第473話 閑話─皇宮騎士団第1部隊 第2班の歓喜
皇宮騎士団第1部隊第2班の騎士達は歓喜した。
皇太子殿下の外出に婚約者が同行するからで。
レティがいる時の外出は何時も第1班が担当する。
それは……
アルベルトが大切なレティを守る為に、最も信頼するグレイを起用するからである。
だから……
美味しい思いをするのは何時も第1班の騎士達。
先日グレイが、1人で10人もの盗賊を倒した事は騎士達の間では有名だ。
公爵令嬢とお兄様のラウルを守り、旅人達を襲撃して金品を奪っていた盗賊を捕縛したと言う手柄まで立てたのである。
「 流石は我らがグレイ班長だ! 」
グレイは騎士団全員の憧れの的なのだ。
しかし……
今回はアルベルトの外出公務が続いた事で、第2班にお鉢が回って来た。
皇宮騎士団第1部隊は戦闘部隊。
皇太子殿下が馬車で遠出をする際には、必ずや第1部隊が護衛する。
皇太子殿下の乗った馬車の周りを護衛する為に、馬を操りながら馬車の横を並走しなければならない事から、剣の腕もさることながら、巧みに馬を操れる技術が必要不可欠な部隊である。
勿論、第1班と第2班の騎士達の実力は変わらない。
ただ……
第2班の班長がグレイでは無いだけで。
「 本日は殿下と公爵令嬢の護衛だ! しっかりと任務に励め! 」
「 ラジャー!! 」
何時になく張り切っている第2班の班長と共に、気合いの入る第2班の騎士達だった。
***
医師達の見送りも無事に終わり……
帰路につこうとしている時にそれは突然起こった。
アルベルトはレティの為にサプライズでレストランでの昼食を用意していた。
レティはこの港街のレストランのロブスターが大好物なのである。
ただただレティの喜ぶ顔が見たくて。
第2班の班長が、部下の何人かを先にレストランに向かわせ、店の安全確認をさせようと打ち合わせをしている時に……
レティが叫び声を上げながらいきなり駆け出した。
「 !? 」
アルベルトがレティの後を追う様にして駆けて行く。
「 全員殿下の後に続け! 」
「 はっ!! 」
騎士達も一斉に駆け出して後を追い掛けた。
レティはドレス姿なのにも関わらず足が速い速い。
この時代……
ドレス姿で全力疾走をする令嬢は、後にも先にもレティだけである。
倉庫の建ち並ぶ一角に追い詰めて、アルベルトとレティはジャック・ハルビンと対峙していた。
第2班の騎士達が活躍する場面がとうとうやって来たのである。
追い詰められた男の周りを、何処から出て来たのか荒くれ男達が囲む。
「 殿下がリティエラ様を抱き上げて彼女を守る体勢に入ったぞ! 」
「 我々がお2人をお守りする! 」
騎士達は2人の前に立ち並び、一斉に剣を抜いた。
騎士達に緊張が走る。
第2班がこんな場面に遭遇するのは初めての事。
なんと言うカッコいいシチュエーションなのだと、騎士達は高揚した。
「 お前達! 止めろ! レベルが違い過ぎる 」
今から戦闘が始まると緊張感が高まって来ると……
ジャック・ハルビンはあっさりと降参して、荒くれ男達を下がらせ、両手を上げて膝を地面に付いた。
「 !? 」
何もせずに降参?
我々の勇ましい姿を、殿下やリティエラ様に見せるチャンスだったのに。
「 殿下? 拘束しますか? 」
「 いや、いい。お前達も剣を納めよ 」
「 御意 」
騎士達が剣を納めて戦闘態勢を解くと、ジャック・ハルビンが叫んだ。
「 俺は何もしていないぞ! 」
確かに……
よくよく考えればこの男は何もしていない。
寧ろ追い掛け回して脅していたのはリティエラ様で。
しかし……
「 見るからに怪しい奴だ! お前達! 気を抜くな! 」
「 ラジャー! 」
騎士達は落胆した気持ちに無理矢理気合いを入れる。
まだ俺達の輝ける瞬間は終わってはいないと。
彼は2人の知り合いの様だが……
用心するに越した事は無い。
相手は、あんなごろつきを雇ってる様な男だ。
何故こんな男とお2人が知り合いなのかは謎だが。
3人は場所を移動してレストランに入った。
「 ここはロブスターの旨い店だ。しかし値段が高過ぎてロブスターは食べた事は無い 」
そう言うと、ジャック・ハルビンは出されたロブスターをむしゃむしゃと食べ初めた。
「 ちょっと! それ私のロブスターなんだから遠慮しなさいよ! 」
食い意地の張ったレティがジャック・ハルビンを非難する。
私の為にアルが用意してくれたのにと。
おい!
殿下が折角リティエラ様にサプライズをしたのに、リティエラ様の分を食べるんじゃない!
騎士達はジャック・ハルビンを殺気立って睨み付ける。
その後……
たらふく食べたジャック・ハルビンは逃げる様に店を後にしたのだった。
外遊先では騎士達は交代で食事を取る。
さっと食べれる様にと軽い食事を。
折角このお店に来たのだからと、騎士達の分もとレティがアルベルトにお願いをすると……
騎士達にもロブスターが出された。
皇宮騎士団第1部隊第2班の騎士達は歓喜した。
やっぱりリティエラ様が一緒だと全てが美味しい。
「 ロブスター旨い! 」
以前に……
第2部隊の騎士達が、殿下にこの店のロブスターをご馳走になったと自慢していたが……
第1班の奴等に自慢しようとウキウキしたのだった。
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