第66話 公爵令嬢、戦闘中



大ホールで学園祭の結果が発表された。


優勝は3年A組『皇子様のご奉仕喫茶』

大歓声に3年A組の皆がハイタッチをして喜んでいた。


そして特別賞に料理クラブが選ばれた。

喜ぶ部員達。


しかし………

私のクラスの皆からは、悪役令嬢を料理クラブなんかでしたからだと非難の目でみられた。

「 ご……ご免なさい 」


うっ………複雑だわ………





****




お祭りが終わる……



クラスの片付けは、

私は、今日1日頑張ってくれたので何もしなくて良いから、料理クラブに行っておいでと暖かく送り出された。

皆、良い子や………



料理クラブの調理室に入ろうとしたら…………



「キャーーっ!!」


………と女性の悲鳴と、ドス暗い男達の声が聞こえた。




騒ぎの方に駆け出す。



ヘラヘラと今にも襲い掛かろうとする男3人と、

地面に尻餅をついた女生徒と、その後ろで口を押さえ怯えている女生徒が2名。



駄目だ、間に合わない。



「 待ちなさい!! 」



注意をこっちに向ける。

全員がこっちを見た。



その瞬間に、尻餅を付いている女生徒の前に立った。



間に合った。



「 何だお前は? 」

酒臭い、酔っ払いだ。



「 おや? 綺麗な姉ちゃんじゃないか 」


男達が、私に興味を持っている間に、大丈夫だと小さな声で話しかけながら、座り込んでいる女生徒を立ち上がらせる。


男達から視線は外さない。



「 俺はこっちの綺麗な姉ちゃんにするわ 」

ニヤニヤしながらジリジリと前に進んでくる。



「 下がって! 」と手で彼女達を押しやり、一番前の男の鼻っ柱をグーパンチする。

これはグレイ班長が教えてくれた喧嘩戦法だ。



『先ずは鼻っ柱をぶっ叩け、そして股間を蹴り、逃げる』



だけど今回は逃げられない。

後ろで泣きながら震えてる彼女達は走れないだろう。



男は不意をつかれたパンチに鼻を押さえて後ろに下がった。



「 このアマっ!!」と、他の2人が私に掴み掛かろうとする。



私は瞬時に体制を低くし、掴み掛かられる腕を避ける。

立ち上がる時に足で男の向こう脛に蹴りを入れる。

男はうわっと足を押さえながらしゃがみ込む。


そしてもう1人の男には思いっ切り股間を蹴りあげた。

男はうっと声を上げる。



駄目だ、私の力が無さすぎる。



駆け付けて来た男子生徒に

「君、そこの枝をこっちに!」


男子生徒は枝を投げてくれた。

私の視線は男達から外さないで、枝を拾い上げる。

ちょっと細めだけど長さがある。

無いよりマシだ。



私は枝を剣の様に構えた。





********




「 公爵令嬢が戦闘中 」誰かが叫んでいる。

「何だって?!」

俺はもう駆け出していた。


「 庶民棟のいこいの広場で戦ってる 」


戦闘中って何だ?

襲われているのか?


並木道に出た。

走って行くと、レティが棒を構えているのが見える。



間に合ってくれ!!



棒で男の頭をぶっ叩いている。

雷魔法を発動しょうとしたが、駄目だ、レティにあたってしまう。

それに、まだ魔法のコントロールも上手く出来ない。



横からレティに飛び掛かろうとしている男が…………

「 くそっ !!」


間一髪、男子生徒がその男にタックルを食らわした。

男子生徒はその男に殴られ、蹴られているが足を離さないでいる。



レティに掴み掛かろうとする男の襟を掴みあげ、後ろに引き倒した。

「 殿下…… 」

レティの安堵の顔が見えた。



引き倒した男の腹を蹴り上げ、

直ぐ横の男に足蹴りをし、倒れた男の腹を踏みつける。

男達は叫び声を上げて身体を丸くし転げ回っている。


男子生徒にタックルされたままの男の襟を掴み立ち上がらせ、顔を殴り付けた。

そのまま叫びながら地面に倒れ込む。



俺の護衛騎士達が、3人の男達をひとかたまりに引きずり、剣を突き付けているので、後を任せた。

「殿下、お見事でした。」

……護衛騎士達がニコニコしている。

「ああ、何の問題も無い」





「 レティ、怪我は無い?」

レティの手や肩や頬に手をやり彼女の安全を確かめる。


「 はい、大丈夫です 」

「 何があったんだ? 」


レティに聞きながら

尻餅を付いて呆然としている男子生徒の方に行く。


片膝をつき

「 君の勇気に感謝する、礼を言う 」

この生徒が居なかったら、レティは男に飛び掛かられていただろう。



後ろで泣きながら震えてる女生徒達の方に行き

「 怪我は無いか? 」

「 はい 」

彼女達は小さく呟いた。



駆け付けた学園の警備の者達に、男達を縛って連行する様に指示を出す。

そして、まだ残党がいるかも知れないから、学園への見廻りをする様に命じた。


先生達も駆け付けて来たので、怯えている女生徒達を一旦保健室に行かせ、後から事情を聞きに行く事を告げる。




レティは座り込んで、じっと俺を見ていた。


レティの前に片膝をつき………

「 立てる? 」

「 …………… 」

「 抱っこしようか? 」

「 た、立てます 」

フッと笑いながらレティの手を取り、立ち上がらせる。


良かった………心底ホッとした。



「 話せる? 」

「 はい…… 」



レティと手を繋いだまま歩き出した。









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