第145話 離れて行く心



生徒会メンバーは、

騎馬戦で優勝し、勝鬨を上げ、意気揚々と生徒会席に戻って来た。



すると、突然に王女がアルベルトに抱き付いて来た。


「 アルベルトさまぁ~ 」


「 うわっ!?」

アルベルトが王女を抱き止めた。



「 アルベルト様、ワタクシ、ハラハラしましたわ 」


いやいや、アルベルトは蹴り上げる反則をしていただけだが……


「 お怪我はありませんの?」

「 大丈夫です 」

アルベルトは王女の腕を取り、離しながら言った。



王女は、皇族であるアルベルト皇子の上に、レティが乗ってた事が許せなかった。

あれは、絶対にわざとアルベルト様にしがみついたのに決まってる。

しかも、何度も何度も……


レティを凄い形相で睨み付けながら

「 皇子の上に乗るなんて、不敬にも程がありますわ 」


そして、レティの姿を上から下までジロジロ見ながら

「 それに、そんなに日焼けをして、淑女として恥ずかしくありませんの? 」


レティは白い肌が赤くなり、特に鼻の頭が日焼けをし、赤くなっていた。


それは、今日の学園の生徒達の皆も同じだった。

平民も貴族も皇族も、皆がグランドで楽しく競技をしたのである。



レティは黙って王女を見つめていた。

殿下はこの間ずっと王女と皇宮にいるのだから、好きになっても仕方無いと思っていたけど……

まさか………

殿下はこれを好きになるのか………

いや、なったのか………



「 ちょっと! 何とか言いなさいよ 」

「 ………何とか………」



ブッ………アルベルトも、ラウル達も吹き出した。


アルベルトは笑いを堪えながら言った。

「 王女、私達が楽しんだ時間を、台無しにしないでくれないかな? 」


「 そんなつもりは………」

王女は、ばつの悪そうな顔をした。


「 アルベルト様、ワタクシ喉が乾きましたわ、応接室に案内してくれません事? 」

そう言って、王女はアルベルトに手を差し出した。



アルベルトは溜め息を付いて、王女の手を取り、後の事は頼むとラウルに言って、王女を連れて行った。


王女はアルベルトから手を取られ、勝ち誇った様な笑みを、二人を見ているレティに浴びせた。

そして、アルベルトを見つめ、微笑み、何やら話し掛けながら二人はその場を立ち去って行った。


アルベルトは、場を台無しにする王女をこの場から退けたかったのだった。



レティは、黙って表彰式の用意をした。

エドガーとレオナルドも、レティの頭をポンポンと叩いて表彰式の準備を手伝った。






「 リティエラ様の前でよくも………」

怒り心頭なのは、それを見ていた学園の女性徒達であった。




ラウルはマイクを持ち進行した。

「 スポーツ大会の結果と表彰式を始めます 」



騎馬戦では、アルベルトの反則で勝利したレティが、学園長から優勝カップを頂戴した。



本来ならば

皇子様が優勝カップをリティエラ様にお渡しして、お二人のイチャイチャする場面が見れたのに………

あの王女のせいで………



学園の生徒達の王女への嫌悪はどんどん激しくなるのであった。




後片付けをしていると、アルベルトが戻って来た。


皆で生徒会室に戻り、アルベルトはラウル達と何やら話をしていたが、レティはそっと生徒会室を出て、公爵家の馬車までトボトボと歩いていた。




公爵家の馬車の前では王女が腕組みをして立っていた。

レティを待ちぶせしていたのだ。


「 貴女、アルベルト様と親しいみたいだけど、アルベルト様はワタクシを皇太子妃にすると仰るわよ!」


「 当然でしょ? ワタクシは王女で、アルベルト様に相応しいのはワタクシなんだから………」


「 だから、邪魔をし・な・い・で! 」

王女が捲し立てた。



「 はい、勿論です 」

レティは、そう言って頭を下げた。


「 あら、分かれば良いのよ、それが身分の差なんだから当然よね……じゃあ、失礼するわ 」

王女はツンとしながら、向こうに控えている侍女と護衛騎士の方に歩いて行った。





何だかもうどうでも良くなった。

3度の人生では、王女の人柄なんて知るよしも無かったが、こうして王女を知る事になり、殿下は3度共に、こんな人を選んだんだと思うと……

本当に馬鹿馬鹿しくなった。

もう、4度目の今もどうでも良くなった………




「 レティ! 」


馬車に乗ろうとすると………


「 探したぞ!黙って消えたら駄目じゃないか!」

ラウルだった。


「 もう、生徒会の仕事は終わったでしょ? 早く帰りましょう 」


「 今、王女とすれ違ったんだけど何か言われたのか? 」

「 ううん、別に……」


ラウルは絶対に何か言われたのだと思った。



「 レティ、アルは………」

「 お兄様! 何も言わなくて良いわ、何かもう、どうでも良いし…… 」


さあ、帰りましょう!

そう言ってレティは馬車に乗り込んだ。



ラウルは馬車に乗るとレティの頭を撫でた。

よく我慢してるよ………

可哀想に………



身分の差………

シルフィード帝国の筆頭貴族である公爵家でさえも、王族の前ではゴミも同じだった。


ラウルはアルベルト皇子と幼馴染みで、皇子が優しくて、気さくだから忘れていたが、本来ならば、アルベルトに『お前』なんて言葉は使えない事を、今更ながら感じていた。


レティの事に関しては、アルベルトを信じているが………

一抹の不安を感じずにはいられないラウルであった。




「 そう言えば……お兄様は巨乳好きなんですってね 」

レティが悪い顔をした。


「 な………何だよ藪から棒に………」

「 エドガーが言ってたわよ 」

いやらしい本も隠してるしね、とレティが言うと、ラウルが俺の部屋に入ったな!?と怒る………



夕暮れの中

カラカラと公爵家の馬車が走って行った。







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