第136話 公爵令嬢、皇宮に参上



軍事式典が終わると関係者を集めた舞踏会が開かれる。


その前に、16歳の成人となった貴族の男女が、皇帝陛下に成人のお祝いの言葉を賜る式典が謁見の間で行われるのである。


壇上には皇帝陛下と皇后陛下の横に皇太子殿下がいる。




レティが来る……

レティが皇宮に来る。

アルベルトはどれだけこの時を待った事か……





帝国筆頭貴族であるウォリウォール公爵家は、一番に呼ばれた。


「 帝国貴族序列第一位のウォリウォール公爵家の、リティエラ令嬢の入場です 」



両親に続いて

扉からレティが現れ、赤い絨毯の上をドレスを揺らしながら歩いて行く………



亜麻色の髪は編み込んでアップにし、白く細いうなじを際立たせた。

少し開いた胸元にはアルベルトがプレゼントしたアイスブルーの首飾りが光輝いている。


アイスブルーのドレスの胸には、ロイヤルブルーのリボンが可愛らしく揺れ、腰から下のドレープ部分には同じロイヤルブルーのレースが装飾された

ドレスは、流れる様なドレープが細いウエストを強調し、歩く度に優雅に揺れていた。


丸い愛らしいピンクバイオレットの瞳を強調する様に、薄化粧をし、キリリとした眉、まあるく赤い唇は、白い肌を際立たせた。

前髪は上げて、アルベルトの大好きな丸いおでこが見え、可愛らしさとあどけなさは隠しきれなかった。



この日、成人となったリティエラ・ラ・ウォリウォール公爵令嬢は、ハッとする程に美しかった。







「 面を上げよ」

皇帝陛下のお言葉を頂戴する。


「 リティエラ・ラ・ウォリウォール嬢、そなたが来るのを楽しみにしておったぞ……成る程、聞きしに勝る美しい令嬢じゃ、のう、ルーカス 」


「 はっ、有り難うぞんじます。勿体なきお言葉でございます 」



「 リティエラ嬢、成人の一員となったそなたが我が国の為に尽くす事を期待する 」

皇帝陛下が、目を細めながらレティにお言葉を述べられた。



「 はい、リティエラ・ラ・ウォリウォールは、陛下の御心に寄り添い、誠心誠意国の為に尽くす所存でございます 」



「 皇后、そなたも何か言う事は無いか? 」

公の場で、皇帝陛下が、皇后陛下に話を振るのは異例だった。



「 リティエラ嬢、皇宮の者達、皆も貴女に会うのを楽しみにしておりましたのよ 」

皇后陛下が、楽しげに言う。



「 はい、恐悦至極に存じます 」

レティは緊張していた為か、皇后陛下の言葉の意味が理解できなかった。




両陛下は、チラッとアルベルトを見てクスクスと笑った。

アルベルトは、耳まで赤くしてレティに見惚れていたのだった。



「 では、これにて失礼致します 」

ルーカスがそう言って、レティ達は謁見の間を後にした。



レティは、アルベルトと視線を合わせる事は無かった。

違和感を感じたアルベルトは、レティの後ろ姿をずっと見ていた……



パレードでも、目を合わせてくれなかった………

レティ……

何かあった?




謁見の間を出て、控室に入る。

「 お父様、ワタクシ、上手くやれてましたか? 」

「 ああ、上出来だよ 」

ルーカスは眩しそうにレティを見た。



「 ウフフ、殿下がレティに見惚れてましたわね 」

母親のローズは殿下推しだ………



そこへ、皇宮のメイド達が1人で事足りるのに何故か5人でワゴンを押してお茶の用意をしにやって来た。

彼女達はソワソワし、レティをチラチラみていた。



「 有り難う、緊張して喉が乾いていたので、嬉しいわ 」


レティがお礼を言い微笑んだら、メイド達はキャアっと叫び、嬉しそうに頭を下げた。


よく見ると、扉の向こうに何人かの使用人達が………いる。


いる………

いる………

扉の向こうで、ざわざわしている。



「 まあ、貴女達!何をしているの! 持ち場につきなさい! 」


廊下から叱責する声が聞こえ、レティがこっそりと顔を出したらキャアキャアと逃げて行った。


「 ?? 」



皇宮の使用人達が皇子様の想い人を見に来ていたのだった。


ああ………

なんて、お可愛らしい………

皇宮に春が来た様だわ………



皇后の侍女達だけでなく、皇帝の侍女達までがレティを見るために代わる代わるやって来ていた。



皆は、皇太子殿下の側近であるクラウドが、皇子様と公爵令嬢の恋の話を両陛下へ報告するのをこっそりと聞き、レティに会うのを楽しみにしていたのであった。



そこへ、皇太子宮の侍女達がやって来た。


「 皇子様は、昨夜からそれはそれは機嫌が良く、凄く楽しみにされておられました 」

「 先程お茶をお持ち致しました所、リティエラ様に優しく微笑んでお礼を言われましたのよ、本当に素敵なお方ですね 」


侍女達が情報交換をしている。



皇太子宮の侍女長がもう一度ワゴンにお茶を乗せて公爵家の控室に入って行った。



レティを見た瞬間

息を飲んだ……

可憐で、美しく、聡明で、透明感のある女性がそこに居た。


皇子様が愛して止まないお方だ。

成る程………



侍女長モニカ・ラ・エストラ48歳、夫と子供有り、皇子が生まれた時から仕えている大ベテランである。


皇子に仕えて18年。

モニカは

ああ……この方が将来お仕えする妃様だ……と直感した。



皇太子宮の侍女達は

未来の皇太子妃に心が踊るのであった。











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