第64話 悪役令嬢のクラス、勘違いする



「 お前、何だ?!その格好は! 」

「 オーホホホ、悪役令嬢ですわ、お兄様 」



大きめの縦ロールの髪に、後頭部には白い大きなリボン。

手には赤の扇に金銀の糸で刺繍を施し、回りに羽を付けたゴージャスな扇子。


レティは、マリアンヌ達とミリアの店に扇子を仕入れに行っていたのだ。


やや、きつめのメイクをしたレティは、ハッとする程の大人びた美少女悪役令嬢になっていた。



「 お前、本気だな 」

「 ええ、負けませんわよ 」


「 フン、お前がいくら本気を出しても、こっちはホンマもんの皇子様がいるんだからな 」

「 き………強敵だわ……… 」



「 お前達、殿下で遊ぶんじゃない、全く……… 」

皇宮に出勤前のルーカスが呆れ顔で言った。



公爵家の朝は賑やかだ。





今日はジラルド学園の学園祭




「 アル、レティは本気だ! 」

「 メイクから髪型まで悪役令嬢に扮して来たぞ 」

「 何を勘違いしてるのか、目の下にホクロまで書いてやんの 」ゲラゲラとラウルが笑う。



「 まあ、こっちは本当の皇子様なんだから負ける筈がないな 」エドガーが言う。




「 皇子様って何をすれば良いんだよ? 」

アルベルトが不服そうだ。


建国祭が終わり、久しぶりに登校したら

クラスの学園祭の演目が『皇子様ご奉仕喫茶』に決定していた。



「 お前は皇子様なんだから皇子様をすれば良いんだよ 」

レオナルドがウィンクをする。



「 だから、皇子様って何? 」

アルベルトは額に手をやった。




ラウルはメニューに急遽

『 侯爵レオナルドの流し目、ウィンク 』と

『 侯爵エドガーの騎士のご奉仕 』を付け加えた。


レオナルドもエドガーもノリノリだ。



「 よし、完璧だ!レティ、かかってこい 」

………と公爵家の兄妹対決が始まった。





3年A組『皇子様ご奉仕喫茶』が満員で行列を作ってると一報が入った。


「お兄様、卑怯な、レオとエドまで使うなんて………」




レティのクラス1年B組の『悪役令嬢喫茶』もかなりの盛況だった。


追加メニューに『令嬢達からの鞭打ち』が加わった。

鞭はアイテムになるかと、ミリアの店で購入していた。




「オーホホホ、皆のもの、ここにひれ伏しなさい」



1人、1人に言うのが面倒だとまとめて教室に入れ、

レティの前に全員がひれ伏し、

鞭を持った令嬢達がピシーン、ピシーンと鞭打ち、

1年B組は、もう、マニアック達が泣いて喜ぶ店となっていた。


喫茶店だった筈なのに………

怪しい宗教団体みたいになっていた。





「こいつら、バカだ、絶対に勘違いしてやんの」

休憩がてら偵察に来たアルベルトとラウルが腹を抱えて笑い転げた。




可愛いな………

目をまん丸にして悪ぶり、懸命に悪役令嬢を演じるレティが、アルベルトはたまらなく愛しかった。



しかし、レティは美人だな………

目尻にホクロを付け、きつめのメイクをしたレティにドキドキする。


この瞳に見つめられたらイチコロだな。


レティをいやらしい目で見る不埒なオス共に、雷魔法を食らわしそうになったが………


勘違い悪役令嬢喫茶で、悪役令嬢にひれ伏し、幸せそうにしてるオス共をみて思った。


今日だけは不埒なオス共を許してやるか………



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