第144話 スポーツ大会、皇子様の上に公爵令嬢が……
学期末試験が終わり長期休暇に入る前に、生徒会行事のスポーツ大会を開催した。
男子は騎馬戦で女子は玉入れだった。
この時代の貴族女性の運動と言えば、舞踏会でダンスを踊るぐらいだった。
ましてや、高位貴族女性は、レティみたいに騎士クラブで、走ったり飛んだりしている様を見られる事は殆んど無いのである。
女子生徒の玉入れは大成功だった。
夏の制服での参加だったが、キャアキャアと可愛らしく玉入れをしてる姿に、男子生徒達は鼻の下を伸ばすのだった。
玉入れは貴族棟、庶民棟の全クラス対抗だった。
優勝はやはり、貴族の生徒よりも俊敏な庶民棟のクラスだった。
残念がったレティだが………
ピョンピョンと飛び上がり玉入れをするレティに、アルベルトが鼻の下を伸ばしたのは言うまでもない。
そんな楽しいスポーツ大会に王女がやって来た。
学園長や先生達が座る席に座り、場違いなドレスを着て、日に焼けるからと日傘を差していた。
そして、アルベルトを呼ぶ様に学園長に命令したのである。
学園長や先生達は
途中から来たのも迷惑だが、我が国の皇太子殿下を呼び付け様とする王女を嫌悪した。
しかし、
アリアドネ王女は一国の王女。
ここで彼女を制する事が出来るのは、皇子のアルベルトだけであった。
アルベルトは、今から騎馬戦に出場する為にグランドに居た。
因みに男子には体育の授業があった為、体操服があった。
棒タイと同じ色の体操服で、アルベルト達4年生は紫色の体操服だった。
騎馬戦は各学年毎に競技をし、生き残った一騎が学年代表として、4学年で対抗で優勝を決める事になった。
問題はアルベルト皇子だった。
皇子様の上に乗る事は許されない、かといってアルベルトみたいなデカイ奴が上に乗っては、下の馬が潰れるのが騎馬戦だ。
考えた結果
皇子様チームは、前の馬にはアルベルト、後ろの馬にはエドガーとラウル、上にはレティが乗った。
登場したとたんに、グランドにどよめきが起こった。
皇子様の上に、公爵令嬢が乗ってる……
もう、ギャラリーや迎え撃つ騎馬達は大興奮だった。
キャアキャアと黄色やピンクの歓声が飛びまくったのだった。
皇子様チームは、生徒会チームとして参加する事になり、4年生間の戦いに挑む事になった。
学生服のスカートでは乗れないので、騎士クラブの、あの可愛らしいブカブカの練習着を着たレティ。
帽子を被り、やる気満々だ。
「 お兄様! お兄様が一番弱いんだからしっかりしてよね! 」
「 俺は、途中でレオナルドと交代するぞ! 」
アルベルトは騎士団で毎朝訓練をしていて、エドガーとレティは騎士クラブで訓練をしている。
この4人の中では、ラウルが一番体力が無かったが、こんな奴等と一緒にして貰っては困ると怒っていた。
「 レティ、お前、ちゃんと食ってるのか? 軽すぎるぞ! 」
……とエドガーが言った。
「 今は、身長に比重がいってるのよ!背が伸びてるんだから、ね、お兄様 」
「 ちょこっとだけな!」
「 あら、お兄様の肩ぐらいまでは伸びたわよ 」
相変わらず、わちゃわちゃと仲の良い生徒会のメンバー達だった。
「 レティ、危なくなったら俺にしがみつけよ 」
アルベルトがやる気満々の他チームを警戒しながら言った。
「うん………分かった! 」
「 では、今から4年生の騎馬戦の開始! 始め! 」
司会のレオナルドが試合開始の合図をした。
わーっ………と一斉に歓声が上がり、始まった。
貴族棟、庶民棟合わせての4年生の騎馬での戦いだった。
レティは素早かった。
