第233話 閑話─その声は反則です
3月は皇帝陛下の誕生日である生誕祭があり、その日は休日で帝国中で陛下の誕生日をお祝いする。
高位貴族による誕生日のお祝いの言葉を述べる式典が謁見の間で開かれるが、生誕祭は皇帝陛下の臣下であるアルベルトもお祝いの言葉を述べる為に登壇するので、両陛下への挨拶はアルベルトから順に始まる事になる。
時間待ちの間、アルベルトは公爵家の控え室にやって来ていた。
式典は全て正装で行う為に全員が正装である。
皇太子殿下の正装は白の軍服に赤のサッシュが肩から斜め掛けに垂らされ、赤のマントを羽織り、胸には勲章が付けられている。
公爵家の正装は紫の軍服に黒のマントで、エドガーのドゥルク家の正装は赤の軍服で黒のマント。
レオナルドのディオール家の正装は緑の軍服でやはりマントは黒で、我が国三大貴族の正装は各々色で分けられていた。
因みに皇族の色はロイヤルブルーであるが、皇帝陛下の正装は黒の軍服で皇太子殿下の正装は白の軍服である。
まだシルフィード国が国造りの戦争に明け暮れていた頃に、そのカラーの軍旗を掲げて戦ったと言う。
ウォリウォール家、ドゥルク家、ディオール家は当時の王と共に戦い、シルフィード帝国の建国を成し遂げた皇族に忠誠を立てて来た由緒ある大貴族なのである。
エドガーやレオナルドも公爵家の控え室に来ていて、4人が楽しげに話しているのをレティは眺めていた。
正装をしているこの4人の揃い踏みは圧巻だった。
学園の生徒達はB4と呼んでるらしい。(BIG4の略)
「 謁見式が始まります。謁見の間の扉の前までお集まり下さい 」
そう告げられ、皆で扉の前まで集まる。
「 アルベルト・フォン・ラ・シルフィード皇太子殿下ご入場下さい 」
アルベルトが入場し皇帝陛下の前に立ち口上を述べる。
「 父上の生誕を心からお祝い申し上げます。私も学園を卒業すれば父上の公務を担い、我が国の礎になる所望であります。これからもお身体を自愛し我が国の太陽であらせられ続けて行かれる事を強く願います。 」
殿下の声が聞こえた。
低く清んだよく通る声である殿下は声もイケメンであると思う。
ふと、3度目の人生でのガーゴイル討伐の時の皇太子殿下の声を思い出した。
「 討伐開始! 」
上に立つ者の絶対なる迷いなき声……
あの清んだ声の下、騎乗していた私達は奮起し絶望的な戦いに挑んだのである。
絶対にあんな戦い方はしない!
私がループし続けている意味はここにあるに違いない。
「 どうした? 険しい顔をして…… 」
いつの間にか謁見の間から退出して来ていた殿下は、心配そうな顔で私の顔を覗き込んで来た。
絶対にこの皇子を死なせてはならないのだ。
「 ううん……何でも無いわ、少し緊張してるだけよ…… 」
殿下は私の手を握ってくれた。
「 レティ、好きだよ 」
私の不安を和らげようとしたのかいきなり私に耳打ちをして来た。
今、殿下の声に注視していたもんだからその声の威力は半端無く、ドキドキしてときめいてしまう。
「 声が…… 」
無意識に呟くと……レティは耳を押さえて真っ赤になって俯いた。
こんな所で……こんなに真っ赤になってしまった。
は……恥ずかしい……
周りには我が家だけで無く、順番待ちをしてるエドガー一家やレオナルド一家が直ぐ側にいるのである。
あら!まあ……と言う声が聞こえて来ると共に……大半は見ない振りをしてくれていたのだった。
勿論、公爵家は前を向いて知らんぷりをしていた。
「 帝国貴族序列第1位のウォリウォール公爵家の皆様ご入場下さい 」
そこで我が家の入場のアナウンスがされた。
た……助かった。
「 じゃあ、殿下……行って来ます 」
「 ここで待ってるよ 」
殿下にバイバイと手を振り謁見の間に入場した。
その夜には舞踏会が開催され2人で踊る。
「 今日は良い天気だったね 」
「 そのドレス素敵だよ 」
「 顔が赤いのは何故? 」
踊りながら……
何故か殿下に耳打ちされまくった。
うわーっっっ!!止めてくれーっ!
ドキドキが止まらない……
面白がってニヤリと悪そうな顔をする殿下は確信犯だ。
チックショー!
私が殿下の声に弱いと勘付かれてしまったーっ!!
「 レティ、僕の事好き? 」
「 …………… 」
「 言わないと止めないよ 」
「 このままキスしていい? 」
尚も私の耳元で囁き続ける悪魔……
逃げようにもガッツリ腰を引き寄せられているから逃げられない……
「 アル……好きです……参りました……もう死にそうです……」
真っ赤になりながら白旗を上げるレティなのであった。
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本日は2話更新予定です。
読んで頂き有り難うございます。
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