第91話 史上最強の騎士クラブ
新学期が始まった。
早々に騎士クラブに行くと、新入部員が30名程増えていた。
勿論、語学クラブみたいに女子の入部は無いが、同じクラスの男子生徒もいて、庶民棟からの入部が沢山いた。
「 これ、絶対にレティ目当てだよな 」
エドガーがアルベルトに言った。
不埒なオス共めが!!!
レティが同じクラスの男子生徒と話してるのを見て、皇子様は排除の方向に決めた。
しかし
レティは、この30名と同時入部のタックルのノア君を、弓兵に鍛え上げようと決心した。
私と同じ様に鍛練して、皆で立派なアーチャーになろう!
レティは燃えていた。
そして、皇子様も燃えていた。
初めから過酷なトレーニングで音を上げさせ、退部させると言う荒療治をやるつもりだった。
斯くして、皇子様VS公爵令嬢の生き残りを掛けた戦いが、本人達の知らない間に始まった。
この新入部員30名とノア君とレティは、直接、皇太子殿下の指導を受ける事になった。
もう、これは名誉以外の何者でも無かった。
この様にして鍛え上げられた弓兵達が、魔獣討伐の最前線で活躍するのはもう少し後の話である。
「 皇太子殿下に敬礼 」
ただの部活がとんでも無い事になっていた。
全体の挨拶の後に、訓練が始まる。
皇太子殿下の護衛騎士達が、皇太子殿下の直ぐ側に立つ。
目指すべきものが近くにあると自然と力が入る。
後に、彼等も史上最強の騎士軍団になる事になる。
アルベルトは新入部員の32人の生徒達の前に立つ。
先ずは点呼からだ。
一人一人名前と顔を確かめながら呼ぶ。
皇太子殿下に名前を呼ばれてる…………
生徒達の緊張は半端無い。
「 リティエラ・ラ・ウォリウォール 」
「 はい 」
ああ、可愛い………
ギュッとしたい………
アルベルトは顔が蕩けるのを必死に我慢する。
「 以上の者は私が直接指導をする 」
「 はっ! 」
先ずは基礎トレーニングの柔軟からだ。
レティはノア君と組もうとするが、直ぐ様アルベルトがレティの手を取る。
余ったノア君はエドガーが相手をする様に指示を出した。
「 全く、いじらしいねぇ 」
エドガーがニヤニヤしていた。
レティと手を取り合って柔軟をしていたら、いつの間にか抱き締めていた。
「 殿下! それでは訓練になりません!! 」
レティは怒ると怖い。
「 ごめん、ごめん 」
………と、両手を胸の前に上げ、降参ポーズを取る。
「 こら!そこ!イチャイチャしない! 」
エドガーの声が飛ぶ。
たまに、甘酸っぱい妙な空気になる騎士クラブであった。
アルベルトは、不埒なオス共を過酷なトレーニングで排除しようとしていたが………
レティが特別扱いするなと、トレーニングに食らい付いて来る。
これでは愛しいレティを壊す事になると、泣く泣く断念した。
休憩中には
レティは仲間を励ました。
目を見つめ、一緒に頑張ろうと励ます。
不埒な31名は、それだけで幸せだった。
この高貴な美しい人と頑張り抜く事を誓うのであった。
アルベルトは不愉快だった。
レティが不埒なオス共を見るのも、見られるのも不愉快だった。
何とかして排除したかった………
自分が一番不埒な事をしてるのは棚に上げる皇子様であった。
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