第234話 閑話─令嬢達の恋バナ

 


 レティのクラスでの仲良しはマリアンヌとユリベラである。

 この2人とは、1年生の時から学園帰りに寄り道をして遊んでいる。


 アルベルトとの出会い……

 それがあったのも彼女達との学園帰りの寄り道の後での事であった。



 レティは3度のどの人生も友達らしい友達がいなかった。

 貴族の幼少の頃は、誘拐を恐れて各々の家で限られた友達と交流をさせるのが常であった。


 しかし……

 レティは領地生活が殆んどであった為に、皇都ではそんな幼馴染みは居なかった。

 そして、皇太子殿下のみに想いを寄せ執着していたが為に、友達を必要としなかったのである。


 勿論、宰相の娘なのだからレティの周りには宰相に取り入ろうとする親の目的の為に、取り巻き達はいたのではあるが………

 一緒に学園帰りにカフェに行ったり、出店で唐揚げをパクついたりする友達はいなかったのである。


 

 しかし、4度目の人生である今はそんな友達が欲しかった。

 共に伯爵令嬢であるマリアンヌとユリベラの2人は幼馴染みである。

 入学式の日に、そんな2人に勇気を出して声を掛けたレティは彼女達と直ぐに仲良くなったのだった。

 

 だから……

 どんなに毎日が忙しくても彼女達と行く学園帰りの寄り道はレティの楽しみであり、レティが本来の16歳でいられる無くてはならない時間だとして、とても大切にしていたのであった。


 

 レティ達は16歳。

 マリアンヌはレティより一足早く婚約をしていた。

 ユリベラは想いを寄せている男性がいる。

 

 皆、恋する乙女達である。



「 皇子様みたいに素敵な男性では無いんだけれども…… 」

 マリアンヌが紹介してくれた婚約者は……確かにイマイチだったけれども、2人は幸せそうであった。

 婚約者は1学年上の伯爵令息で、2人はマリアンヌが学園を卒業すると同時に結婚をするらしい。


「 エドガー様みたいに素敵な男性では無いんだけれども……… 」

 マッチョ系が好みのユリベラはずっとエドガー推しだった。

 しかし……

 ユリベラはエドガーよりマッチョな騎士クラブの1年先輩の男子生徒に恋をしたのである。


 その男子生徒は騎士クラブの新しい部長で、卒業試合の時にエドガーに試合を申し込み、号泣のあまりに試合が出来なかったと言う男子生徒であった。

 ただいま彼女の絶賛片想い中である。




 ある夕暮れ時の寄り道帰りの馬車の中で……

 恋愛の先輩マリアンヌの恋バナを聞いていた。


 馬車は密室で2人っきりになれるから彼女の婚約者が馬車に乗るとイチャイチャして来るそうだ。

 キスをしたり、先日は夢中になりすぎてドレスの胸に手を入れられたそうな………

 キャアキャアと真っ赤になる3人……


「 皇子様は馬車の中でそんな事をして来られます? 」

「 皇子様はそんな事しないわ…… 」

「 そうよね、皇子様がするわけ無いわよね。じゃあいけない事なんだわ 」

 次は拒否しなくっちゃと言うマリアンヌを凄く大人に感じたのであった。




 ***





「 お帰り、楽しかったか? 」

 その日、公爵家にはアルベルトが遊びに来ていて、ラウルとソファーに座り雑談をしていた。


 居間に入って来たレティは真っ赤な顔をしていた。

「 レティ! どうかしたのか? 」

「 お前……熱でもあるのか? 」

「 お嬢様! 」

 アルベルトやラウルや使用人達が顔の赤いレティを見て慌てている。



「 ……あのね、マリアンヌが………馬車は密室で……婚約者が馬車に乗ると、キスしてきたり……ドレスの中に手を………」

 テンションが高いレティはキャアキャアと真っ赤になり大声で騒ぎ立てる。


「 それでね、皇子様は馬車の中でそんな事をしないのかと聞かれたから……皇子様なのだからそんな事をしないわと言ったの…… 」

 そう言ってキャアキャア言いながら顔を隠し自分の部屋に駆け込んで行った。



 皇子様……

 家の可愛いらしいお嬢様にそんな事をしないですわよね?

 公爵家の使用人達からはそんな目で厳しく見つめられる皇子様なのであった。


「 皇子様……レティを裏切るなよ 」

 ラウルが腹を抱えて笑い転げていた。


 何時かはそんな事をしようと思っていた皇子様は、そんな事が出来なくなってしまったのだった。


 



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本日2話更新しております。

前の話もお読み下さい。


次話から本編第3章に入ります。

17歳と19歳のレティとアルベルトを宜しくお願いします。


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