第77話 呪文の効力
私は
殿下にのし掛かり、殿下の口を両手で塞いだままに
殿下と見つめ合っている…………
殿下の目が優しく潤んだ瞬間…………
私の掌がペロリと舐められた………………
ギャーー
私が仰け反ったと同時に、殿下は上体を起こし、仰け反る私の腕を引き寄せ、抱き締めてきた。
「 やだなあ、もう、レティってば、積極的過ぎるよ 」
「 舐めるなんて信じらんない!!」
「 舐めてくれって手を持ってきたのはレティだよ 」
殿下はクックッと笑ってる。
「 何ですってーっ!! 」
「 もう、いい加減に離してよ!! 」
「 嫌だ、離さない 」
まだ私をギュウギュウ抱き締めてる。
「 僕の告白を遮った君には、不敬罪で罰を与えなきゃね 」
殿下は私の耳元で甘く囁いた。
「 だから………離さない………レティ、良い匂いがする 」
何か恐ろしい事を言っている。
「 レティ ………」
殿下の声が一段と甘くなる。
駄目だ、また殿下にスイッチが入りそう…………
こうなったら………
「 喧嘩戦法『先ずは鼻っ柱をぶっ叩け、そして股間を蹴り、逃げる』」
私が大声で呪文の様に唱えたら
「 レティ!」
殿下は慌てて離れる。
「 そんな酷い事、僕にするつもり? 」
フンっ!!
********
レティがプンプン怒りながら戻って来た。
顔が真っ赤だ………
殿下が「 酷くない? 」と言いながらレティの後から入ってきた。
楽しそうだ。
そう言えば、2人一緒にいる所は初めて見る。
相手は皇太子殿下なのに………
全く気後れしないレティにハラハラするが………
2人の雰囲気が自然体過ぎて驚く。
ラウル達は戻って来た2人をチラリと見てたが、別に気にする風でも無く、3人で話し込んでいる。
2人は何時もこんな感じなんだろう……
殿下のレティを見る目は限りなく優しく甘い。
大切に思ってくれてる事が伝わって来る…………
虎の穴も、騎士クラブも、殿下が側に居て下さっている様だ。
殿下がいてくれるなら安心だ。
皇太子妃か…………
レティが卒業し、準備やらで御成婚は5年後位になるか………
まだ5年はあるな……
その頃にはラウル達も、ちょっとはマシになってるだろう。
楽しそうな5人を見ながら………
未来のシルフィード帝国に、想いを馳せる宰相ルーカスなのであった。
**********
「 レティはもっと食べなきゃいけないな 」
殿下が私のサイズを表す様に腕で形をつくる。
止めなさいよ!………お父様とお母様の前で何を言うのか?!
………と真っ赤になって殿下を睨む。
「 そうだよ、騎士クラブの一番小さいサイズでもブカブカだったんだぜ、俺は笑ったよ 」
………とお菓子をボリボリ食べながらエドガーが言う。
「 レティは成長期なのよ、いくら食べてもお肉にならない時期ね、殿下、申し訳ございません 」
母がカップをソーサーに置きながら、ホホホと口元に手をやり笑う。
お母様、申し訳ないって何?
「 まあ、5年もあれば成長するだろう 」
お、お父様まで……………
私の成長なんか待つより、もう熟れすぎてる王女がいるのにな………
今、殿下がどれだけ私に残酷な仕打ちをしてるのか………
分からないのは仕方ないけど…………
胸が痛む………
殿下のマヌケ!
殿下を睨むと
「 何、レティ? 今、何か悪い事を考えた? 」
………と、私の頬がつねられた。
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