第102話 閑話─勝手に盛り上がる皇宮
「 何? アルが雷の魔力で木剣を吹き飛ばし、公爵令嬢を助けたとな? 」
「 余も、その場面を見たかったもんだ 」
皇帝陛下が目を細めて言った。
皇帝陛下は、ことのほかアルベルト皇太子殿下のヒーロー話がお気に入りだった。
皇后陛下は、二人はよく遭遇すると言う護衛騎士達の話が、大のお気に入りだ。
特に、偶然出会った牧場での二人の話が好きで
初雪が振る中、手を繋いで歩く二人は、一枚の絵の様だったと言う話に胸キュンだった。
絵師に、その絵を書かせようかと思案していた位だった。
自分達夫婦は政略結婚で、恋愛する期間が無かった事もあり、そんな甘酸っぱい恋愛話が、楽しくて仕方ない様だ。
侍女達を集めては、運命の二人の話に盛り上がってるらしい。
アルベルト皇太子殿下が、街で偶然令嬢を見掛けて、馬車に乗せる話なんかは、侍女達が、おとぎ話の様だとそれはそれは胸をときめかせた。
「 それに、ワタクシは、令嬢が医療行為が出来る事に驚きですわ 」
皇后陛下が信じられないと言う。
クラウドが、医師会から公爵令嬢が女医になって、将来の皇后陛下と皇太子妃の主治医になって貰いたいとの書状が、宰相の所に届きましたと伝えると………
「 あら、公爵令嬢は皇太子妃になるんだから、自分で自分の主治医は出来ないでしょ? 」
皇后陛下と皇帝陛下が顔を見合せ頷く。
これは両陛下共にアルベルト皇太子殿下と同じ意見らしい。
「 早く、令嬢に会ってみたいのう 」
……と、皇帝陛下が呟いた。
レティの16歳のデビュタントを楽しみにしている両陛下だった。
………いや、両陛下だけでなく
皇宮にいる全員が、まだ見ぬ皇太子妃殿下に思いを馳せていたのである。
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