第65話 皇子様VS悪役令嬢



レティの料理クラブもお店を出していた。


2年生以上がクッキーやケーキを焼いて、1年生はラッピングをしてお店に並べていた。


しかし、庶民棟の殆んどの生徒が、貴族棟の3年A組の『皇子様のご奉仕喫茶』と1年B組『悪役令嬢喫茶』に集客しており、庶民棟は閑古鳥が鳴いていた。



昼からはレティが料理クラブの店番だった。


「 売れませんね……… 」

よし、じゃあいっちょやりますか。



「 オーホホホ、そこの貴方、ワタクシの側に来ても宜しくってよ 」


庶民棟に悪役令嬢の声が響き渡って、悪役令嬢会いたさに、庶民棟に人が集まる。


料理クラブのクッキーやケーキが完売し、部員達はこんなの初めてだと大喜びだった。




店番が終わったので帰ろうとドアを開けたら、何時ものベンチにアルベルト殿下がいた。



「 可愛い悪役令嬢さん、お疲れ様 」

「 殿下、どうして………? 」

「 君がここに居ると聞いて…………… 」

「 ……………………… 」



2人の間に………

どうして良いのか分からない沈黙が流れた……





「 あっ、殿下、今から庶民棟のクラスを巡りません? 」

「………うん、行こう」


庶民棟に足を運ぶのは初めてだった。

2人でゲームをしたり、誰も居ないお化け屋敷とか………

殿下は「 これ、ただの手抜きだろ? 」 と笑っていた。



皇子様と悪役令嬢が、庶民棟で仲良くクラス巡りをしてると知れ渡り、庶民棟が生徒達で脹れ上がった。



庶民棟も大いに盛り上がった。







3年A組『皇子様のご奉仕』は盛況だった。


女子生徒が頬を赤らめ行列を作った。

学園祭は貴族棟、庶民棟関係なしに全校生徒での催し物だ。


だから、貴族棟の他学年の生徒や庶民棟の生徒達が、皇子様の近くに行けるなんて普通ならあり得ないのだ。



別に普通の喫茶店だった。

テーブルに案内され、オーダーをする。

ただ、ウェイターが皇子様なだけだ。


オーダーされた飲み物を、皇子様がトレーに乗せて運んで来て、テーブルに並べる。


ただ、それだけなのに蕩ける様に幸せだった。

「 いらっしゃいませ、お飲み物をお持ち致しました 」


直ぐ側で、あの美丈夫の少し低い声で話しかけられる…………

ここはもう、天国喫茶となっていた。




そこへ、1年B組の悪役令嬢がひょこっと顔を出した。



ラウルに丁寧にテーブルに案内される悪役令嬢。

オーダーをし…………全員に緊張感が走る。



皇子様が飲み物を持ってくる。

「 いらっしゃいませ、可愛い悪役令嬢さん 」



「 オーホホホ、ワタクシに話しかけるなんて100万年早くてよ 」

扇子を広げ、口元を隠す。



「 言ったよ!悪役令嬢が皇子様に言ったよ! 」

ギャラリーがワッとなった。



ラウル達も「 よく、言った 」と大喜びだ。

非常に盛り上がった3年A組だった。




その時、悪役令嬢が皇子様に腰を屈める様に手をちょいちょいとした。

「 ? 」

腰を屈めた皇子様の耳元に、背伸びをして唇を寄せ、耳打ちをした。

「 殿下、失礼な事を言ってご免なさい 」

「 …………………… 」



キャーっと黄色い歓声が上がる。



幸せ過ぎて固まるアルベルトなのであった。

皇子様VS悪役令嬢は、皇子様の完敗だった。





しかし、

学園投票は3年A組が優勝した。



「 何の努力もしないで、皇子様がいらっしゃいませと言ってるだけで勝てるなんてズルくない? 」


悪役令嬢に扮装してまで成りきったのに…………

レティがプンスカ怒っていた。


「 お前らの敗因は、マニアックな宗教団体みたいになってたからだろうが……… 」

ラウルが腹を抱えて笑う。



公爵家の兄VS妹は兄の完勝だった。

ラウルの高笑いが響く。



「来年は負けないわ!」

……と、レティは燃えるのであった。






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