あっと言うまに帽子を取ったが、中にはニヤニヤしながらレティに抱き付こうとする不埒なオス共もいた。
「 キャア! 」
レティが避けて、アルベルトにしがみつく……
するとアルベルトは容赦なく、相手の馬を蹴り上げ、馬は崩れ落ちた。
レティがアルベルトにしがみつくと、ギャラリーからはキャアキャアとピンクの歓声が起こった。
明らかに反則だった。
しかし、ブーイングは起こらなかった。
何故なら、皇子様に蹴られた事は一生の思い出になると、蹴り上げられた各々が喜んだからである。
皇子様は何処までも愛される、シルフィード帝国の宝であった。
グランドには、蹴られて潰されてもオス共が頬を染めて喜んでいると言う、妙な空気が流れた……
そうして勝ち残った騎馬は、各学年の4騎+生徒会チームの反則技で勝ち残った1騎となった。
決勝戦
どの騎馬も騎士クラブの面々が勝ち残っていた。
反則技で勝ち残った生徒会チームは、ラウルからレオナルドに代わっていた。
「 レティ、お前、ちゃんと食ってる? でないと出るとこ出ないよ 」
レオナルドがいやらしい事を言う。
「 俺はデカイ方が好みだな 」
……と、エドガー。
「 俺は……最低でもBカップは欲しいかな 」
……と、レオナルド。
「 ラウルは巨乳好きだし、アルは? 」
エドガーがアルベルトに聞いてきた。
「 俺は………ムグ……… 」
レティが騎上からアルベルトの口を塞いだ。
「 もう、止めてよ! いい加減にして! 」
「 キャー舐めた! 」
アルベルトはレティの掌を舐めた。
あっ、良いな~俺も後で舐めさせて!
………とレオナルドが言うと、レティが冗談じゃないわ!……と本気で怒り出した。
何時でも、レティをからかい、わちゃわちゃと楽しい奴等だった。
そうこうしてる内に、準備が出来た。
赤、黄、緑、紫……
そして反則で勝ち残った紫の馬の上に、赤の騎士クラブの練習着を着た騎馬が出揃った。
黄色の上に乗ってるのは、庶民棟の2年の騎士クラブのノア君だった。
「 どの騎馬も騎士クラブの連中ばかりだな 」
部長のエドガーが満足そうに言った。
「 相手にとって不足無し! 」
レティが叫んだ!
ラウルの
「 始め! 」
……の合図と、大歓声で決勝戦が始まった。
「 レティ、上手く避けろよ!俺が蹴り上げるから…… 」
「 うん、頑張る! 」
反則してでも勝ちたい面々だった。
一騎減り………次々と倒れ、残るはノア君の騎馬と反則で勝ち残ってる生徒会チームだった。
両騎馬が睨み合う………
しかし、決着は直ぐに着いた。
レティが手を伸ばすと、ノア君が恥ずかしがり、アルベルトが蹴り上げるまでもなく、レティがノア君の帽子を取った。
大歓声が沸き起こった。
しかし、レティを見て顔を赤くしたノア君にイラついたアルベルトが、馬を蹴り上げて馬が崩れ落ちた。
決着が付いてるのに反則だと、今更ながら司会のラウルから注意を受けた生徒会チームだった。
ラウルが、生徒会チームの優勝を告げると
グランドが歓声で大爆発した。
あれだけ反則をしていながら、恥ずかしげもなく勝鬨を上げる生徒会チームであった。
公爵令嬢が皇子様にしがみつく度にピンクの歓声が起こり、
皇子様が、相手馬を蹴り上げる度に黄色い歓声が起こると言う、楽しい騎馬戦となった。
皆で、意気揚々と生徒会席に戻って来た時。
「 アルベルトさまぁ~ 」
王女がアルベルトに抱き付いた………
辺りは騒然となった………
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