第121話 嫌われるのだ




ふむ………

今日も、あの姉妹が殿下の周りで騒いでいる。


また、殿下に突進して、転び「 痛ぁぁい 」と涙を浮かべ、

「 前を見て歩きなさい 」

………と殿下が膝を折り、手を取り優しく立たされていた。


「 アル様、ワタクシの妹が、失礼いたしました 」

………と、テヘっと言い、頭をコツンとしていた。




殿下も、兄も、エドガーも、

女の子大好きなレオナルドでさえも、ウザイと言っていたあの姉妹の行動。


殿下達が一年生の時にはあんなんばっかりで、逃げ出す為に、留学までした程嫌だったと聞く………





ふむふむ………

あれをすれば殿下に嫌われるのか………



私は、殿下に愛され過ぎている今のままではいけないと思い、殿下と距離を置く事にしたのだ。


そう、

皇太子殿下と公爵令嬢は、何の関係も無かったのよ………と、周りに思わせる作戦だ。




しかし、距離を置きたいのに

生徒会に呼び出されても、行かないと殿下が私のクラスまで呼びに来るのだ………



距離を置くどころか、毎日毎日殿下に会ってる様な気がする………




もう、殿下に嫌われる様な事をするしかない。





ふむふむふむ………

殿下に突進して、転んで、痛~いと泣いて、甲高い声でアルさまぁぁと甘えた声で呼ぶ。

そして………テヘっと頭をコツンとする………





よし!行くぞ!!



殿下に突進した。

あれ?転ばない………

………涙目で「痛ぁぁい」が言えなくなったぞ………


目を開けると、殿下に抱き抱えられ、ムギュムギュされていた。

「 僕の可愛いお姫様は、何の遊びをしてるのかな? 」

殿下は嬉しそうだ………



あれ? おかしい………



「 アルさまぁぁ」

………と、甲高い甘えた声で言ってみた……


「 レティ、やっと名前を呼んでくれたんだね、嬉しいよ 」

………と、更にムギュムギュされた………




あれ? おかしい………



では………

「 テヘっ」………として頭をコツンとした。


これには殿下だけで無く、兄やエドガーやレオナルドまでにも、可愛い可愛いと頭を撫でまわされた。




あれ?おかしいぞ!

何故喜ばれるのかね?



周りを見ると、

「 皇子様と公爵令嬢のイチャイチャがまた見れたわ………」

「 あんな、抱き合うお二人を見れるなんて……もう、幸せ過ぎますわ」

キャアキャアとピンクの歓声が上がって、学食は大騒ぎだった……



私………

何かを間違ったのかも知れない………

恥ずかしくて死にそうだった………




しかし、

あれ以来、あの姉妹が殿下の周りをうろつく事は無くなった………

レティと自分達との格の違いを思い知ったのだった。


同じ事をしてるのに………

レティは皇子様だけではなく、学園中の皆に愛されてるのだった。




ラウルは

煩いハエを追っ払う作戦があれだったなんて、流石ウォリウォール家の人間だ!

………と、胸を張った。



レオナルドは

人前で、あれが出来るなんて、レティの度胸はやはり凄いと感心していた。



エドガーは

レティはやはり、皇子様を助ける最強の魔除けだと言っていた。



アルベルト皇太子殿下は

ただただ、美味しい思いをしただけだったのである。








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