信が持てなくなり、どんどん内にこもってしまう”などマイナスの側面を多く抱えてしまう。


 その結果、立場の弱い人は社会に出られたとしてもその体験や経験がポジティブに捉えられなくなることや社会における本人の立ち位置が不明確になる事、理不尽な扱いをされることで自分の行動に対して疑問を持つようになる。


 そのため、子供が「自分は親が受けている扱いを将来的に自分が受ける可能性があるのではないか?」という心理が芽生えて、その事が将来的な不安につながり、現在“親ガチャ”という言葉があるように、生まれる家を選ぶことは出来ないし、親を選ぶことが出来ない。そのため、その人が育ってきた家庭環境とその交友関係の構築方法が大きく作用している事は間違いないだろう。


 現在は地域的な生活支援が少しずつ広がっているものの、経済的な支援の課題が深刻化しているように感じる。


 日本というのは所得構造を見ると個別年収が200万から500万円以下が多くを占めているが、これ以上は所得増加に転じる兆候はみられないため、個人所得の平均が増額に転じることは難しいと思っている。


ただ、私が危惧しているのはこのような問題を含め全体所得の底上げが不十分だということだ。


 現在の所得状況調査(2019年版)からも分かるように低所得層(200万円以下~400万)が国民の半数程度を占めている事を考えると、所得を上げるためには何が必要なのかをきちんと見極めなくてはいけない。


 私は立場の弱い人が増える背景に“需要と供給のバランス”と“必要人材に対する要求の高度化”が挙げられる。


 その他にも企業などが利益を優先的に考えている事で1番削減に踏み切りやすいのが人件費であるため、利益が下がったときに企業側に賃金に関する裁量権があるため、社員の賃金が上がることは難しく、必要な利益に到達しない可能性がある場合には人件費を削ってでも利益を求める傾向にある。そして、現在の最低賃金法もこれらの賃金上昇に繋がりにくくなっている要因の1つだと感じている。


 その理由として、現行の最低賃金法が雇用の安価化を推進し、人を多く雇用する事は出来たとしても、個別賃金に反映させることは難しくなる。


 そして、多くの企業は正規雇用であっても最低賃金と同額もしくは数十円程度の増額で賃金設定をしているケースや非正規雇用の賃金形態でもかなり問題視されるような風習が多い。


 私は労働基準法を改定し、非正規雇用の賃金形態や契約書の作成義務、業務別最低賃金の設定をして、その賃金以下の契約が結べないように制限するなどして個人の所得向上を目指さないと立場の弱い人に寄り添うことは難しいと思う。


 

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